ドリームキャッスルの亡霊
「皆、どこだ!?」
びしょ濡れの俺ーー連城 司はオカ研メンバーを探していた。
人工河川を探し回ったが峰は見つからなかった。嫌な予感がした俺は助けを求めるため声を上げていたのだがーー
「何で誰も居ないんだよ!?」
いくら騒いでも薄闇に声が吸収されるように辺りは静まる。
俺は苛立ちを覚え始めていた。オカ研メンバーが隠れているとは思っていない。むしろメンバーに何かあり、それを助けられない自分自身に苛立っていた。
「あれはドリームキャッスルか?」
明るい建物を見つけて俺は蛾のように、ふらふらと中に入った。
大きさは体育館ほどあるドリームキャッスルの中は三階建ての建物を吹き抜けにした感じで、その先に扉がある。城の内装を模しており、そこの住人は腰の高さほどの貴族や騎士、メイドやお姫様の小人たちだ。
本来なら彼らは動き、先の部屋に進むほど物語が進行するのだ。確かドラゴンに捕まったお姫様を勇者が助ける話だった気がする。
「どうしたの連城くん?」
声をかけられて俺は後ろを勢い良く振り返った。
「!?」
白い光が余りにも眩しくて俺は顔を逸らす。
「ごめんごめん! 眩しかった?」
相手が光を消す。
俺はゆっくりと顔を上げた。
「水戸じゃないか! 無事だったんだな」
俺は安堵の息を吐く。だがすぐに凍りついた。
「千葉は?」
「私も探してるんだよ。はぐれちゃって」
水戸は苦笑する。彼女は異変を知らないらしい。
「早く見つけた方が良い。峰が連れてかれた! もしかしたら千葉もヤバイぞ!?」
俺は峰に起こったことを必死に伝えた。
だが水戸は怪訝そうに小首を傾げた。
「何言ってるの? 今、連城くんの後ろに居るじゃない、峰ちゃん」
水戸の言葉の方が意味が分からなかった。
だけど俺は寒気が奔るほどの視線を感じた。
「峰……なのか?」
おそるおそる振り返る。
そこにはーー誰も居なかった。
「水戸。お前が冗談なんて珍しいな」
俺は苦笑する。ひきつった笑みで。
「冗談じゃないよ。ほら、足下」
足下? 俺は下を見た。
「!?」
そこにはーー血に濡れた二つの球体が俺を見つめていた。
「峰ちゃんが待ってるよ。早く行ってあげて、連城くん」
水戸に背を押され、俺は亡霊のように歩いた。
いくつの部屋を抜けたか分からない。だが物語はお姫様を救ってハッピーエンドにはならなかった。
「そこの階段を降りれば会えるよ」
俺は地下へと続く階段を降りた。
「……峰」
ランプで照らされた地下室には峰が横たわっていた。
「先……輩」
峰は生きていた。両目は包帯が巻かれている。赤い斑で汚れた包帯が。
俺は虫の息である峰が壊れないように優しく抱き抱える。
「……良かった」
俺は峰に頬を寄せた。
俺の前に誰かが立った。
顔を上げる。
「貴様は鬼畜米か?」
旧日本陸軍の軍服を着た顔のないマネキンが俺を見下ろしていた。
「はっ!」
俺は嗤ってやる。
「糞喰らえ亡霊が」
銃声が地下室に響いた。
『ピン ポン パン ポン♪ ドリームキャッスル一命様ご案内~♪』