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ビルドロボオンライン ~趣味に走った私の愛機、廃人どもに野生のレイドボス認定される~  作者: SIS


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第二十話 スパイダーハンティング


「お、おぉー」


 そして待ちに待った時間がきた。


 いつもと違い、オンラインモードで入室した私は、目の前に広がる光景に思わず声を上げた。


 いつもは閑散としていて、冷たさすら覚えるホームの光景。


 だが今は、そこに様々な格好のプレイヤーが往来し、人でごった返している。


 いつもは沈黙を貫くワールドチャットも、無数のメッセージで溢れかえっており、活気を感じさせた。


『Diale:今日こそは溶岩地帯のホームに辿り着くぞ』


『vox:狩り友募集中』


『roll:行商人やってます、交易希望あればメッセージに』


 ぞくぞくと流れていくメッセ―ジを見るに、どうやら大半のプレイヤーはこの森ではなく、先の溶岩地帯に用事があるようだ。このあたりはまだまだ最初の方のエリアだが、それでもこれだけ人がいるというのはこのゲームがなかなかにぎわっている事を感じさせて嬉しくなる。


 どんなジャンルでも衰退は初心者の減少から始まる訳だしね。


「む、むぅ……」


 知らない人とも楽しめる、というのがオンラインゲームを楽しむ道理だとは思うが、どうにもちょっと気後れしてしまう。攻略サイトで、ビームが地雷扱いされているのを思うと、声をかけてもアセンを知られた途端、「フレンドに呼ばれました」となるのが透けて見えている。


 どの道まだ本格的にオンラインはできそうにないし、一人で遊ぶことにしよう。


 結局私は誰にも声をかけずに、ハンガーの愛機に乗り込んだ。


「うええ、マジか」


 そして出撃した私は、外の光景が様変わりしている事に思わず声を上げた。


 記憶が正しければ、このあたりは空も見えないうっそうとした深い森だったはずである。


 だが見れば、周囲の木々は切り倒され、青空からさんさんと太陽の光が降り注いである。そればかりかすぐ近くには公道と思われるアスファルトの道路が大きく広がり、森を切り開きながら彼方の火山地帯までの道が出来ていた。


 後から後から、続々とプレイヤーの機体と思われるロボットが行列を成してその道を進んでいく。二本足でえっちらおっちら歩く者もいれば、タイヤで颯爽と駆け抜ける機体、中にはスラスターで飛翔し、空を行く機体もある。カラーリングも様々で、実に賑やかだ。


 が、しかし。その中に足を止めて森に向かう機体は見当たらない。


 まあ理由は分かる。


 あの森の中、見通し悪いし弾は飛ばないし敵は不意打ちしてくるしで結構大変だもんね。稼ぎには稼ぎに適した狩場が必要で、そういう意味ではここは到底それに適さない。大胆に切り開かれて道路なんか作られてるのがその証拠だ。


 多分、一部の素材目当てで物好きが潜りにくるだけなんだろうなー。まあ、ゲームにはそういう場所は必要ではある。ソロで気ままに、なんかこー孤独を気取るというかそういう、気分を味わうエリアというか。


「……私も行くか」


 この道路を使えば簡単に溶岩地帯に行けるのだろうが、まだこのエリアを攻略したとは言い難い。満足するまで、もう少しこの森で狩る事を決めて、私はロケットブースターで高い梢を目指した。


 もう少し、今日は奥の方に行ってみよう。






 そんなこんなで、ロケットジャンプを繰り返す事3度。プレイヤーの姿も見えない森の奥、敵の姿が無い高い梢に身を預けた私は、早速狙撃の準備を開始した。


 勿論、前回の事は忘れていない。今回はちゃんと対策を用意してある。


「ええと、これ、これ、これっと」


 鋼鉄の枝に設置するのは、吸着地雷の一種だ。敵が近づくと反応して爆発、散弾を撒き散らす。これを早期警戒ライン代わりに設置しておく。消費型アイテムだが、一個一個は非常に安いので使い切りでも惜しくはない。勿論地雷型アイテムは無差別攻撃に該当するため、大抵のゲームでは嫌われるがこんな高い木の枝に、好き好んでくるプレイヤーもいないだろうし。


「よし。今日こそはかっこよく決めて帰るぞ」


 最近はなんていうか、いつも最後にオチみたいな感じになってるからな。たまにはきっちり決めて、五体満足でガレージに帰還したい。


 モニターを切り替えて、敵の姿を探す。


「お、いるいる」


 忽ち画面に表示される白いシルエット。奥の方に来たからか、見覚えの無いシルエットがたくさんある。何やら、三機一セットで行動しているようだ、そういうメタルインセクトなのかな。蟻の事もあるし、多分一匹を攻撃したら全員アクティブになる恐れがある。注意しよう。


「んー。でも他のに比べて、白点が……なんか多いな? 何か背負ってるのかな?」


 蜘蛛達は腹部に搭載していると思われるジェネレーターが弱点判定だったようだが、今見えている奴はそれが複数ある。しかも個体ごとに場所が違うというか……んん? なんだろ。


「まあいいか。やる事は変わらんし」


 私は照準に敵を捕らえると、引き金を引いた。


 放たれたビームが昏い梢を貫いて、標的に突き刺さる。


 ジャックポット、弱点を射抜かれた機体は動きを停めた直後、爆発四散する。


「よしよし……」


 拡大画像を一端戻し、周辺を警戒しながらビーム砲の冷却を待つ。画面の中では、仲間の一機を撃ちぬかれて敵が周囲を探っている様子が見られた。ちょっと賢いのかな、試し撃ちした時の蜘蛛はこちらを認識できなくてわちゃわちゃしているだけだったけど。


 まあいい、やる事は変わらない。


 ヒートゲージが19%を下回ったのを確認して、私は再び狙いをつけた。拡大画像の中で、回避機動のつもりか動き回っている一機に狙いをつける。


「残念ながら、ちょっと動きが単調かなあ。ほい」


 一射。


 爆発四散する敵は放っておいて、次のターゲットを狙う。オーバーヒート覚悟で、速射。


 まるで驚愕したように動きを止めていたから、狙いやすかったね。これで3機のグループは全滅だ。


「ん?」


 と、他のグループが活発に動き出しているのが目に入って、私は首を傾げた。


 別のグループなのに、攻撃を受けた事でアクティブになった? 距離があったせいでそう思っていただけで、同じグループだったのだろうか。


 まだあちらはこちらを見つけていないようで、周辺を警戒するように円陣を組んでいる。残念ながら、梢に隠れた私からは丸見えだ。


「どーれ、銃身も冷えたし、次に行くぞ」


 冷却が完了したビーム砲の狙いをつけて、同じように1体、2体の順番で始末する。オーバーヒートした砲身が煙を噴き上げて冷却するのを待っていると、最後のグループに動きがあった。


 恐らくこちらの場所を特定したのだろう。真っすぐにこっちに向かってくる、が。


「ちょっと遠いねえ」


 十分な距離をとって狙撃しよう、という私の考えは正しかったようだ。あちらさんの移動速度はかなり早いが、それでも冷却は十二分に間に合う。と、何やら木々の向こうで、ばっ、ばっ、と白い点が弾けるように連続で広がり始めた。これは……もしかして、射撃武器?


 距離が遠いとみて、射撃武器で攻撃を試みているのか。


「おっかな!」


 そういえばこれまでの敵は基本的に肉弾戦がメインだったか、確かにそろそろあっちも飛び道具を使ってもおかしくはないか。だが、この環境で射撃武器があってもね。


 案の定、その殆どは鉄の枝葉に遮られてこちらには届かないようだ。


 なんだか可哀そうになってきたが、これも戦場の倣い。


 仕留めさせてもらう。


「ナンマンダブ……」


 射撃に夢中で動きが止まっていた一機のど真ん中をぶち抜いて爆発四散させる。


 規定値まで冷却が完了するのを待って、二機目をズドン。


 だいぶ近い所でキノコ雲が上がるのを見ていると、最後の機体が妙な動きを見せた。


 画面の向こうで広がる、高エネルギー反応……これは……飛ぼうとしてる?


「蜘蛛じゃなくてカナブンか何かだったか? まあ、いいんだけど、別に」


 木々の上に出られたら、自由に動き回るであろうそれを撃ち落とすのは確かに厄介だ。だけど、森の上に出るには、梢の隙間を縫って飛ばなければならない。ここからだと、どこから出てこようとしているか丸見えなんだよな。


「3、2、1……っと」


 まっすぐ飛び上がるだけの対象など、狙わなくても容易い標的だ。それにスラスターか何かを展開しているのか、狙うべき白い点が大きくなっている。推進機関ってさ、まあもろ弱点だよね。


 あとはタイミングを合わせて引き金を引くだけ。狙い通り、ドンピシャでビームを撃った、その時だ。


「あ、あれ?」


 突然、画面がザッ、とノイズ塗れになる。画面の中で飛翔した姿のままで敵のシルエットが硬直し、ビームが空中で停止している。


 えっと。


 これは、まさか。


 原因に思い当たった直後、無慈悲なメッセージが表示された。




《通信が途絶しました》




「ぬわーあーーーーー!!」


 私は思わずVRヘッドセットを脱ぎ捨てて絶叫した。


 今! いいところだったのに!!


 しぶしぶオフラインでゲームを再スタートするが……残念ながら、通信途絶前の大立ち回りの戦果は、虚無に呑まれてしまったようだ。


 せめて何を仕留めたのかぐらい知りたかった。ちゃんとログの確認ぐらいしておけば……いや、かえってそれは傷を深くするだけだったのかもしれない。どんなレアアイテムを手に入れてたとしても、消えてしまうのだから。


 しょんぼりしながら、私は今日はもうゲームはやめておくことにしたのだった。





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