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ビルドロボオンライン ~趣味に走った私の愛機、廃人どもに野生のレイドボス認定される~  作者: SIS


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第三十二話 スタンダード・イズ・ベスト


 しばらくぶりに話す友人は、電話の向こうでひたすら爆笑していた。


『わははははははははははは、ひひひひ、あはははははっ!』


「笑うなよ。こっちは真面目に困ってるんだ」


『あはは、ひ、ひひっ、わ、悪い悪い……いや、まさかそんな事になってたとはなあ』


 悪いと言いつつ、なかなか衝動が引かない様子の友人に溜息をつく。


 スマホに耳を傾けながらパソコンの画面に目を移すと、そこでは謎のレイドボスについての探索情報が共有されている掲示板。


 森に続けて火山にも表れた謎のレイドボスでギルドチャットは大賑わいのようだ。残念ながらその調査は進んでいないようだが、当たり前である。


 あれから私は機体を組みなおし、オンラインに一度も入っていない。


 時間経過で有耶無耶になるのを狙ったのだが、そううまくはいかないようだ。どうにも愉快犯が何度か出現したようで、そのせいでなかなか話題が鎮火せずにいる。その愉快犯はビーム兵器を使いこんでいないハリボテだったようで、即座に処理されたようだが。弱すぎたせいで逆に私の機体と比較されて、ますます謎のレイドボス認定が強まった結果に終わってしまっている。迷惑な。


 ちなみに、ついでのようにビーム兵器の検証も行われたようだったが……悲しい事に、あらためて産廃である事を再確認されただけに終わったようである。ていうか一人ぐらい『ビーム兵器博学』スキルの解放まで使いこんでみてくれよ。制御スキルで終わってんじゃねーよ、根性が足りない、根性が。


『まあでも、ゲーマーの夢じゃん、そういうの。俺だって一度ぐらい噂になってみたいぜ』


「実力で認定されたんならいいんだけどな……現状だと単にバグじみた挙動と状況が噛み合ったマグレだぞ。これを実力だと思われても困る」


 そもそもオンラインゲームで悪目立ちすると、タチの悪いプレイヤーからちょっかいをしかけられる事もしょっちゅうだ。基本的に楽しいMMOの唯一にして最悪の欠点である。


 昔、別のゲームで通り魔プレイヤーに目をつけられて拠点から出る事も出来なくなった嫌な思い出がよみがえる。こういう、PVPもありな感じの自由なゲームって人の性根が出るよね。


 そもそも自分は対人戦が得意ではない。勝つのが好きなのであって、負けるのは嫌なのだ。そしていくらでも格上がいるオンラインゲームの世界においては私は下から数えた方が早い立場であり、基本的に負けの方が多い。


 一人でこそこそ楽しい事を追求して、時折オンラインに接続してわからん殺しで勝利を得て対策される前に引っ込む。私みたいなヘボゲーマーはそうやって日陰でこそこそ生きていくのがお似合いなのだ。


 なのにこんな大ごとになったら注目を浴びてしまう。それは即ち、対策されてボコボコにされるという事だ。


 全く持って望んだ展開ではない。


 それはそれとして、謎のレイドボスとして持ち上げられているのはちょっと楽しいのも事実だが。


『まあ、そりゃそうだが……。まあしかし、妙な事やってくれると思って誘ったかいがあったぜ。これからもアホな事して環境をひっかきまわしてくれ』


「お前なあ……」


『まあそれはそれとして、今は時々オンラインにつなげるんだろ? 今度一緒に狩りにいこうぜ、自力だとまだ先のエリアにつれていってやるよ』


 実に魅力的な誘いだ。


 先に進むのは自分の力でー、とかいう考えもない訳ではないが、ビーム兵器主体だと色々大変なのも事実。先の素材で強い武器が作れればその分試行錯誤も捗る、多分。


「いいな。なかなか魅力的な提案だ」


『だろ? 別にこのゲーム、先に進んだら序盤の武器がゴミになるって事はなくて、単に敵の行動パターンが複雑になったり耐性がついたりタフになるって感じだから、なんだかんだでお前なら問題ないと思うんだよ。あ、でも流石にビーム兵器はやめとけ、話に聞く限りのDPSだとまともに回らん。申し訳ないが、ちょっとマシンガンがサブマシンガンのスキルを鍛えておいてくれ、武器は用意するから』


「ん、わかった」


 ただでさえ弱いビームで、それも格上の狩場にいったら役に立たないのは私も同意だ。今回ばかりは主義主張を曲げて普通の武器を用意しておくことにしよう。


 それはそれとして、割り切ってビックリドッキリメカ方向にカスタマイズしておこうかな。


『んじゃ、また次にオンラインできる時に、よろ~』


「了解した」






 という訳でカスタマイズの時間である。


「さーて、どうしようかな」


 ガレージに佇んでいるのは、森林エリアに進めたぐらいで作れるようになった中量パーツで固めた二脚機体。ザ・ベーシックという感じの角ばった装甲の機体は、攻略サイトでもお勧めされるぐらいにはメジャーな機体だ。実際使い勝手も悪くないし、何よりそんなに運用コストがかからない。


 これをベースに、胴体をより耐久性が高いパーツに変えて、両手に大型マシンガンを装備するのが狩りのテンプレ装備らしい。


 それにならって、私もマシンガンを装備してみる。


 ロービジのカラーリングも相まって、ザ・量産機といった所。個性もへったくれもない感じだ。


「ちょいと出撃してみますかー」


 どの道スキル上げも必要だ。私は最低限の装備を施したその機体で早速火山地帯に出撃した。


 そしてヤドカリやロボバッタ、ドローン蜂と戦ってみたのだが……。


「うわあ。あっけな……」


 数体の敵を全滅させてマガジンを交換しつつ、私はその容易さに呻いた。


 装備している武器は初期装備ではなく、火山地帯で作れる強化型モデルとはいえ進行度でいえば適切なはず。


 しかし、マガジン数35発の火力は圧倒的だった。ヤドカリの本体に撃ち込む事およそ10発、多少外しても3匹仕留めてお釣りがくる計算だ。バースト射撃して精度を高めればより確実。


 それに加えて、機体の機動力が桁違いだ。最低限の装備、マシンガンとナイフに、予備マガジンを5つほど搭載した機体はまだ積載量が三分の一ほど残っているせいか、非常に身軽だった。歩く速さは勿論の事、登攀の速度も段違いだし、何より小走りで段差に昇ればその勢いで軽く跳躍だって出来る。着地時の硬直も非常に短い。ヤドカリミサイルの回避も楽勝だ。


 なんていうか、ビーム兵器がどうして誰も見向きもしないのか、あらためて実感させられる。


 あれらは、見捨てられた装備なのだ。


「…………」


 付近のエリアの敵の全滅を確認し、私は敵の姿を求めてその場を移動した。




 その後10分ほどで、いつもの数倍以上の資金とアイテムを稼いで、私はその日のプレイを終了。


 そしてどことなくもやもやした気持ちを抱えたまま、ベッドにもぐりこんだのだった。



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