ミラーハウスの影
「あれ? どこだろう、ここ?」
私ーー水戸 明日香は暗い部屋の中で目を覚ました。
「おかしいな」
先程まで幼馴染みの快斗と一緒にジェットコースターを調べていたはず。なのに私は一人で知らない場所に居た。
「快斗はどこに居るんだろう? ……?」
手に触れたものを拾ってみる。どうやら持って来ていた懐中電灯らしい。
私は立ち上がり、懐中電灯を点けた。
「!?」
目の前に黒い影が立っていた。
「だ、誰なの!?」
相手に反応はない。私は凍る背筋のまま様子を伺う。
「?」
私は違和感を感じて影に近づく。
「なんだ、私じゃない」
目の前に居たのは鏡に写った自分だった。
「もう驚いて損した」
私は安堵の息を吐きながら周りを照らしていく。
「鏡だらけだ。ミラーハウスなのかな? ーー!?」
唐突に照明が点き、私は目を覆う。
ゆっくりと目を開ける。
「何か、嫌だな」
未だ明るいとは言えない部屋だが周りの鏡に自分の姿が余すところなく写されていて不気味さを感じた。
鏡の中の自分は当たり前のように私に従って動く。そのはずなのに、じろじろと意思ある瞳が私のことを観察しているようだった。もしかしたら鏡の中の私が勝手に動くのではないか、昨日見た心霊動画を思いだし、鳥肌がたつ。
「早く出ないと」
しかし、周りは鏡。そして鏡は鏡を写し、その連鎖は永遠に続く。もう道など分からない。
「そうだ! 確か迷路は壁を伝っていけば出られるはず。ミラーハウスもそうかも!」
私は鏡に触れる。
「!?」
"何か"に触れた。いや、触れたのは鏡なのだが確かな人肌の温もりを感じたのだ!?
「!?!?」
私は"小首を傾げた"
「どうしたの、私?」
「!?」
私は"喋った"
私の顔で。
私の声で。
困惑する私。
「あなた誰?」
「私は私。水戸 明日香だよ」
「何、言ってるの? あなたは私じゃない!」
「どうして、そんなこと言うの? 酷い!」
私は泣きそうになる。私は罪悪感を感じた。
「だって……あなたは鏡に写ってるだけじゃない」
私は声を絞り出した。
「え?」
私はキョトンとする。
「何、言ってるの? あなたは鏡に写ってる私じゃない!」
ねえ、何で懐中電灯を振り上げるの?
「消えて、偽物!!」
懐中電灯が振り下ろされて世界にヒビが入った。
血が飛び散った。
「じゃあね"鏡の私"」
ヒビで無数になった世界で私は"嗤った"
『ピン ポン パン ポン♪ ミラーハウス一命様ご案内~♪』