2話・アミノマ国存亡の危機
どうぞ温かい目でご覧になってください。
「今はあまり時間がありませんのでこの国の現状だけでも伝えておきます」
客室へ向かっている途中でリサさんが口を開いた。
「俺も山ほど訊きたいことがあるんです」
彼女は頷くと語り始めた。
「まず、この世界には我等アミノマ国以外にも二つほど勢力があります。そして、今我々はそのうちのベスティア帝国軍からここ数年間攻撃を受け続けています」
驚いた。今この国は戦時中だったのだ。しかし、とても平和な日本から来たルキには全く実感が持てなかった。
「…それで戦況は?」
静かにリサが首をふる。
「…各戦いで敗走を続けました。しかし、今度ばかりは敗走ができないのです……」
喋りながら段々と声のトーンが落ちていっている。そして足が止まった。
「なぜならもう、ここ首都モスティアしか領土は残されていないんです」
「な…」
絶望的だ…今ベスティア帝国軍とやらが大軍勢を率いてたった一つしかないこの街を、いや国を落とされてはアミノマの人々はどうなるんだ。シーナさんはどうなるんだ…?
「なぜ俺をこんな危険なときに召喚したんですか!?」
「そ、それは…」
「おそらく俺を召喚するのに黒色のフードを着た方たちやあの国王様も犠牲になったのですよね?なのになぜ…今王を亡くして国民はどうすれば良いか…」
リサさんが何か話す前に思わず怒鳴ってしまう。
「落ち着いてください!」
なぜだろう。今まではすべてにおいて冷静に対処できていたのにあの、花菜によく似たシーナさんを考えてしまうと気持ちが押さえきれなくなる。
「その通りです。あのとき王座に座ってたのはボーヌメ・ポプルネ国王様で、隣にいた方は王女シーナ・ポプルネ様です。私たちは優秀な魔導師たちと善王様を亡くしたかわりにルキ・ズ・マーリボスという天才を召喚したのです」
「天才…」
確かにもとの世界ではそこそこな賢さを持っていたと思うが勉強が戦争に役立つのかどうかはわからない。
「そうです。あなたは…」
リサさんが何かを言おうとしたとき、宮殿の外から激しい鐘の音と人々の悲鳴が聞こえた。
すぐ近くにあった窓へ近づき外を見てみる。ここは首都のど真ん中にあるのか街が一望できた。2km前後だろうか、城壁の向こうには舞い上がる砂煙があった。
「あ、あれは…」
いけない。あれは馬が走るときに上がる砂煙ではないのか?俺は戦争なんてしたことがないのに…
「急報!急報ぉぉ!!」
廊下に響き渡るように叫びながら一人の兵士が俺達に走って近寄ってきた。息が荒い。
「…只今……城壁の警備を務める兵士から…の報告から…」
「息を整えなさい」
落ち着いた様子で、しかしどこか不安感のあるような声で兵士を落ち着かせるリサさん。
「ベスティア帝国軍がわがアミノマ国に攻めて来たとのこと…!」
しばらくの沈黙の後
「すぐに城壁に弓兵を配置しなさい、私もすぐに魔法特殊部隊を派遣します!」
「はっ!」
すばやく敬礼した後全力で兵士は走っていく。
「俺は、俺はどうしたらいいんですか?戦闘技術なんて僕にはないですがどうすれば……」
「ルキさんには一人で前線にでてもらいます」
「…え?あの、俺には戦闘技術なんてないんです。何か他に俺にできることはないんですか?」
自分に苛立った。男なのにいざ戦争となるとどうしてもおののいてしまう。
「…大丈夫です。異世界から召喚されたあなたなら……!」
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