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ビルドロボオンライン ~趣味に走った私の愛機、廃人どもに野生のレイドボス認定される~  作者: SIS


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第七十六話 なんか忘れてるけどいいか







 翌日。


 落ち着かない気分で家事を片付けて時間を作った私は、いそいそとビルドロボオンラインにログインした。


 視界が開けると、そこは前線基地の小屋の中。外に出ると、立派な壁や聳え立つ機体格納庫が見えたが、それらは今は後回し。大急ぎで機体に乗り込んでエンジンを立ち上げると、早速ホームに戻るべく基地を出る。


 じれったくも敷地の外まで歩いて出ると、ビームを放ってホバー移動。


 基地の中でぶっ放したら大惨事になるから仕方ないけどこれもどうにかしないといけないなあ……。


「それも含めて、急げ、急げー」


 荒野を全速力でつっきって工業地帯のホームに向かう。なんせ前線基地では今の所、パーツの新規製造ができないからね。


 基地設備が作れるんだからいいじゃん……とは思うが、機動兵器と工場施設が同じ設備で作れるはずもないしなあ。


 しかしそうなると、危険度の高い上位エリアの探索とかにはただ前線基地を置くだけでなくて3Dプリンターとやらも必要になってくるんだろうな、せっかく新しいパーツやアイテムを手に入れても強化に使えないんじゃジリ貧だ。


 まあソロの私には関係ない話だな。そもそもプレイヤーが工事終了するまで動けないとなると、安全地帯の少なさそうな危険な最前線だと建設完了まで護衛必須だろうし。PVPを推奨しているだけあって、ホントにギルド組まないと色々不便なんだろうな。どうでもいいけど。


 とにもかくにも大急ぎでホームに戻ってくると、嬉しそうな少女の声が出迎えてくれた。


『ショウさん! おひさしぶり、お帰りなさい! 随分長い出撃だったようですが、大丈夫でしたか?』


「あ、ああ、うん」


 やっべ。テレサの事忘れてた。


 昨日は前線基地でログアウトしたからホームに戻ってないんだよな……。今更気が付いたが、NPCは前線基地に自動的に来てくれないのか。


「いや、ちょっとね。前線基地、ってのを建てて……」


『前線基地?! まあ、とっても興味があります、詳しい話を聞かせてくれませんか?』


 両手を胸の前で合わせて、興味津々、といった様子のテレサ。と、そこでシステムメッセージが端的に補足説明を付け加えてくれる。


《NPCはイコンのある設備の間でしか移動できません。前線基地にNPCを連れていく場合は、複座か、予備機体を利用しましょう。命じておけば、ログアウト中にNPCが自発的に移動する事も可能ですが、戦闘による機体損失の可能性がある事に注意してください》


 あ、はいはい。そういう事ね。


 まあ、現状はいいかな。あの場所は適当に選んだから、近いうちに良い感じの所に移動させる予定だし。


 それよりも、機体カスタマイズだ機体カスタマイズ。


 コンソールに向かってカスタマイズ画面を開くと、ニコニコしながらテレサが横から覗き込んでくる。まあ別に煩わしい訳じゃないけど、なんだ? 妙に積極的だな。


『?』


 気になってまじまじと彼女を見ると、視線に気が付いたのか振り返って笑うテレサ。


 うっ、顔が良い……いかんいかん、カスタマイズに集中せねば。


「さってと……」


 今回選びますのは、メガフレーム腕部。


 通常機体の腕の数倍の大きさを誇る巨大な腕である、まあ分かりやすい。性能に関しては……なんだろうな? 人気はあるが微妙といった所。胴体や脚部と違って、こちらは腕という事もあって自在に動かせるし、サイズにみあった防御力もあるので当たり判定の増大に見合った耐久性も確保できる。が、そんなデカイ腕に見合った武器はデフォルトでもないし、合わせたサイズのを作ると重量が半端ない事になる。


 なので必然的に、その耐久性とサイズを生かしたステゴロ用のパーツになるんだけど、いくらデカいといっても素手殴りがそんなに威力でる訳もなく……が、それを踏まえても愛用者は多い。


 やっぱ先駆者というか、ロボアニメで格闘専用の大型パワーアームがかっこよく描かれたりしているからだろうね。他にもメガフレーム腕部を単純な増加装甲とみなして突撃戦法に使われたりもしているようだ、こっちはギルド戦でも時折見る。


 要はテンプレでは強い使い方がないが、アイディア次第で弾ける、創意工夫が生きるパーツという訳である。


 なので、その特性を私なりにフルに活用させて頂こう。


「まずは指関節を分解、っと。ふむふむ? こうなってるのか」


 まずは人型ロボットにおいてもっとも複雑な機構である、手のマニュピレーターを分解。てっきり通常サイズのそれをそのままスケールアップしたのかと思ったのだが、サイズに合わせて強度を確保しつつ軽量化すべく、工夫が凝らされているようだ。ちょっとした作業用アームぐらいの太さがある指は割と中空で、内部には油圧シリンダーが筋肉の代わりに詰まっている。


 それを外せば、パワーはなくなるが機構が色々仕込めそうだ。さっそく、それらの指関節に小型の偏向リングを埋め込んでいく。


 んでもって、それらの指へつながる手首の中にも、偏向リングを埋め込んで……肘に……肩に……よしよし。


 角度調整は難しい所だが、とりあえず指をぐっと伸ばした時に全部が繋がるようにして、あとは肝心のビーム砲だ。


「うーん……肩の付け根に埋め込むか? むむむ……」


『あの、さっきからこれ、何してるんです?』


「ああ、テレサさん。それはね……かくかくしかじか」


 さっきから不思議そうな顔で覗き込んでくるテレサに、やってる事の意味を説明する。


 彼女は指を立てて頬にあてる、可愛らしく悩むポーズの後に、心底理解しがたい、というしかめっ面で単刀直入に意見を述べてきた。


『……普通にビーム砲二つ積めばいいのでは?』


「それじゃダメなの!!」


 効率じゃなくて浪漫の話なんだこれは! 男の子だったら誰だって一度は憧れるんだよ!!


 ちっ、所詮は数字の並びにすぎないAIには、このパッションは理解できないか。


『……まあ、ショウさんがその形状に並々ならぬ執着がある、という事は理解しました。でしたら、私にちょっと考えがあります。ちょっと、触らせてもらってもいいですか?』


「え? い、いいけど」


 操作画面から身を引くと、代わりに前に割って入ったテレサが、カタカタカタ、と凄まじい速度で操作を始めた。指先が残像を残して踊る様はあきらかに人間離れしている。なんていうか、あれだ、SFとかサイバーパンクでアンドロイドが超高速プログラミングしてる感じ。……一応彼女、人間って設定のアバターなんだけどなあ。


『できました! これはどうでしょう?』


「ほへ? ……え? なにこれ」


『指関節に仕込んだ偏向リングに、自動で角度調整するプログラムを仕込んでみました。これで、指がどんな風な角度でも、腕の付け根から指先までビームが通せますよ』


 マジで!?


 いや、ちょっと考えなくはなかったけど、プログラムが難しくて諦めたんだよ。こんな事できるの?!


『ま、まあ、ちょっと門外漢ではありますので、念入りにチェックしてから運用してくださいね。一応変な事になったらシャットダウンするようにもしてますが』


「へー、へー……ほー……」


『あ、あと、付け根の部分に、こんな感じに偏向リングを設定すれば、一つの砲門を両腕で併用できますよ。こんな感じで』


 そういって示されたプログラムはもはや何が何だか素人の私には分からなかったが、どうやらコンマ数秒で入力されたビームの屈折方向を変える事で、左右の腕にエネルギーを割り振る仕組みのようだ。なんとなく、ブラウン管の原理を思い出す。画面の色素を発光させる電子銃、あれもビームの一種だったらしいね。今思うとなかなか凄い技術が世の中に溢れかえっていたものである。


 いや、しかし凄いな。


 流石はAI……これは掌をドリルさせざるを得ない。


『これなら機体を軽量化できるので、スラスターとか搭載して機動力を補ってみるのはいかがでしょうか? ふふ、どうです、お役に立てましたか?』


「役にたった役にたった、めっちゃ助かる。テレサさんが居て助かった。最高、素敵!」


『え、ええ? そ、そうですか……喜んで頂けたなら、よいのですが……』


 私のへたくそな賛辞に、顔を真っ赤にして俯きながらも、チラチラ上目遣いで見上げてくるテレサ。うーんちょろい。ちょろすぎない? ちょろ可愛い。


 それにしてもこれは、何かお礼をしないといけないな。うーん、どうしようかな。巻き込み死させるのが申し訳なくて最近は一緒に出撃してなかったけど、複座コクピットにしてみるか?


 どのみち前線基地まで連れていく必要があるしね。


「いやあでもホントに助かった。こんな感じで、今後も助けてくれるとありがたいよー」


『そ、そうです……か? じゃ、じゃあ、これからも頑張ります……ね?』


「うんうん、よろしく頼むよー!」


 彼女の手をとって、ぶんぶん握手するエモーション!


 ふふふ、そうと決まれば早速建造だ、せっかくだから高速建造チケットも使っちゃう!!


 ふははははは、長年のロマンが、夢が、すぐそばにせまっているぜ……がははははは!!










『そう、ですか……。私が設計すると……ショウさんは、喜んでくれる……。ふ、ふふ、ふふふふ……』






◆◆





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― 新着の感想 ―
やばい学習をしている…これは大騒ぎの予感
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