TIPS 温泉
†エリカ†
それは直轄地に滞在中のある日のこと……。
エリカはカルとスグリを連れて温泉へ入った。
大きな布を巻いて体を隠す。
公衆浴場など入ったことがないので知らないが、それが規則になっているそうだ。
「はー、いいお湯ですわね」
「ね、こんなに広いお風呂、僕初めてだよ」
スグリとカルは並んで湯船に浸かる。
歳の近い姉妹のようだ。
かわいい。
「エリカ、どうしたの? こっちに置いでよ」
「あ、あたしはここでいいわ」
二人から距離を置かないと……。
そう心に決めているのだ。
だって、そうしないとおかしくなっちゃうから。
だって、だって、カルが裸! 裸なの!
お肌が綺麗で、服を着ててもかわいいのに、今は薄い布が一枚しかなくて、はぁああちっちゃい胸がかわいい。
「何遠慮してんのさ。ほら、おいでよ」
あぁん、そんな強引な!
「エリカさんは恥ずかしがり屋なんですのね!」
なんですのね!
なんだその語尾は。
良家で育てられたお嬢様か何かか?
人間王の血筋だからか?
かわいいぞ、ちくしょう!
「そ、そうでもないわよ。考え事をしてただけ」
「とかなんとか言って、恥ずかしいんじゃありませんの? 胸がこーんなに大きいんですもの」
「ちょ、さわらないでよ!」
「おほほ、やっぱり恥ずかしいんじゃありませんの!」
「そんなことないわよ。でも、あんた、今、あたしの胸触ったでしょ? こういうのは報復される覚悟がある者だけが、するの。あんたが触ったんだから、あたしも、触らないとダメよね? 別にあたしは触りたくもないんだけど、ちょっとくらいなら、触ってあげてもいいんだけど?」
「何を言ってるんですの……? 触りたければどうぞ?」
スグリが胸を突き出してくる。
えー。
これは想定してない。
どゆこと?
この子、どんな教育されてきたの?
奴隷だから?
てか、カルより胸大きいのね……。
でもいいの。
カルは小さいからかわいいの。
「触らないんですの?」
「そ、そんなものを触るって言ってないわ。あたしは、アレが触りたいの」
「アレですの?」
「お風呂からあがったら……、いいでしょ?」
「はぁ、あんなものでよければ」
そして、風呂上がり。
「んんんんんんん、これこれ。これはいいわ。かわいい」
「あ、あんまり強くすると壊れてしまいますわ!」
スグリには猫耳猫尻尾をつけてもらった。
ひと目見た瞬間から、ビビッと来ていた。
本当に、これ、滅茶苦茶かわいい。
カルよりかわいい人間なんていないと思ってた。
甘かった。
エリカ、甘かった。
人間に猫耳をつけると、超かわいい。
天上人じゃダメ。真似をしてるってのがいい。
なんだかわからないけど、いい。
「あぁ……、満足したわ。かわいい成分が補給されたわ。でも、これ以上はダメよね。だって、スグリは子供だもの。カルは十八歳だから、いいわよね?」
「え、エリカ、目が怖いんだけど……。いいって何が?」
「いただきます」
「いただかないでよ!」
カルはすごい勢いで逃げていった。
あっという間に見えなくなる。
忍びを捕まえる機械を開発しないと。
「エリカさん、さっきから言動がおかしいですわよ。頭を冷やした方がいいんじゃありませんの?」
スグリから変態を見るような目で見られた。
そんな顔もかわいい。
いや、ダメだ。
これは本当に頭を冷やした方がいいかも……。
「ちょっと庭で頭を冷やしてくるわ」
頭を冷やすためなのに、なぜか、足が小躍りしてしまう。
今日はいい日だ。
これにて第二部完結です! ここまで読んでいただきありがとうございました!
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第三部は夏頃公開予定です。
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