黄昏の雪2
「・・・サイテーね、クリスに斬られたほうがよかったんじゃない?」
話終えた瞬間に刃は極上の笑顔とともに咲夜に毒を吐かれる。
忘れていた刃が全面的に悪いのでぐぅの音もでない。
咲夜はうなだれる刃を見て満足そうに頷いてから本題に入る。
「まぁそれは置いといて・・・その人外ってあれよね?やたらしぶといゾンビみたいなやつ」
刃は、そうそうそいつ、と頷いてから。
「あのバラバラ解体しないといけないやつ。つーか人外じゃ区別が付きにくいからゾンビ・・・とはちょっと違うから死人って呼ぶことにしようぜ?」
咲夜と識はその方がわかりやすいし特に断る理由もないから刃の名づけに賛成する。
識は少し考えるように間を置いてから口を開く。
「・・・俺も今日までにその・・・死人?を何体か狩ってるが、そいつは別に解体しなくても脳を破壊すれば殺せるぞ。それより俺が始めて見つけたのもクリスと同じ一昨日・・・、今日になってもまだあんまり数が減ってないてことは次々に作り出されているってことじゃないのか・・・?どうするんだ?サイテー野郎」
「もういいだろ!?その話は!」
刃は本題と皮肉を同時に言ってきた識にツッコミ、ため息を吐く。
まったく締まらない三人である。
「どうするってもな・・・別にどうもしねーよめんどいし。あんなもんこの街の監視者の殺人シスターがなんとかするだろ?人を害する人外の駆除は教会が勝手にしてくれるよ。まぁ散歩のついでに狩るぐらいだな俺は」
刃はめんどくさそうに今後の自分の方針を言う。
「俺もそのくらいだな・・・、まぁ家の方が討伐に乗り出したら本格的に動くとするよ」
識も肩をすくめて、動かない、と宣言する。
「相変わらず識はシスコンね妹さんに危険がいかない様に代わりに動くんでしょ?・・・私は動くわ。真夜達に何かあってからじゃ嫌だし・・・それに私の居る街で好き勝手されるのは気にいらないわね」
三人の中で唯一この事件に関わり事件解決の意思表示をしたのは咲夜だけだった。
それぞれが今回の事にたいしてどう動くかを出し合うそれは、何かの儀式の様だ。いや、これは事実儀式なのだ。
この三人がこうして話し合うのは今回が初めてじゃない。今回の様な事はこの街ではよく起こる、そのたびに三人はこうして話し合い自分はどうするかを言う。
それは協力するためではなく敵か味方かを確認するためにしていることだ。
三人は・・・いや人間は究極的には自分のためにしか動けない。誰かの為にと言ってもそれは結局自分がやりたいからやっているだけ。よく恋人や家族なんかを守るために命を使って盾になったりするシーンがドラマやアニメなどにあるが、あれも究極的には自分の為なのだ『自分』が守りたかったから使えるものを使って守っただけだ。
自分が動く理由や意味も自分が自分で決めている。
選んでいる。
選択している。
だから究極的に人は自分の為にしか動けない。
それを三人は知っているから。
自分は自分の為にしか動かないと決め覚悟しているから。
自分にとって敵になるか味方になるかをこうして確認の儀式をするのだ。
「・・・じゃ俺は今日は主に精神的に疲れたから帰って寝る」
「俺も帰るとするかな・・・夜中に出歩いてるのがバレたら氷狸にどやされるしな」
「そう?私はもうちょっと狩ってから帰るわ」
三人は今回はお互いが敵でないことに安堵しそのことを表には出さずにいつもどうりに別れる。
「じゃあな」
「また明日学校でな・・・」
「ええ・・・もう日付変わってるけどね」
そうして夜は明けていく。
”
同時刻。
二つの人影が街にやってきていた。
一つは白衣を着た豊満な身体つきをした二十台半ぐらいのタレ目ぎみの美女。
もう一つは黒のコートに黒い長ズボンさらに黒い帽子を目深に被った三十台前半の堀の浅い柔和な微笑を携えた男性。
見ようによっては恋人か夫婦にでも見えそうな二人だ。しかし二人が引きずっている物。|人が数人入ってそうな麻袋によって、もはや誘拐犯にしかみえない。
二人は眠った街を悠々と歩きながら会話する。
「本当にこの街にいやがるンですか?」
美女はおかしな敬語とも呼べないような喋り方で言った。
「ええ、居ますよ僕の計算と予測に間違いはあまりありませんから。それにあなたもここに居ると確信しているでしょう?」
対する男は柔和な口調で返す。
「まぁそうなンですけどね・・・さっき捕獲したあの人外、あの死人を作ったのはおそら
くアイツでしょうし」
「しかし、ますます興味深いですね・・・不死という自分の異常を――不完全どころかまったく別物になっていますが――他人に移すことができるとは・・・」
「あたしもそれは今さっき知ったンですけどねェ・・・とりあえずはこのサンプルをいろ
いろ改造してやりてェです」
引きずっている麻袋に視線を向けながら口元が狂喜に歪む。
「そうだね。他にもこの街にはいろいろ興味深い輩が居るようだし・・・ラボにとってこれほど面白い街はそうそうないだろうからね」
二人は夜の街の闇に溶けて行った。




