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裏野ドリームランド  作者: mask
4/9

アクアツアーのモンスター

「ふあぁあ。ねむ」

「もう! 真面目に探してください!」

 欠伸した俺ーー連城 司を諌めてきたのは中学からの後輩である峰 蜜柑。

「だってよ、何も居ないだろ」

「分かんないじゃないですか。何かすごいのが居るかもしれませんよ!」

「例えば?」

「例えばって……ネッシー、とか?」

「…………」

「何ですか、その可哀想な人を見る目は!?」

 俺はどうやらそういう目をしていたらしい。

「って言うか。先輩、幽霊とかダメなくせに大丈夫なんですか?」

 仕返しとばかりに前回の肝試しの話題を出してくる、峰。

「いや、UMAと幽霊じゃ違うだろ!?」

「そうですか? 私には同じオカルトですけど」

 ニヤニヤ笑ってくる、峰。後で泣きついても知らんぞ!

「おッ! 先輩、魚、魚!」

 アクアツアーの人工河川で泳ぐ魚を懐中電灯で照らして峰ははしゃぐ。

「何で錦鯉が居るんだよ!? イメージぶち壊しじゃないか!」

 このアクアツアーはアマゾン川と周辺の熱帯雨林を再現して作られている。俺たちは人工河川に沈んでいるアクアツアーの船のレールに沿って熱帯雨林を歩いているところなのだがーー

「やけに広いな」

 暗闇と鬱蒼とした木々のせいで先が見えない。どこまで続いているやら。

「ん?」

 今、何かを踏んだ。

 俺は何気無く足下を照らす…………!?

「うおおおッ!?」

 驚きの余り俺は尻餅をついてしまった。

「だ、大丈夫ですか!?」

 峰も俺のリアクションにさらに驚いた。

「お? おお。なんとか」

 俺は立ち上がり、踏みつけたモノの正体を確認する。

「なあんだ。ワニの模型じゃないですか。アマゾン川なら居ますよ」

 峰はホッとする。

「いやいや暗い中でワニを見たら誰だってビビるだろ!?」

 馬鹿にされないように俺は必死になった。

「そういう、お前はどうなんだよ? オカルトなんか興味無かっただろう」

 話題を変えるために俺は気になっていたことを口に出した。

「え? そ、それは…………べ、別にどうだって良いじゃないですか!?」

 だから峰がこんなにも動揺するとは思わなかった。

 俺は首を傾げるしかなかった。

「それより早く先に進みましょう。皆を待たせちゃいますから!」

 俺から顔を逸らした峰は足早に川沿いを進む。

「ひゃあ!?」

 今度は峰が叫んだ。思いっきり尻餅をつく。ほれ見ろ、お前だってワニの模型に驚いてる。

「全く世話の焼ける奴だな」

 俺はニヤニヤ笑いながら峰を立ち上がらせてやーーれなかった。

「先輩、足が痛いです」

 苦痛を我慢する声で峰が言った。

 俺は峰の足を照らした。

「!?」

 俺が見たのは峰の右足に絡み付いたヌメヌメの光沢のある赤茶色の何か。それはまるでタコの脚のようだった。だが太さは人間の腕ほどある。

「何これ!?」

 気づいた峰の表情は凍りつく。

 それに反応したかのようにタコの脚は力み、ズズズと峰を人工河川に引きずり込もうとする。

「助けて先輩!?」

 俺は峰の足に絡み付くタコの脚を手で引き剥がそうと試みる。だがビクともしない。

「この野郎ッ! 峰を放しやがれ!!」

 今度は懐中電灯で殴打する。だが、これも軟体なタコの脚には効かなかった。

 煩わしそうにもう一本のタコの脚が人工河川から水飛沫をあげて鎌首をもたげーー

「!?」

 俺をハエのように打ち払った。

 バチンと吹っ飛ばされた俺は樹に激突する。

「先輩!?」

 峰の声で意識は失わなかった。俺は朦朧とするなか這って、峰に手を伸ばした。

「先ーー」

 峰には届かなかった。

 峰は人工河川に引き摺り込まれた。

「待ちやがれ!」

 俺は人工河川に飛び込んだ。

 だが人工河川は浅く、峰も謎の大ダコも存在しなかったように消えてしまったのだった。



『ピン ポン パン ポン♪ アクアツアー一命様ご案内~♪』

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