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純潔と魂  作者: 椎葉
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2:支配者≪オブ ルーラ≫

 プーロは今――学校にいる。


 なぜプーロが今無事に学校に到着しているのか。それは今プーロの目の前にいる青年、アニマのおかげだ。


 プーロは食堂の小さいテーブルの向こうに座っているアニマを見る。

「………………」

 今朝の事故は間違いなく異常であった。ただの目の錯覚と言われれば言い返す自信は無いが、あんな偶然があるものだろうか。


「そんなに睨まないでくれるかな」

アニマはグラスに入った水を目を閉じて飲み、言った。

「ご、ごめん………」

プーロは視線を逸らす。


 この青年、何事も無かったかのようにしているが、本当に何事も無かったのだろうか。ただの勘違いだったのだろうか。

 しかしモヤモヤする。どうしてもハッキリさせておきたかった。


「君はいったい何者なんだ?」

「……?」

 アニマは何のことを言われているのかわからない、といった様子で首を傾ける。

 プーロはとぼけても無駄だぞ、というように彼を強く見つめる。


 するとアニマは、何か合点したように

「ああ」

と頷いた。


「サルバトーレ・アニマ、15歳。血液型はO。誕生日は8月10日、聖ロレンツォの日だ。幼い頃に両親が離婚、母親の方に連れていかれ育てられた。学校での成績は自分では良くもなく悪くもなく普通だと感じているが…。あ、特技とかは特に無いがトランプのシャッフルは得意だな」

 いきなり自己紹介を始めたのでプーロは呆然としていた。

「知りたいことはこれだけかい?」

アニマは微笑んで言う。


 プーロはハッとなり、頷く。


 やはり、あれは目の錯覚だったのかもしれない…。ただの勘違いだったのかもしれない…。自分が勝手にそう思い込んでいただけで、何もおかしいことなど無かったのかもしれない……。


「ところで俺は君のことも良く知りたいんだが」

「えっ」

「君と友達になるにあたって、お互いのことを良く知っておくのは大切だと思うんだ」

 アニマがそう言ったので、プーロは自己紹介の文を頭の中で急いで考える。


「ぼ、僕はリーンピダ・プーロで、同じく15歳…。」

 そこまで言ったところで、食堂に大きな声が響いた。

「おい!何してくれてんだてめぇー!!」


「ん?」

 プーロとアニマは声のした方を見る。


「てめえよぉ、よくも俺の服にぶちまけやがったな………」

「ご、ごめんなさい…許してください………」

 見た目の派手な大きい男と青年がいる。

どうやら青年が水を運んでいる時にぶつかったか何かで、男の服に水をぶちまけてしまったようだ。


「ああいう奴、いるよね。そのくらい許してやればいいのに」

 アニマは呆れ顔でため息交じりに言った。

「でもあの服、結構高級そうだよ……」

「そうかな。俺にはあれ自体に価値があるようには見えないな」


「許してください……」

「あ?」

すると男は、頭を下げている青年の髪を引っ張り、殴った。

「許してくださいだと……?」

「ああッ……」

青年は頬を押さえてふらふらしている。

「なんか随分と上から目線じゃねえか……?“ください”ってのはよぉ……」

男は青年の服の襟元を掴んだ。

「“許してくれますでしょうかお願いします”だろーが普通はよぉー!」

そしてもう一発殴った。



 気づいた時にはもうアニマは席を立っていて、男と青年の方に歩いていった。

アニマはまた殴ろうとした男の腕を掴んだ。

「あ?」

「そこまでにしておこうか」

「なんだテメーは?テメーに関係あんのか?おい」

男は青年から手を離すと、アニマも掴んでいた手を離す。

「その人は謝ってたじゃないか」

「それがなんだっつうんだよ。なんだテメェも殴られてぇのか!?」

 男は隣にあったテーブルをバン、と強く叩いた。プーロは思わずびくっとなってしまった。


 しかし次の瞬間、なんと男の手は水の中に手を入れるかのようにめり込んでいった。いや、めり込むというよりは埋まっていったという方が正しい。

「なっ!」

プーロは思わず立ちあがっていた。


「な、なんだこりゃ…俺の手が!??」

 男が手をテーブルから引きずり出そうとすると、テーブルも一緒に持ち上がり、倒れた。

 当然男もともに倒れる。


「俺の手…!?」

 だがもう手は元に戻っていた。テーブルにも異変は無かった。

「!?……???」

男が混乱していると、アニマはゆっくりと男に手をのばす。

「おい、なんだやめろ………」


 アニマは男の服に触れた。

「濡れた部分はここかな?」

「え!?」

アニマはそれだけで男に背中を向け、またプーロの方へと歩いてくる。


「あっ!」

男の声が食堂に響く。

「か、乾いてるッ!なんでだッ!?あんなにビショビショだったのに!」



 プーロは全身から汗をかいていた。

「サルバトーレ・アニマ…!!君は…やっぱり!」


 アニマは薄い笑みを浮かべながら、僕の前に立った。

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