幸せになっていいよ。
「助けて!」
もうずっと前、ずっと…そう叫び続けていた気がする。
でも、叫んでみても何も変わらなかった。
現実は、そう甘くない。
高い所から飛び降りれば、命を落とすかもしれない…
どう転んだって、地面にぶつかる前に、特別な才能?潜在能力?が解放されて、時間が止まる…わけもない。
ましてや空を飛べるようになる!わけもない。
誰かを出し抜くような魔法なんてないし…
宝くじだって、そう簡単には当たらない。
それが、現実だ。
自分だけは、特別。
そんなふうに思ったことがあっても、いつかその思い込みは消えるだろう。
きっと多くの人達が「普通」に暮らす。
だけど…
だけど、俺には少し人と違うところがあって。
少しだけ、特別なところがある。
この「特別」が、いいのか、悪いのかはわからないけれど。
この「特別」のおかげで、足りないもの、失ったもの、手に入れたもの…色々ある。
そう、これは
そんな「俺」の少しだけ「特別」な物語だ。
−高校時代−
桃にはじめて会ったとき。
世界は真っ白になって、桃だけが輝いて見えた。
周りの風景は白く、光になって、何も見えなくなり視界の真ん中で桃だけが微笑んでいた。
「真っ白!」
生まれてはじめて、一目惚れをした瞬間だった。
高校1年生のときだ。
(一目惚れってこんなふうになるのか!)
桃は、長いまつ毛が似合う美しい二重瞼で
キラキラした瞳で笑う女の子だった。
誰かが読んでる最先端な雑誌のモデルより、可愛いと言われる女の子たちより、誰よりも整った顔立ちをしていた。
そう、今まで見た誰よりも美しい。
(それなのに、すごくお淑やか?素朴?な感じがするのがまた好印象だった!)
長い髪は、今時のストレート。
笑った瞬間に、美しい白い歯がちらっと見える。
まさに、絶世の美女。
周りの世界を、輝かせる美女だった。
桃を、見ただけで、俺の世界は輝いたのだから。
実際にそうだろう。
そのころの「俺」は、まだ誰とも付き合ったりしたことがなくて、まさに、初恋。
桃に会って、この子と付き合いたい!
と、すぐに思った。
肝心なのは、桃は、俺を気にしているか?
ということだったが…