記録.17 勝利と思い
作戦が始まりしばらく経った。戦場からの伝達はまだ無い。それから、数分の時が経過すると門が開く。
「帰って来たぞー!」
門内の誰かが言った。
その言葉の後に続くように門からは兵たちが戻ってきた。顔には勝利の笑みを浮かべているもの、戦友を失い複雑そうな顔つきのものもいる。
どんな言葉をかければいいのか分からず。少しばかり思案し、兵たちに声をかける。
「皆さん、ご苦労様でした。皆さんのおかげで俺たちは第一歩を踏み出すことができた!」
「「おお!!」」
複雑そうな顔つきだったものも気持ちを晴らすためにか全力の叫びを上げている。
「今夜は勝利を祝って宴だ!今回の疲れを全て晴らしてくれ!」
「「おお!!!」」
再び兵たちが雄叫びをあげた。
敵はほぼ全滅、そしてこちらが失ったものはわずかだ。しかし、一個人の立場として考えるとそのわずかなものがわずかでは無い。
こんな事は好きではないがやらなければいい方向へ進むことはないだろう。
やがて日が沈むと同時に宴が始まった。
街がいつになく騒がしい。
勝利のムードのところ悪いがどうもパーティをする様な気分にはなれなかった。
彼が上に立つものとして兵を死なせてしまった責任の重さだろう。
俺の命令のせいで人が死んだ。そう考えると気分が悪くなってくる。ふつうに生きていれば味わうことのできない感覚だ。
こんな時リコルが居れば少しは気が楽だったかもしれない。
また、いない人のことを考えてしまった。
きっと前に行ったお祭りと雰囲気が似ているせいで思い出したんだ。
翌朝、祭りの後の静けさとはこのことなのだろうか、誰一人として街中で見かけることがない。
まあ、今日くらいはいいだろう。
今回の戦闘で王国は完敗したのだから簡単には攻めて来れないだろう。
次の戦いまでには要塞も完成できるはずだ。そうなれば向こうから攻撃してくるのは困難になる。
いい流れがこちらに向いて来ている。
時間はかかるかもしれないがやり遂げることができる。国を変えられる気がした。
そんな中ある噂を耳にした。奴隷王。その名からして俺のことなのだろうが中身は酷かった。
女の奴隷を好き勝手し遊んでいるだとか、悪魔を奴隷にしているだとか、俺自身が悪魔、もしくは鬼の類いのもので人間じゃないだとか変な噂が立っている。
噂を建てられる側としてはいい気分ではない。しかもいい噂ではないからな。
こんな事リコルには知られたくないな。いやもう知られているかもしれない。
ならいっそのこと奴隷王と名乗ってしまおうか。
この日からアシルこと一宇は奴隷王となった。
一宇いやアシルくん考えてばっかですね。もっとみんなと話せばいいのに




