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ビルドロボオンライン ~趣味に走った私の愛機、廃人どもに野生のレイドボス認定される~  作者: SIS


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第三十八話 雪原の大怪蟲


「さすがにこれだけ狩ったら沸いてこなくなるかー」


「ふぅ……」


 激戦の跡が残る踏み荒らされた平地。


 もってきたマガジンの7割を使い切ったぐらいで、雑魚の出現は停止した。


「しかし雑魚が枯れるとかあるんだな」


「ああ。その辺は制御システムが判断してるらしくって、プレイヤーごとの取得リソースが管理されているらしい。だから狩場の情報そのものはプレイヤーで共有されるけど、そこに行列ができたりする事は避けられているってわけだ。まあだからその範囲外のレイドボスの参加権は取り合いになるんだけどな」


 なるほど。


「って、それはつまり初心者の俺をダシにして稼ぎたかっただけだな、さては?」


「ばれたか」


 互いに愛機の拳をゴチンと突き合わせる。


 まあでもおかげで経験値もスキルもがっつり稼げた。正直言うと、ビームで来てたらどれぐらい稼げただろう……と思わなくもないけど、ビームの性能じゃ足を引っ張るだろうしな。ビームのスキルを伸ばしてない友人じゃ、先に進んでいるといっても製造できるビーム兵器のラインナップは変わらないだろうし。


「…………」


 愛機の握るマシンガンに目を向ける。たぶん、これをメイン武装にすれば友人のいる戦場までたどり着くのもそう時間はかからないだろうし、たぶん、あいつもそれを望んでいる。


 ゲームの道中は通り過ぎるものだ。通過点で足踏みするより、最前線の方がきっと楽しい。それはわかっているんだが……。


 まあいい。あいつも急かすつもりはないようだし、ゆっくり考えよう。


「さってと。だいぶん稼げたし、ちょっと戻ってラインナップを見てみたいところだな」


「そうだな。それはそうと、さっきから気になってたんだがそのジェットパックについて説明しろよ。ディティールの甘さを見るに自作か? どうやって作った?」


「くふふふ、これはだなあ……」


 互いにしょうもない雑談に興じながらその場を後にする。一通り雑魚を倒したから、帰り道の安全は確保されている……そのはずだった。


「む」


「うん?」


 ずしん、という振動が足元から伝わってくる。


 一瞬気のせいかと思ったそれは、二度、三度と伝わってくる振動に確信になる。自然と二人で背中を預けあって周囲を警戒する。


「雪崩か? 今の戦闘で……」


「いや、これは……何か大きなものが……危ない!!」


 突如として、傍らにあった大きな雪山が爆発したように吹き飛んだ。粉雪が白い爆風のように吹き上がり、その下にあった岩がガンラゴロゴロと転がってくる。


 それを回避しながら距離をとる私達の前に、嘶きと共に巨大なメタルインセクトが姿を現した。


「象?!」


 ぽおおん、という特徴的な叫びに加え、しなる触手と二本の長い牙。前進を深い毛でおおわれた巨体は全高20m近くある。これまで遭遇してきたメタルインセクトの中では三番目ぐらいの巨躯だ。


「ゾウムシか! こいつこのあたりには出ないはずなんだが、プライベートモードだからなんかズレたか?」


「えっ、ムシ?」


 私の知ってるゾウムシはこんなんじゃなかったはずだが……。そう思って足元をみると、確かに足が四本ではなかった。六本ある。


 いやいやいや。


「ゾウムシってそういう意味でゾウムシって呼ばれてるんじゃないんだけど!?」


「昆虫博士の解説はまた今度! 突進来るぞ!!」


 友人の警告に従ってその場を飛び退る。二手に分かれて回避した真っただ中を、巨大なゾウムシが突進して通り過ぎた。


「どうする?! 戦うのか?!」


「……二人だと分が悪いが、実入りは大きい! 勝てればめっけもんって事で!」


 言いながら友人の機体がスラスターで跳躍し、旋回中のマンモスの背後に取りついた。ローターブレードを振り回し、バリカンのように毛を刈っていく。


「こいつの毛皮は弾丸ダメージを軽減する! 何か手があれば先にこの毛皮を引きはがせ!」


「りょ、了解!」


 言われて私はナイフを取り出して、ちょっと考えたあとしまい込んだ。


 いや、いくらなんでも無理がある。しょうがないので、毛皮に覆われていない部分を狙ってマシンガンの引き金を引く。


 これまでの戦闘でだいぶんこれの扱いには慣れてきた。巨大な足の関節、振り上げた鼻の裏側、翻った毛皮の下に露出する首、腹。そういった場所にバースト射撃で攻撃を叩き込んでいく。


「よぉし、いいぞ! この調子で……おわっ!」


 巨体につぶされないよう立ち回っていた友人の機体だが、着地の際に足を滑らせてバランスを崩した。硬直する彼に敵意が向けられるのを見て取り、慌ててインターセプトに入る。


「こっちだ!」


 これまで敢えて狙っていなかった目の周りを狙う。虫というだけあって、つぶらなお目目ではなく、頭部には複数の単眼が毛皮の中に点在している。毛皮を縫い留めるビスを思わせるそれに、バースト射撃で何発か叩き込む。多くは外れて毛をまき散らすだけにおわったが、数発が命中。目を潰されて苦悶の叫びをあげるマンモスが私に向けて、残った瞳に憎悪の赤色を灯す。


『パオォオオ!!』


「うわ、ちょっ」


 そして牙を振り回しながらの突撃。ただ突進するのではなく長い牙を振り回してのそれは、回避するにもタイミングを見計らう必要がある。


 空に逃げようにも、ロケットブースターは初速が惜しい。間に合わない、と判断して、私は振り回される牙を潜り抜けようと機体を走らせた。


「うわあ!?」


 しかし残念ながら回避には失敗。機体のでっぱりが牙にひっかかったのか、軽々と機体が宙に舞い上がる。直接ぶちあてられなかっただけマシではあるが、ぐるぐると回転する視界ではとても機体の制御を取り戻せない。オートバランサーだよりになんとか体勢を取り戻すよりも早く、視界一杯に真っ白な地面が映りこむ。


 衝撃。


 二転、三転。何かに激突してようやく停止。


 コクピットの照明が明滅し、火花が散る。衝撃でアバターのHPが減った事が表示された。


「う、く……」


 同時にいつになく激しい映像にちょっと3D酔い。頭を振って気合を入れなおしてコントローラーを握りなおす。


「大丈夫か!?」


「ああ、問題ない。そっちは!?」


「ただいまロデオ続行中!」


 傾いた視界の隅で、地面を踏み鳴らすマンモスの足が見えた。どうやら、友人が再び奴に切りかかり、時間を稼いでくれているらしい。


 だが見るからに大型のエネミー、一人で相手するのは無理がある。


 なんとか機体を起き上がらせる傍ら、何かが外れるバキリ、という音がした。


 見下ろすと、背中に背負っていたはずのプラズマジェットエンジンが足元に転がっていたのが見えた。


「うげ」


 素人仕事で取り付けたのがよくなかったのだろう。接合部の強度不足、地面にたたきつけられた時に外れてしまったようだ。壊れていなかったのは不幸中の幸いだが……。


「……いや。待てよ?」


 あの毛皮は弾丸に対して高い防御力を持つという話だったが。


 じゃあ。ビーム砲はどうなんだ?


 壊れたプラズマビーム砲を手に取る。吸入ファンは故障しているが、砲身そのものはぴんぴんしているようだ。おそらく一発ぐらいなら撃てる。


「Mimizu!! 合図と同時にマンモスから距離をとれ!」


「? 了解、何かすんのか?」


 訝しみながらもこれまでの付き合いがあるからか、友人は素直にうなずいてくれた。


 機体に膝をつかせ、プラズマビーム砲の狙いを定める。暴れるマンモスの胴体に狙いを定めて……今!


「下がれ!」


 スラスターを噴射して友人の機体が退避した直後、私はトリガーを引く。


 砲身が眩く輝き、青白く燃えるプラズマの閃光を解き放った。






◆◆

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