ジェットコースター事故の謎
九条先輩の提案により二人一組で裏野ドリームランドの七不思議を潰していくことになった。
俺は自然に幼馴染みの明日香と一緒になった。
「私たちはジェットコースター事故の理由だっけ?」
明日香は懐中電灯の調子を確かめる。
「そうだな。ネットの掲示板じゃ結局分からなかったし、地方紙でも事故としてしかなかった」
詳細が誰にも知られていないジェットコースター事故。始めから不可思議な噂に俺の心は踊っていた。
「ここだよね」
晴れた夜空のおかげで懐中電灯で照らさなくてもジェットコースターの全体像が陰で分かった。
やはり地域密着型の遊園地だったので曲がりくねったレールはそこまで長くない。乗ったら二分ぐらいで終わってしまうだろう。
当たり前だが券が無くても中に入れる。
だが問題はここからだ。
動いてないジェットコースターの前に来てもすることがない。
「あれで動くのかな」
明日香が照らしたのは遊園地でよくスタッフが『行ってらっしゃい』とジェットコースターの客を見送る意匠の施された学校の教卓みたいな奴だ。そこならジェットコースターを作動させることが出来るかもしれない。
「押してみるね」
何かを見つけた明日香が適当に押した。
「…………」
「…………」
スイッチやボタンを連打するがジェットコースターは動かなかった。
「廃園になったから電気が通ってないのかな?」
「そうかもしれない。これじゃあ主電源を探しても意味ないな」
仕方なく俺たちはジェットコースターの座席を調べることにした。
「安全バーはどれも固くて動かないな。安全バー故障の線は薄いかもな」
「ねえ快斗」
別の座席を調べていた明日香が俺を呼ぶ。
「どうした?」
「この椅子ーー」
明日香がジェットコースターの座席の一つに触れる。
「何か温かいんだけど」
俺は明日香の言っている意味が分からなかった。
「どういうこと?」
「だから、この椅子だけさっきまで誰かが座っていたみたいに温かいんだよ!」
「はッ?」
ますます意味が分からなくなってきた。
「何言ってんだよ? 俺たち以外誰がーー」
俺は例の座席に手を押しつけた。
「…………」
「……どう?」
「ああ……温かい」
手に感じた温もりは、ただ熱いものを載せていたという訳ではなく、確かに先程まで誰かが座っていたと思わずにはいられない人間の温もりだった。
俺の背では手の温もりとは反対に冷えた汗が伝った。何かが俺たちの近くに居る。
「明日香、ここを出よう。嫌な予感がする」
俺は振り返ろうとした。
「ッ!?」
だが後頭部に突然衝撃が奔り、意識が朦朧として途絶えた。
最後に見えたウサギのシルエットは一体?
『ピン ポン パン ポン♪ ジェットコースターに一命様ご案内~♪』
次回からキャラクターの視点がどんどん換わっていきます!