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裏野ドリームランド  作者: mask
7/9

ドリームキャッスルの亡霊

「皆、どこだ!?」

 びしょ濡れの俺ーー連城 司はオカ研メンバーを探していた。

 人工河川を探し回ったが峰は見つからなかった。嫌な予感がした俺は助けを求めるため声を上げていたのだがーー

「何で誰も居ないんだよ!?」

 いくら騒いでも薄闇に声が吸収されるように辺りは静まる。

 俺は苛立ちを覚え始めていた。オカ研メンバーが隠れているとは思っていない。むしろメンバーに何かあり、それを助けられない自分自身に苛立っていた。

「あれはドリームキャッスルか?」

 明るい建物を見つけて俺は蛾のように、ふらふらと中に入った。

 大きさは体育館ほどあるドリームキャッスルの中は三階建ての建物を吹き抜けにした感じで、その先に扉がある。城の内装を模しており、そこの住人は腰の高さほどの貴族や騎士、メイドやお姫様の小人たちだ。

 本来なら彼らは動き、先の部屋に進むほど物語が進行するのだ。確かドラゴンに捕まったお姫様を勇者が助ける話だった気がする。

「どうしたの連城くん?」

 声をかけられて俺は後ろを勢い良く振り返った。

「!?」

 白い光が余りにも眩しくて俺は顔を逸らす。

「ごめんごめん! 眩しかった?」

 相手が光を消す。

 俺はゆっくりと顔を上げた。

「水戸じゃないか! 無事だったんだな」

 俺は安堵の息を吐く。だがすぐに凍りついた。

「千葉は?」

「私も探してるんだよ。はぐれちゃって」

 水戸は苦笑する。彼女は異変を知らないらしい。

「早く見つけた方が良い。峰が連れてかれた! もしかしたら千葉もヤバイぞ!?」

 俺は峰に起こったことを必死に伝えた。

 だが水戸は怪訝そうに小首を傾げた。

「何言ってるの? 今、連城くんの後ろに居るじゃない、峰ちゃん」

 水戸の言葉の方が意味が分からなかった。

 だけど俺は寒気が奔るほどの視線を感じた。

「峰……なのか?」

 おそるおそる振り返る。

 そこにはーー誰も居なかった。

「水戸。お前が冗談なんて珍しいな」

 俺は苦笑する。ひきつった笑みで。

「冗談じゃないよ。ほら、足下」

 足下? 俺は下を見た。

「!?」

 そこにはーー血に濡れた二つの球体が俺を見つめていた。

「峰ちゃんが待ってるよ。早く行ってあげて、連城くん」

 水戸に背を押され、俺は亡霊のように歩いた。

 いくつの部屋を抜けたか分からない。だが物語はお姫様を救ってハッピーエンドにはならなかった。

「そこの階段を降りれば会えるよ」

 俺は地下へと続く階段を降りた。

「……峰」

 ランプで照らされた地下室には峰が横たわっていた。

「先……輩」

 峰は生きていた。両目は包帯が巻かれている。赤い斑で汚れた包帯が。

 俺は虫の息である峰が壊れないように優しく抱き抱える。

「……良かった」

 俺は峰に頬を寄せた。

 俺の前に誰かが立った。

 顔を上げる。

「貴様は鬼畜米か?」

 旧日本陸軍の軍服を着た顔のないマネキンが俺を見下ろしていた。

「はっ!」

 俺は嗤ってやる。

「糞喰らえ亡霊が」

 銃声が地下室に響いた。



『ピン ポン パン ポン♪ ドリームキャッスル一命様ご案内~♪』

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