読書の習慣
ボクの趣味は釣りと野球。
釣りはヘッポコ。
野球に関しては……キャッチボールができて、知らない人よりはルールが分かる程度。
そしてもう一つの趣味が読書。
ライトノベルがまだライトノベルと言われていなかった頃の話。
それがボクの高校生だった頃の話である。
野球は春先から秋口にかけてのシーズン中でないと楽しめないし、釣りに関してはそこまでしょっちゅう行けるものでもない。本音を言えば毎日でも行きたいのだけど、金も暇もそんなに持ち合わせてはいない。
そんなボクだから普段、時間が空いた時に行う趣味として読書をする。
他にやることもないし、あったとしてもたいして楽しくもない勉強で、もちろん試験前などは勉強するがそうでなければ本を読んでいることが多かった。
これは実に良い趣味で、本を読んでいるとなんだかダラダラしていてもそれなりにごまかせるのである。
読書と言ってもまあ……漫画の時もあるのだけど……。
漫画の場合は図書館ではあまり借りることができないので購入するか立ち読みするしかない。
それに漫画の場合はダラダラ過ごしているとごまかしが効かない。
そんな理由でそれなりの小説を図書館で借りてきて読んでいたのである。
『これ、面白いよ』
ボクは読んだ本を指さして保田くんに話した。
『ふうん』
『読んだことある?』
『ない』
『読む?』
『ああ……じゃあ……』
普段から休み時間の度に学校の図書室に入り浸っている保田くんは読書家なのかと思っていた。
だからこそボクは自分が読んだ本を彼に勧めてみたのである。
同じ読書好きならなんらかの反応があるはずなのだ。
現に、ボクと同じく読書が好きな茨木くんはボクが勧めた本を読んでくれたし、ボクも彼から勧められた本を夢中になって読んで、お互いに面白かった部分を語り合ったりした。
『あれ、どうだった?』
お勧めした本に関して後日、保田くんに聞いてみた。
『ああ……まだ読んでない』
『え? なんで?』
『いや、忙しくて』
この『忙しくて……』という理由がよく分からない。
別に保田くんは塾に通っているわけでもない。
部活動だってボクと同じ鉄道研究部なのだからそんなに忙しくない。
家に帰って何があるというのだ。
いや……なんかあるんだったら本など借りなければいいではないか。
だから思わずボクはこんなことを言ってしまうのである。
『てゆうか忙しくたって隙間時間で読めるっしょ』
『ああ……うん。まあ……』
そもそも保田くんという男ははっきりしない男である。
よく言えば慎重で相手を気遣うあまり自分を主張しないのだろうけど、それが相手には物足りなく感じることも少なくない。
結局、この時もそうだった。
彼に読書の習慣がないことをボクが知ったのは、もう少しあとだった。
てゆうか……そういうことは早く言ってほしい。