記録1.名前の決定
俺が目を覚ましたのは、太陽の位置がまだ頭の真上にあるくらいの時間だった。光に包まれてからはどうなったのかいまいちよく覚えていない。
「はあ、一体何があったんだよ」
「転生したのよ!」
聞き覚えのない声が後ろからしたので、振り返り見ると紫色の長く綺麗な髪の毛で、スタイルも悪くないどころかむしろ良すぎる。
しかし、これがなんなのか俺には見当がつかない。
「あのさ、お前誰?」
「それがほぼ初対面の人に対しての言い方ですかー?」
少し俺の苦手なタイプかもしれない。
面倒くさい。相手するのも馬鹿馬鹿しい。
あたりを見回しても背の低い草があたり一面に生えている。しかし、手入れをされているようなは全く見えない。だが、何というかとても心地がいい。なんだか懐かしい感じまでしてくる。
「よし」
あたりには何もないが深呼吸をしとりあえず人が住んでいるところを探すか。俺は決心した。
「ちょっと!なんで無視するんですか!!」
「じゃあ、お前は誰なのか名のれよ」
何かを考えているような顔をした後に口を開いた。
「私は記録者、あなたの転生と旅路を記録するものよ」
「で?名前は」
「ないわ」
ないのかよ。名前がないのは想定外だが記録者か、面倒くさいものがついてしまった気がする。
「なんてよべばいい?」
名前がないと呼びづらいのでとりあえず聞いてみた。
「決めてほしーなぁ?」
ああ、いちいち面倒くさい。これにあってから面倒くさいとしか思ってない気がして来た。
記録、記録、レコード、Record、リコルでいいか。
「じゃあ、リコルでいいか?」
「ありがとう、嬉しい」
彼女は目を細めとても嬉しそうに微笑んでいる。
こんな顔もできたのか。思わず惚れちゃいそうだ。
しかし、こんな感情が湧いてくるなんてトラックに轢かれこんなことにならなければ一生こんなことになることはなかった気がする。こうなってしまったのがいいのか、ダメなのかは今はまだわからない。
でも、この出会いが俺の中の何かを変えてくれるのなら、しっかりと人生を楽しむために、また楽しめるようになる日までは頑張ってみようと思う。
「なあ、リコル。ありがとな」
「感謝される事なんて何もしてないよ」
それでもいい。俺が感謝しているだけだから。
「まずはどこか街を探すか」
「そうね」
地平線の彼方まで何も見えないこの草原を、俺達は歩き出した。
今回も読んでいただきありがとうございました。
文字数は大して多くはならないのでちょっとした時間にでも読んでいただけると嬉しいです