不安と安心
心臓がバクバクと音をたてて動く。
いつものように平常心ではいられない。
もし、家族があの事故に巻き込まれていたらと思うとクリスマスイブどころではなくなった。
体の血の気が引いていくように感じた。
気が付くと幼馴染みの親友に電話をかけていた。
(プップップッ…プルルル…プルッ)
「はい、もしもし。どした?こんな夜に電話なんて珍しい。」
『いや…別になんもないんだ。』
「は?何もないのに電話してくんなよな。」
『ごめん…そういうつもりじゃ…。』
「なんかあったんだろ?声が暗すぎ。周り静かだしお前一人なの?」
『うん…。』
「そっかー、クリスマスイブに一人とは。寂しくて電話かけてきたんだな。」
『違う…いや、そうだけど。家族が…。』
「家族がどうしたんだよ?」
『家族が帰ってこないんだ。』
「え?なんで?」
『わからない。』
「連絡はしたの?電話とかメールとか…。」
『した。父親にも母親にも弟にも…電話した。何度かけても繋がらないんだよ…。』
「………。そんなに落ち込むなよ…。死んだわけでもあるまいし。」
『………っ。』
「どうしたんだよ、悠樹。ハッキリしろって!」
『テレビ…観た?』
「テレビ?何のテレビだよ。」
『ニュースだよ…街で死傷が起こったって…。』
「あぁ。あれか、さっき観ててビックリしたんだよ、あれ地元じゃん?」
『そう、あれの落下して下敷きなってる車、家のとソックリなんだよ。』
「えぇ、それ本当にいってんの?いくらなんでも冗談でしょ?」
『冗談に聞こえるか?』
「いや…冗談には聞こえない。けど、早とちりじゃないか。」
『………。僕もそうだって信じたいよ!!!!!でも、死亡が3人なんだよ…大人と子供合わせて3人!!!』
「マジかよ…。なんだか嫌な感じはするな。」
『もし、そうだったら僕は…独りになるんだろうな。』
「そんなこと言うなよ!幼馴染みの親友に頼れって!悠樹も心細いのは分かったから。とりあえず、今日は寝て明日俺がお前ん家に行くから!その間に家族が帰って来るかもしれないし。それまで指くわえて待っとけ!」
『なんかわかんないけど、少しホッとした…。龍介、ありがとう。』
「おーよ!また明日な。」
少しだけ気持ちが和らいだ気がした。
僕はそのままソファーに寝そべる。
頭のなかを色々な事がぐるぐると駆け巡るが、今日はもう考えるのはよそう。
寝ていれば家族は帰ってくるかもしれない。
そう思い目を瞑る…気が付くと朝になっていた。