第二夜 追憶の夜
「先しつれーしまーす」
22時10分バイトを終え、刃は雫とともにブラックキャットを出る。店の奥からマスターの声がしたがそれは聞こえないフリをした。
暗闇と静寂の帰り道を二人で歩く。
しばらく心地いい静寂に身を任せ二人は歩いているとふいに雫が声をかける。
「・・・今日は何食べたい?」
刃は一人暮らしだが朝昼晩の飯は雫が作ることが多い。まるで押しかけ女房のようにほぼ毎日作っている、いやまるでではなくまんま押しかけ女房だ。少なくとも周りの人物達はそう思っている。
「そうだなぁ・・・」
刃は自分の胃袋を握られてることに気づかずに自ら侵略者の為に考える、がひとまず今日の侵略行為はなくなることになった。
なぜなら考える必要がなくなったから。
視界の先、道の先に見覚えの有る白い人影が視えたからだ。
その人影はまるで誰かを待つように、待ち伏せしているかのように佇んでいる。
「・・・いや、今日は遠慮しとく」
「・・・遠慮なんかしなくていいよ?私が好きで勝手にやってるんだし」
「いや遠慮する」
「・・・そう?」
雫は意外そうに首を傾げる、とわいえ傍から見たらただ無表情に傾げているだけなのだが。
「ああ」
「・・・ん」
頷いた刃を見て雫は残念そうに頷く。
このやり取りを二人の知り合いが見聞きしていたら、さぞや珍しいと思うだろう。
雫は寡黙だが押しが強い、強すぎるくらい強い、それは押しかけ女房染みたことをしていることや普段の生活からも分かるだろう。
そんな雫があっさりと折れたのだこれは珍しい。
だが彼女をよく知る幼馴染達は違う感想を持つ、雫は刃の本気で言ったことには逆らわない。だから本気で遠慮、いや拒否されたら雫はそれに逆らわない。そのことを知っている幼馴染達は納得するだけだ。だから本当に珍しいのは雫でなく刃の方だ、刃が本気で拒絶するのは珍しい。
そんなやりとりをしてる間に白い影と、お互い声をかけあえる距離まで縮まった。
「やっほー」
白い影――アリア・クレセントは待ち人に声をかける。
「まさか昨日会ったのにもう私のこと忘れてるってことはないよね?」
「覚えてるよ・・・まだ死にたくないしな」
笑みを浮かべてはいるがアリアは不機嫌だった、そしてアリアの言葉を聞いた雫も不機嫌になる。
二人の胸のうちにあるのは奇しくも同じだった。
故に二人は問いかける。
「それはなにより、ところで」
「・・・昨日?・・・ねぇ、刃?」
二人共通の人の向かって問いかける。
「「この人(こいつ)誰?」」
さてどうしようかな・・・?っとなぜか背中に冷や汗を流しながら刃はこの難問をこなすために心の中で頭を抱えた。
「・・・昔の知り合い・・・?」
「いや、まぁそうだけど・・・?」
「・・・・・・」
「アリア?どうした?」
「んー?なんでもないよ」
刃は吸血姫とかその辺の事情を隠し教えられる範囲で互いを紹介したところ、二人ともなにか含みがありそうだが刃は特に気にしなかった、いや、気になったが怖かったのでスルーした。
(雫の方はなんとなく予想付くんだけどな・・・)
『家』時代雫は刃と一緒によくすごしていた、それはさながら雛鳥のように四六時中刃の後ろにくっ付いていた。
だから自分の知らない知り合いがいたことに納得いかないのだろう。刃はそうあたりをつけた。
事実それは当たっていたが、それは刃が予想したのとは少し意味が違う。
「んで、何か用か?」
言外にわざわざ待ち伏せて、という含みをもたせながら刃は訊ねる。
「何か用か?って昨日また今度ねって言ったじゃない。というかなんか用が無いと話しかけちゃいけないの?」
「別に悪かないけど。つか昨日の今日で来るとは思わないだろ・・・まぁ用があろうが無かろうが今俺はバイトで疲れてんだよ、だからまた今度な」
自分から用がないかと訊いておきながら実に酷い言い草である。
何時間も前から探したり、待ち伏せしていたアリアからすればかなりムカつく態度だ。普通に殺されてもおかしくない。
「ちょっとまっ――」
事実アリアはそう言って通り過ぎようとする刃に対して、一発ぶん殴ってやろうかしら、っと思いながら引き止めようと声を出すが――。
「・・・少ししたら戻ってくるからここで待ってろ」
アリアだけに聞こえる様に呟かれた言葉によって遮られる。
「・・・また今度ね」
「んじゃな」
「・・・ん」
アリアは不服そうにしながら刃と雫を見送った。戻ってこなかったら指の骨を一本一本折ってやる、そんな物騒なことを考えながら・・・。
「やっと戻ってきた」
刃が雫を送り届けてアリアのもとへ戻ってきたのは、分かれてから40分以上経ってからだった。
刃が来るまで待ち伏せしていて、やっと来たと思ったらさらにまた40分以上も待たされたアリアの機嫌はすこぶる悪い。
「んで何の用だ?」
刃はそんな不機嫌丸出しの態度には気にも留めず先ほど訊いた問いを再度問う。
「・・・・・・・・・昨日の続き」
しばらく、こいつの骨ホントに折ってやろうかしら、と考えながら睨みつけていたがアリアは諦めたように溜め息をつき不機嫌な声で答えた。
「でもそのまえに、あの子何者?」
「あー?さっき紹介したばかりだろ?聞いてなかったのか?」
何言ってるんだコイツは、と肩を竦めながら刃は呆れたように返す。
「聞いてたわよ?そうじゃなくて私が訊いてるのは誰じゃなくて何者か、アレはなんな
のかって訊いてるのよ」
誤魔化しは許さない、と目を細める。
「半分人間じゃない・・・混血ね、あの子。それもかなり血が濃い・・・。それこそこの国の忌名レベルの濃さだった。なのに私やあなたのことを隠してるのはなぜ?アレがただの一般人とかそんな冗談みたいなこと、悪夢的なことはないはずよ、もしそうだとしたら逆に笑えるわ」
あー・・・なるほどね、っと小さく呟き右手で後頭部を掻きながら刃は苦笑する。なぜならそんな悪魔的な冗談が事実だからだ。
(さてどこまで話していいのかね・・・っと、まぁ協定違反になるからアレはダメだな。しかし忌名・・・ね)
考えをまとめた刃は口を開く。
「ああ、お前の言うとうり混血だよ、あいつは。・・・まぁでも実に悪夢的なことにあいつは一般人――じゃあないな、大金持ちの一般人てことにしておこう、たぶん間違ってはいないと信じたい。・・・まぁとりあえずおまえら人外や殺名たちとは関係ないよ。混血だからさつじんきでもないしな」
坦々と――一部自信無さげというか自分の願望が混ざっているが――事実を告げる。
「嘘でしょ・・・?」
アリアは呆然と呟く。
「おいおいひでーな、おまえから訊いといてそりゃぁねーだろ。俺は嘘は言ってないぜ?」
その呟きに律儀に刃は返す。
それを聞いたアリアの口元は歪んでいきやがて耐え切れないというように音が決壊した。
「アハハはははハハハはははははハハハハハはハハははははハははははハハハはハはハハっ!!!!まさか本当にそうだとは思わなかったわ!!これほどの笑い話がいくつも転がってるって、いったいどうなってるのこの街はっ!?アハ!あなたが!?さつじんきたるあなたがっ!!この世界の異常、不具合そのもの、イレギュラー、エラーのあなたがっ!普通に学生やってるってだけでも十分異常な喜劇なのに!!アハッ!あはははっ!その上あれだけのモノが一般人!?もうほんとサイコーよこの街はっ!!!!もう異常すぎて笑いが止まんないわ!アハハハハははっ!!」
まるで狂ったように笑い続ける吸血姫。それは常人が聴けば気が狂ってしまう音声、そんな音声をすぐ傍で聴いている刃はただたんに、うるせーなコイツ、と普通の感想を抱いていた。
止まらない狂笑、放っておけばいつまでも笑ってるのではないか、そう思わせるほど音は止まらない。
「うるさい」
いいかげんウザくなったのか刃はそう言いながら、壊れたスピーカーのように笑い続けるアリアに鋭い蹴りを放つ。
「アハハはははっっ!?っと危ないじゃない!いきなり蹴らないでよ!」
刃の蹴りを紙一重で避けながらそう怒鳴る。
「うるさい。いつまで笑ってんだてめぇは!いいかげん本題を話せ!こっちだって訊きたい事はあるんだからよー」
アリアを睨む刃の視線はこれ以上脱線したら殺すと語っていた。
「あはははー・・・は、話すよ!?うん、今ちょうど話そうとしてたところなんだからねっ!?とりあえず歩きながら話そっ!?」
誤魔化すように笑って歩き出すのを刃は溜め息一つ吐いてその背中を追いかけて横に並ぶ。
「刃は9年前のことどこまで覚えてる?」
人気の無い裏道りから表道りに出る道を歩きながらアリアは訊ねる。この期に及んでまだ関係ない話をしようとしてると思った刃は殺意を込めて睨んだが、アリアの顔が今までと違い真剣な顔をしているのに気づき、今度こそ本題――アリアはなんでこの街、いや刃に会いにきたのか――その話に関係あると察
し9年前へ意識を飛ばし――
「あー・・・一時期よく遊んだくらいしか覚えてねーな」
「まぁそんなもんよね」
そこでいったん苦笑して言葉を区切り。
「だって他の部分は私が記憶を封じたんだもの」
――自然に
――気負わず
――当たり前に
そう言った。
「は・・・?」
呆然と絶句している、正に開いた口が塞がらないをその身で体現している刃を無視してアリアは続ける。
「私がなんでこの街に――刃に会いに来たかそれを一言で、簡潔に、私情、事情、もろもろを省いて真実だけ言うならば」
一歩二歩。
呆然としている刃の前に出て、くるりと反転。
アリアは刃を真正面から見据え。
告げる。
「9年前にした契約を果たす為よ」
ズキン。
アリアの金眼に見据えられたとき刃の脳髄に痛みが走る。まるで無理やり何かを思い出させるように脳に干渉される痛み。
(魔眼・・・?)
そうあたりをつけるもすぐに痛みと不快感によりその思考は溶けてなくなる。
そして自分の意思とは関係なしに9年前の記憶が再生される。
”
その日はいつもと変わらない一日だった。
いつもどうりあさおきて、学校に行ってたいくつなじゅぎょうを聞いて、あそんでかえる。そんないつもどうりの一日・・・あれ半日?まだよるになっていし・・・半日なのか?まぁどっちでもいいや。
『家ぞく』のみんなとはさいきんあそんでない。なんとなくあそびたくない。だからおれはみんなにかくれて外に出た。
しばらくぷらぷらしていたら人気のない公えんを見つけた。公えんには一人せんきゃくがいたけどまぁとりあえずむしした。どうでもよかった。なんかけがしてるしうずくまってくるしそうだけどどうでもよかったから気にせず入った。
にらまれた。
むしした。
ブランコにのる。
まだにらんでくる。
むしする。
でもなんとなくこぐいきおいを上げる。
にらんでくる。
むしして上げる。
にらんでくる。
上げる。
にらむ。上げる。にらむ。
とぶ。
ブランコからいきおいよくとび出し、一回二回と空中で回る。ちゃくち。
「十点!」
テレビのまねをして自分で点数をつける。
はじめてやってみたけどこれけっこうきもちいいな。
ちらりと見てみる。
なんかおどろいてる、でもにらんでる。
きようなことするなー。
そう思ったけどすぐにどうでもよくなった。
それから一人でなんかやってあきたから、かえろうとしたときこえをかけられた。
「なんで無視できるの?」
そのこえでソレがいたことを思い出した。とちゅうからすっかりわすれてた。
でも、そんなそうふしぎそうに言われても・・・だってどうでもいいし。
そう思いながらいちおうふりむく。
そこではじめてソレが白くてかわいい子だということに気づいた。でもこのくらいのやつなら何人か見たことがあったから気にせず答えた。
「きょうみないしどうでもいいから。そんなことよりびょういん行ったら?」
いたくないのかな、そんなにおなかにあながあいてて。
「・・・よくそんな風に言えるわね。そもそもあなた私がここにいるっていうことしか認識してなかったでしょう?私が女の子だということも血塗れで倒れてて普通なら今にも死にそうだってことも」
にんしき・・・?どういういみだったっけ?たぶん気づいてるてるとかわかってるとかそ
んないみだったかな・・・?
「あー?気づいてたよ、けががしててうずくまっててくるしそうだなとは思ったし」
まぁとちゅうからわすれてたけど・・・。
「血塗れで倒れてるのに・・・?あなた本当に人間の子供?ううん、それよりもなんで私のことを忘れられるの?あなた何者――危ない後ろ!?」
うるさいなぁそんなにさけばなくても、気づいてるよ・・・、しかも言ってることわかんないし。
おれはうしろにいた『何か』をふりむきながら『点』を確認しズボンのポケットにいつも入れてあるナイフ――ほんとうは『あいくち』っていうらしい雫が言ってた――でさそうとしたけど。
ズキッ!!
『め』がいたかったらできなかった。
しかたなく『何か』のこうげきをよけるためによこに思いっきりとんだ。
「!?・・・は、早く逃げて!!」
白い子が何か言ってる。うるさいからだまっててくれないかな『め』にひびいていたい。
いたむ『め』で『何か』をみる。そのときにはもうさっきまで見えていた『点』と『せん』じゃなくて、くろくてくらい『うず』が見えていた。
あ~あ・・・もどっちゃった。ひさしぶりにしゅうちゅうしたからかな?まぁいいやこっちのほうがつよいし・・・つかれるけど。
『何か』にむかってはしる。
「迅い!?」
おどろくこえががきこえる、『め』にはおどろいてる『何か』とうずがみえる。まるであの『何か』がかわいいこえでおどろいてるように思えてすこしむかつく。
『何か』はおれにくろいうでつかまえよう
としてきた、だからおれはそのうでを。
手のひらからかたまでたてにきった。
「―――――!?」
ぜっきょうを上げる『何か』とてもうるさい、どうしおうもなくうるさいからだまらせようと『何か』を■そうとして――『何か』はばくはつした。
・・・・え?おれまだうできっただけなんだけど?
「はぁ・・・はぁ・・・ッ、本当にあなた何者?なにソレ、直死の魔眼ですらない・・・私が識らない能力なんて魔法くらいなのに・・・・・・まさかいえでも――」
「――ねぇいまの・・・おまえが?」
なんかぶつぶついってるのをむししてきく。
「・・・そうだけッ!?」
ありゃ?はずした・・・?
くびきったと思ったのに・・・。
「・・・いきなり何のつもり?」
おれはこたえない、どうでもいい。こいつはおれが■そうとしたやつを■した、だから■す。それだけ。
いみなんてない。
なんのつもりもない。
はしる。アレ■すために――。
グシャ!
「?????」
おれまだうごいてないんだけど?なんでたおれてんの?なんか体がおもい・・・。
「あははハッ!面白いわね、あなた。ねぇ・・・友達になりましょう?」
ともだち?・・・うーんまぁいいかなちょうど『家ぞく』じゃないやつとあそびたかったし。
「・・・おれはかざぎり 刃。そっちは?」
「かざぎり・・・風切!?なるほど・・・ね。・・・私はアリア、アリア・クレセント。よろしくね!刃!」
その日はいつもどうりの一日だった。アリアと俺が初めてあったなんでもないいつもどうりの日常。
それから俺とアリアは毎日会って毎日遊んだ。俺が『何者』なのかも教えてもらった――このへんは封じられてなかったのになんで忘れてたんだ?――。
そしてその日は来た。
「『けいやく』?なにそれ?」
いつもどうりあそびに来たら「契約しよう」って言われた。とりあえずいみわかねーからチョップしてからきいてみた。
「・・・私なんでチョップされたの?」
「ノリで」
「ノリで!?・・・私ノリでチョップされたの初めてよ・・・。子供って怖ろしいわね」
何言ってんのこいつ。おまえだってこどもだろう。そう思ったけどなんかいやなよかんがして言えなかった・・・なぜ?。
「まぁいいわ・・・。契約ていうのは・・・簡単に言えば約束よ」
「やくそく?」
「・・・(鸚鵡返しやばいかわいい)そうよ、約束。刃にはわたしとある約束をしてほしいの」
なんでちょっとはないきがあらいんだこいつ・・・小声でなんか言ってるし。まぁいいやなんかヤバそうだけどいいや。なんか気にしたらもっとヤバイ気がするし。
かんわきゅうだい。
「で?どんなやくそくなんだよ?」
むいしきにきょりをとりつつきいてみる。
「簡単・・・じゃあないけど大丈夫よ損はしないから。とりあえずうなずけばいいのよ。この約束は破っても大丈夫だから」
「やぶってもおこらないのか?」
「うん」
・・・じゃぁいいかなめんどかったらやぶればいいし。でもなんだろなんかダメな気がする。
「・・・ま、いいや、やくそくする」
「・・・よし!じゃあ始めるわよ!」
なんだろう・・・あのえがおとガッツポーズを見たら、なんかとんでもないまちがえを
したようなきがする・・・これでよかったのかおれは・・・?
「・・・彼の者を我が主としここに契約を結ぶ」
「なにこれ・・・?」
なんかへんなもんようが出てきた・・・。これってあれか?まほうじんってやつか?
「契約の証として我が血を受け入れよ」
「ん?え?なに――いた!?」
いきなりかまれた!?
な・・・ん・・・?ぼー・・・として・・・。
「んくっ・・・ん」
なにか入ってくる・・・?
「・・・ふぅ。・・・これで契約完了よ。契約内容は・・・まぁあなたが生きている限り私はあなたのモノになる・・・て聞いてる?」
んえ?何?何か言った?なんか頭がボーとする・・・?
「はぁ・・・まぁしかたないか。ちょっと刺激が強すぎたみたいね。・・・ここはさらなる刺激で目覚めさせるしかない!つまり・・・チャンス?」
・・・・・・ん?
「うを!?かおちかっ!?」
「あうっ!」
びっくりした・・・いきなり目のまえにかおがあるし。つい思いっきりけっちまった。
「げほ!ぐほ!!・・・ゆ、油断した・・・」
あーなんかいいとこはいったぽい。
まいいや、それよりも
「おまっ!いきなりくびかむとかふざけんなよ!!」
いたかったし、なんかへんなかんじしたし!!
「け、契約に必要だったのよ!とりあえず契約どうり私はあなたのモノになったわ。身も心もね」
「ええーいらね」
こっちみんな。なんかせなかがさむくなる。
「いらない!?」
「うい。いらない」
こんなのよりゲーム欲しい。
「・・・子供ってすごいわね・・・。ま、まぁもう少し大人になったらあなたがどちら側に居ようと損はしないし、モノにしてよかったって思うわよ」
ほんとかよ・・・
「で?おれはなにすればいいの?」
「え?」
何おどろいてんだ?
「おまえが言ったんだろ?『けいやく』だっけ?今の、つまりわたしをあげるからかわりにこれをやってほしいってことだろ?」
めんどかったらやらないけど。やぶってもいいらしいし。
「・・・うーんまだ確信してるわけじゃないからなー。次またあったときに言うわ」
「えー、なんかきもちわるいから今言ってほしいんだけど。つぎって明日会うんだったらあんまかわんないし」
「ん?明日は・・・ていうかとうぶん会えないわよ?」
アリアは少しさびしそうにわらいながら言った。
「そーなのかー・・・引越し?」
「あんたぜんぜん寂しそうじゃないのね・・・まぁいいわ。ちょっと長居しすぎたからね、そろそろ移動しないといけないのよ」
「ふーん」
「やばい・・・ちょっと泣きそう・・・」
いや、なくなよ・・・。というかさびしがるいみがわかんねー。
だって――。
「おまえおれのモノなんだろ?だったらさみしく思うひつようないじゃん。・・・いらないけど」
「いいこと言われたのに最後で落された!?・・・ほんとに落されたかも」
ん?なんかさいごのほうかお赤くして何か言ってたけど、よく聞こえなかった・・・まぁいいかどうせたいしたことじゃない。
「・・・とそろそろ行かなくちゃ」
そう言いながらなんで俺の方にちかよってくるんだ?
アリアの白くてキレイな手がのびてくる。なんとなくふりはらう気がおきなくてそのままでいると手がおれのおでこにふれる。
「またね」
そのこえがきこえるとどうじにおれのいしきは一部のきおくとともにやみの底へおちて行った。




