第二十三話 煮えてますか?
火山地帯に巣食う、強敵ヤドカリ。
しかし、探索して判明したのだが、この火山地帯に生息するメタルインセクトはそれだけではなかった。
まるでチュートリアルはこれで終わり、と言わんばかりに、多数の敵が進む私に襲い掛かってきたのである。
「ええい、うっとおしい!」
ぶーん、ぶーんと羽ばたきながら纏わりついてくるのは、ドローンとハチを足して2で割ったようなメタルインセクト。二つのプロペラで羽ばたきながら、至近距離から火炎放射を浴びせかけようとしてくるそれをナイフを振るって追い払う。
ガッ、とナイフの切っ先がプロペラにあたり、忽ち体勢を崩して墜落するドローン蜂。
こいつに構っている場合ではない。私は慌てて手近な岩陰に身を隠した。
そこへ降り注ぐのはヤドカリのミサイル弾幕である。
撃ってきているのは一匹だが、広範囲を巻き込むミサイルの爆発は厄介だ。無理に逃げるより、インターバルを待って離脱した方がいい。
そんな私に近づいてくる敵の影。
まるで物陰に隠れた所を待っていたかのように回り込んでくるのは、オレンジ色のロボバッタだ。凶悪に張り出したアゴをギチギチさせて、身動きできない私の機体に飛び掛かってくる。
「こなくそ!」
ナイフを突き出して噛みつきを受け止め、間髪入れずに蹴りをぶち込む。岩陰から押し出されたロボバッタは、ドローン蜂もろとも飛来するミサイルの爆撃に巻き込まれて木っ端みじんに吹き飛んだ。
そこで、ようやく弾幕が途切れる。もうHPの少ない岩から飛び出して、私はリロード中なのか動けないヤドカリの、剥き出しになった目のあたりに向けてビームを撃ちこんだ。
殻ではなく体組織への直撃でごりっと減るHPバー。さらにオーバーヒートと引き換えの二発目で一気に削りきる。
がくん、と肢を投げ出して脱力し、遅れて爆発四散するヤドカリの末路を見届けて、私は油断なく周囲に目を配った。
……敵影、なし。
どうやら近くにアクティブ化した敵はいないようだ。
「ふ、ふぅー……」
激戦を乗り越えた疲労感に肩を落とす。今のは危なかった。
「流石に敵の数が増えてきつくなってきたな。というか地形が悪すぎる」
ただでさえ落下したら即死の溶岩地帯、おまけに奥に進めば進む程足場が悪くなっていく。そこに、制圧射撃してくるヤドカリと、物陰に隠れたプレイヤーをあぶりだしてくるロボバッタとドローン蜂という組み合わせだ。普通に凶悪過ぎてドン引きである。
幸いなのが、全体的に実はそんな硬くない、という事だろうか。ヤドカリは殻が硬いだけで中身が柔らかいし、他の敵もナイフであしらえなくもない。
あれかな、放熱の為に装甲が薄く作られてるのかな。
「あくまでヤドカリの殻が硬いのは例外なのか……いやだとしてもあれ、いくらなんでも硬すぎるけど」
あの装甲を機体に使えたら強そうである。幸い、いくつか殻の破片をドロップしているので新パーツが楽しみだ。
どうもレアドロップか条件ドロップらしく、倒した時に毎回出る訳ではないというのも期待が膨らむ。今回もドロップしなかったし……。
「おや?」
戦利品を確認していた私は、そこで初めてシステムメッセージが届いている事に気が付いた。
戦闘中の事なので気が付かずに流してしまっていたらしい。
《『粒子砲スキル』がレベルアップしました! 新たに『熱エネルギー再転換』スキルをゲットしました!》
「おぉー……?」
取得したスキルに、思わず周囲を見渡す。スキル内容はまだ確認していないが、この状況にいかにも、といった感じに思える。
これは新しいアセンブルを試す機会かもしれない。
「よし、今日はこの辺りにしておくか」
今は一刻も早くガレージに戻らなければ。私はウキウキ気分で帰路についた。
◆◆
狩りを終えて、無事にガレージに帰還した私と愛機。
今回はデスルーラでなく、自分の足で歩いての帰還である。エレベーターを降りてくる愛機はズタボロではあったが、同時にどこか誇らし気にみえた。
「さて……」
安全地帯に戻ってきた事で、安心してステータスを確認できる。
新しく得たスキルの内容は、以下のようなものだった。
『熱エネルギー再転換:一定以上の熱量が機体に蓄積した時、それをサブエネルギーに転換する』
「おぉー……」
なんだかサブエネルギーとかいう新しい単語が書いてある。軽く調べると、補助装備にはロケットブースターのようなリチャージ式のものばかりではなく、サブエネルギーを消費して使えるものもあるらしい。こちらはリチャージせずにサブエネルギーがある限りずっと使えるが、サブエネルギーの補給手段が必要……という事だ。上位陣のプレイヤーがスラスターでびゅんびゅん飛び回ってるのも、このサブエネルギーを用いての機動らしい。
というか、現状閲覧できるパーツにもいくつか普通にサブエネルギーを使うパーツはあった。
ビーム砲のせいで積載か機体エネルギーがかっつかつなので、そっちを見る余裕がなかっただけである。
「今後はちゃんとカタログ全部見よう……んで、ヤドカリの殻から作れるパーツも補助パーツか……何々、『斥力場装甲展開装置』? わあ、強そう……」
説明を読む限りでは、サブエネルギーを消費して見えない力場の盾……斥力場を作り出す、といったもののようだ。どうやらあのヤドカリの殻が異様に硬かったのは、この斥力場で身を守っていたかららしい。
ただ、見た限りエネルギー効率が凄く悪い。他のサブエネルギーを消費するタイプの装備と比べても、桁が一つか二つ違う。
普通に使うと、それこそアサルトコアシリーズにあったエネルギーマシンガンの如く、数秒でエネルギーを使い果たしそうだが……。
「ふふ……いい事を思いついた」
斥力場装甲。熱エネルギー再転換スキル。そして、この間製造可能になった、強化型プラズマビーム砲。この組み合わせにシナジーを感じて、私は早速機体のカスタマイズに入った。
「やっぱりプラズマビーム砲がクソ重いな……脚部は重量二脚になるか。ああでもあの距離を歩いていくのはマジで勘弁だぞ、片道だけでも楽に……あ、そうだ。使い捨てでいいなら、これをこうしてああして……よし。予備を背中に背負わせて……うん。あとは、これをこうして、ああして……あ、そだ。最近カスタマイズした後名前つけてなかったな……ええと……」
そして出来上がったのは、大型の右腕を大型のプラズマビーム砲に換装し、左手に巨大な実体シールドを装備した重量二脚型のロボである。ポイントは、足裏に装備した細長いスキー板のような装甲。こいつはいわゆるスキッドである。こいつと、背中のロケットブースターを組み合わせれば、多分地面を高速で滑走できるはずなのだ。勿論、地面と擦れるスキッドはすぐに駄目になってしまうだろうが、あくまで火山地帯までの移動に使えればそれでいい。帰り道用の予備を一式、背中にちょっとレーダーとか放熱フィンっぽく装備しているのが拘りである。
あとは、実際に斥力場装甲がどれぐらいのエネルギー効率で、どれぐらいの防御力があるか次第だが……まあ、何でも試してみるものである。ゲームなんだからさ!
完成予想時間は……ちょっとかかるな。
今日は、これで終わりにしよう。
おつかれさん、また明日。
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