記録20.信じてよかった
「結局不幸な展開で終わりか……」
俺は、恐らく周囲の人雛と声でかき消されてしまうくらいの声で呟いた。誰かに聞いてもらいたかったのかもしれない。助けてくれると願っていたのかもしれない。
しかし、願っても祈っても神は助けてなどくれはしない。
数時間前
「さあ、アシルよ。迎えに来たぞ」
そこに現れたのは領主であるゲルダニウス4世と名乗っていた者が来た。
「俺を、処刑台にでも連れて行くのか?」
「その通りだ。昨日行ったではないか」
何を行っているんだと言わんばかりの顔でこちらを見てきた。
そして、見下すような顔をしこういった。
「精々神にでも祈っていればいい。まあ、神はその願いを聞き届けてはくれないがな」
「お前、神がいるみたいな口ぶりだな」
わざわざ俺にそう言わせるためにわざとにいっているようにも感じていた。
「いるみたいなではない。いるのだよ」
「なぜそんなことわかるんだ」
俺は言わされているとわかっていながら情報を得ることができると思いそのまま続けた。
「なぜって?私が神であるからだよ」
「神はこんなにも無慈悲なことをするんだな。大人気ないとか思わないのか?」
「まあ、何とでも言うがいい」
自称神の顔には明らかに余裕があるように見える。
「お前も神の力を目の当たりにしたことがあるだろう?」
「そんなこといちど……」
俺には思い当たる節がないわけでもなかった。
「最初の世界か?」
「ああ、その通りだ。いきなり死なないよう人喰いウルフを殺した。そして、待つのが面倒だったのでな。お前に関係した者以外の時間を早めてやったのだ」
これで一番はじめ、リコルでさえも何が起きているのか説明できなかったのも納得がいく。
彼女も何が起こるのかわかっていなさそうだったし、俺を心配させないように振舞っていたなら、気を使わせ過ぎてしまった。
「まあ、精々あがけ。高橋一宇」
全てを知っているような表情には怒りを覚えた。
「いつか見返してやるからな!」
神はフッと鼻で笑い、俺のことを処刑台へ運べと指示を出し消えていった。
そうして、今処刑を迎えようとしていた。
昨日決まったばかりだと言うのに公開処刑場は人でごった返している。
なぜこんなことになるのか、全てはこの神のせいなんだろう。いや、一時的に取り付いただけかもしれないし。
考えても無駄だ。次にどうするか。どう活かして行くか、先を見据えて思考を巡らせなければ、でもリコルが来るまで待たなければいけないのか。寂しいかもな。
そうこう考えているうちに、火刑に処す準備が整ったようだ。火を持ち顔を隠しているものが近づいてきた。
「今すぐ、やめてっっっ!!!!!」
その場全体にその声が広がり、あたりは静まり返った。
その声の主は、リコルだった。
信じてよかった。ありがとう。ありがとう。
一緒に来た仲間もその後ろにいた。きっとリコルは俺を助けるために彼らを引き止めてくれていたのかもしれない。
「リコルッ!!」
俺は、全力を持って彼女の名前を呼んだ。
「あれは、リコル様。オルデゥーク・リコル様じゃないか」
「なぜここにいるんだ?」
「領主様の娘がなぜこんなところに?」
来ていたのもが口々にそういったことを言っていた。
まさか、囚われているのではなく。
ここの娘として転生していたとは、考えもしなかった。
やっと、これで助かるのか。そうか、リコルが居てくれるから不幸が打ち消されていっているのか?
わからないがこれでようやくリコルと過ごせることができると思うと、処刑台の上にいることをすっかり忘れてしまっていた。
逃げ出すことはできるのか!




