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ビルドロボオンライン ~趣味に走った私の愛機、廃人どもに野生のレイドボス認定される~  作者: SIS


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第六十八話 わらしべ貧者



 荒野を滑走する我が愛機。


 するー、するーと滑るような独特の挙動はなれると癖になる。


 なによりも、視界が安定しているのがとてもよろしい。


 歩くとどうしても視界が上下するので、視認性に問題が生じる。もし現実に、肉体感覚まで没入できる真の意味でのバーチャルリアリティがあったら、恐らく大半の人間が二足歩行の振動には適応せずにゲロゲロゲーになってしまうのではないか?


 その点、水平移動するだけのホバー移動はとても人間に優しい。


 まあ戦闘を考慮する問題は山ほどあるのだが。


「ふんふふふーん、快適快適」


 のどかなBGMでも流したい気分で、荒野のマップを埋めていく。見た目通り広いエリアだが、この移動速度なら数日もあれば全容を把握できるだろう。


 何より足を停めないので、サソリが湧いてこない。おかげで快適だが……流石に、移動し続けていれば敵が出ない、というほど楽勝ではないだろう。


 このあたりに来ると飛行で移動する機体も出てくるだろうし、そろそろ普通にアクティブ状態で徘徊しているメタルインセクトが出てくると思われるが。


「っと。そう考えたはしからお出ましだ」


 代わり映えしない赤錆の荒野に出現する遺物。


 遠目に見ると犬か何かのように見える、四足歩行のメタルインセクト。ジャッカルか、ハイエナ、といった所か?


 まだ距離がある。モニター映像を拡大して観察していると、相手に動きがある。


 まるでこちらに気が付いたように頭を巡らせてこちらを向き、砂埃を巻き上げて駆けだす。


 ような、ではない。この距離で気が付かれた?!


「っていうか足早っ!?」


 砂埃を巻き上げてみるみるこっちに距離を詰めてくるメタルインセクト。もしかしてチーターだったか、コイツのモデル。


 しかも一匹ではない。標準倍率に戻したモニターには、2方向から近づいてくる砂埃が映し出されている。いつの間に。


「ええい、先手必勝」


 ヒートゲージを確認するが、プラズマビームは次弾発射しても問題ないレベルまで冷却が済んでいる。一番近い相手に狙いを定めて、ビームを発射。遠方故にちょっと狙いが甘いが、それを機体を捻って薙ぎ払う事でカバーする。青白い奔流の向こうに消える敵の姿……その末路を見届ける暇はない。


 勢いを回復したホバー機構、プロペラを最大回転。進路を45度回頭、迫ってくるメタルインセクトから距離を取る。


「ええい、振り切れないか……!」


 ビームの攻撃を受けた一匹は撃破されるまではいかずとも足を止めたが、残り一匹は変わらずこちらを追尾してきている。あちらの方が早い、みるみる間に彼我の距離が狭まっていく。


 まあ、それはそれでやりようがある。


 私は腰からハンドグレネードをいくつか手にすると、タイミングを見計らってそれを荒野に投擲した。


 ボスボス、っと砂地に埋まるハンドグレネード。起爆まで3、2、1……そして丁度、まっすぐこっちを追跡するメタルインセクトがその近くを通りがかったタイミングで、グレネードが起爆する。


「たーまやー」


 ぼぼん、と砂柱が吹きあがる。割とこういうのをタイミング合わせるのは得意なんだ。


 さて、効果のほどはいかほどかなっと。


「……流石にこのぐらいじゃ死なないか」


 爆発の中から飛び出してくる敵の姿に舌打ち。流石に、初期装備で一撃死はしてくれないか。


 とはいえ、無傷という訳ではない。そのHPは三分の一ぐらい削れているし、何より大幅に移動速度が落ちている。ダメージで足の一本でも機能不全を起こしたかな。


 これぐらいの速度差なら、安心して引き撃ちが出来る。


 プロペラを片方反転させてその場で回転。後ろを向いたところで停止させ、マシンガンを発砲。


 踏ん張りが効かないホバー状態で発砲すると反動が厄介だが、この状態ならばバックしながら撃てるという訳である。ようは創意工夫だ。


 後ろ向きに進みながら放たれるマシンガンの弾丸が、追いすがってくるメタルインセクトを捕らえる。被弾によって骨みたいな体が少しずつ砕けていき、ついにはバラバラになって砂原に転がった。


 ぱりーん、と砕けて消滅する敵影を確認し、マシンガンを交換。


 あとは、最初にビームを撃ち込んだ一機。


「さて、どこいったかな……ぉぉ!?」


 突然の横殴りの衝撃。怯んだ機体の視界には、至近距離から爪を立ててくる獣型のメタルインセクト。HPバーが減ってる所を見ると、最初に脱落した個体だろう。いつの間にか接近を許していたか。


「ちっ!?」


 右腕を盾に、再度の攻撃を受け止める。幸いな事に、思ったよりはダメージが軽い。


 敵が機動力重視で一撃が軽いのと、こちらの機体が重装甲に加え、ホバーで浮いていて掴みどころがないせいだろう。だが逆に言うと、こちらも踏ん張りが効かないのでここまで近づかれると対処に難儀する。


 ひらりひらり、となんとか攻撃をいなしていたが、不意に機体の動きが鈍くなる。はっとヒートゲージに目を向けるが、いつの間にか砲身は冷却が完了していた。つまり、ホバーが止まっている。


「おわあ!?」


 途端に重たくなる敵の攻撃。振りかざされた爪が、盾にした右腕の装甲に食い込む。そのままこちらに掴みかかってくるメタルインセクト……そのどてっぱらにむけて、私はプラズマビームの引き金を引いた。


 至近距離で炸裂する青白い奔流。


 爪を喰い込ませていたのが仇になって、反動で吹っ飛ばされる事もなく至近距離からビームをぶち込まれるメタルインセクト。ガタガタガタ、とその骨のような瘦身が震えて、そして。


 粉砕。


 床に落とした骨格標本のように、部品を荒野にぶちまけながら砕け散る敵。


 残ったのは、右腕に深く食い込んだ爪だけ。それも、見ている前で砕け散って消滅する。


 再び砂原に砂紋を描きながらホバリングする愛機のコクピットで、私はふぅ、と安堵の溜息をついた。


「ちょっと焦ったー。ホバー機構は悪くないんだけど、やっぱ操作感が独特だなあ。戦闘時は足を止めて戦うか、あるいは無反動の攻撃手段を確保するべきだな」


 腰に残ったハンドグレネードの数を数える。やっぱり、何とかして爆発物スキルを上げて、無反動砲とかミサイルとかロケットを開放しないと、ホバー機とはかみ合わせが悪い。


 ただ、プラズマビームを胴体に内臓したのはなかなかどうして悪くない。砲身損傷を気にせずに至近距離でぶん回せるし。踏ん張りが効かないホバー機では、下手な格闘武器をもつよりもコイツを至近距離での札にした方がいいかもしれない。


「あるいはもっと、移動用の推力を強化する、とかかな。反動に負けないぐらい……スラスターも試してみるか?」


 サブエネルギーを使うスラスターだが、まあ斥力場装甲よりは消費は少ないだろう。そもそもほとんどサブエネルギーを使わないから現状有り余ってるし。


 いや、それでも結局、積極的に使うようになったらいくらあっても足りないか。


「となると、サブマシンガンのスキルをレベルアップさせて、こちらのサブエネルギー回復手段も確保したいな。こっちは確か、移動速度に応じて回復するんだっけ。あー、やる事がたくさんあるぅー」


 Aをする為にBが欲しくて、Bを手に入れる為にCが必要、まさに無限ループ。


 でもこうしてあーでもないこーでもないしてる時間がやっぱ一番ゲームしてるって気がするんだよねえー。


「とにかく、もうちょっと雑魚を狩ってスキル上げるか」


 私は気を取り直し、考えている間も風に流されるがままふよふよと漂流していた機体を、再び荒野の奥地に向かって突き進ませた。





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