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一 始まり。皆殺し。

剣先から流れ落ちる雫は、死の知らせ。


「殺せぇ!!」

向かってくる男達は彼女に剣を当てられない。


ここからやる事は簡単だ。

「やめろ!!俺たちは仲間だ!!」

「よせ!!」

「ふさげるな…裏切り者がァァ!!」


そんなやりとりをしているが、男達はただ…互いを斬り合っているだけだ。


彼女に届くのは、“血”のみ。


「私こそが…酒鬼だ」


────────────────


『酒』

それは人を楽しませ、酔いへと導く素敵なもの。


蔵元。

世界に素晴らしい日本酒を作る人達。


柊一郎、柊皐月

この夫婦が作る物はどれも極上で世界的にも評価される逸品だ。


世界に名を轟かせても、謙虚に新しい酒を作り続けた。


彼らは二人の子供を儲け、兄には(たく)、妹には紅羽(くれは)と名付け、自分達が進みたい道を進んで欲しいと願っている。



[三年後、拓七歳、紅羽五歳の時]


両親の蔵元を見せてもらった二人は目を輝やせながら、機械などを凝視していた。


手をぎゅっと掴みながら。

「……きめた!」


「きめた?」

拓が父親達の前で、大声で宣言しようと息をたくさん吸い込み答える。


「俺は!父さんを超えるくらものになる!!」

嬉しそうに目を見開いた父親はそうかそうか!とわしゃわしゃ頭を撫で、二人を抱きしめた。


「わたしは……なにになればいいの?」

夢が思い当たらない自分に不安になった紅羽は涙目になり父親を見る。


何者かにならなくてはならない気持ちが彼女にはあるのだろう。


「大丈夫さ」

ぽんと頭の上に乗せ、こちらもわしゃわしゃと撫でた父親はにっと不器用な笑顔を見せて話す。


「勇気と信念さえあれば…紅羽は何にでもなれる!!」


「!!ほんと!?」


「あぁ本当さ!」

すると拓は再び大声で紅羽を見据える。


「じゃあ勝負だくれは!!お前と俺、どっちが先に夢をかなえるか!!」


「うん!!」


そんな幸せな毎日──……

─────────

[おおよそ二十四年後]


()()は車に乗り、ある場所へと向かっていた。


(俺は多分…この人が好きだ!!)

彼の名前は潜一(せんいち)。警察時代に彼女…紅羽の後輩だった彼は、彼女に一目惚れしていたのだ。


(だってやべぇだろ!真っ白な肌に、長い黒髪の毛先には赤も入って紅…には丁度いい。こうして窓から景色を眺めているのも……いかん!落ち着け俺!!)


「どうした?前を見て運転しろ」


「あぁいやなんでもないです!!」


「なんでないです?まぁ…ないないでいいか…」

変態が出てしまう。彼女の顔を見ると顔が真っ赤に染まってしまうのだ。


少し気まずい沈黙が流れる中、潜一は口を開く。


「えと、今回俺たちが向かうのは裏社会のチンピラで武器商人の奴らっす」


「『物喰い』に関係はあるか?」


「関係は…あるかもしれません。やっと情報を捕まえたんです、罠だろうがなんだろうがやるしかないかな…と」


紅羽はふっと笑い、手に持つ剣を眺め始めた。

その顔にはどこか哀愁が漂っている。


柊紅羽、“ある事件”を境目に社会の闇に飛び込んだ命知らず。


潜一は彼女の目的を知らないが、大事な事を抱えていると内心察している。


「こっから歩きです、報告は逐一行うんで俺を信じてください」

路地裏に進むと二階の突き当たりを曲がると開きっぱなしのマンホール。


誰も気づかない隠れ道。

この道に、“奴ら”に繋がる情報を持つ者に会えればいいが……


入った先には違法カジノ。

男や女、老若男女問わずここで金を賭けて遊んでいる。


(まさかこんなのが……)

正直ここまでマンホール地下を開発できるとは思っていなかった。


『紅羽先輩、大丈夫っすか!?』

無線機のマイクで二人は連絡を取れる、彼はあまり戦う事に優れていない為、車で待機してもらっている。


「あぁ、大丈夫だ……チッ」


『先輩?どうしまた──』

「悪い、後で折り返し連絡する」


ぶちっと連絡を切り、辺りを見渡すと剣を持った奴らが紅羽の周りを囲んでいた。


数は三十人。全員雑魚だ。

「何の用だ?私はただ、何で遊ぶか考えていたが」


物陰から出てくる男達は、紅羽を眺めながらゆっくりと近づく。“女”として彼女を品定めしているのだ。


(潜一が警察に通報した時間帯から逆算するに、後数十分。少し巻くか─)


剣を抜き、紅羽を口を開く。

「物喰い。裏社会いるお前らなら知ってるはずだ、彼らの事、知ってるだろ」


「……知らねぇな」


「……………………」

知っていても喋るはずがない。彼らは国際テロ組織でいろんな国で大統領暗殺を二回成功させた人物。


拉致、暗殺、人身売買、主義主張のないテロ…危険人物の集まりだ。


「まぁいい、一人くらい生かせば少しくらいは吐くだろ」


「んだと…!野郎ども…この女に“現実”って奴を見せてやれ!!」

男達は一斉に紅羽へと斬りかかる。彼女はそれに斬り返さうともせずき、一言──呟く。


「『酩酊』」




剣先から……ぽちゃんと雫が落ちる。

すると男達は……


「そこぁ!!」

「ぐぁぁ!!それは俺だ!どこを斬ってやがる!!」

「なんだ!?女がぐにゃぐにゃに…!!」

「やめてくれー!!!」


紅羽はそこから一歩も動いていないと言うのに、男達は勝手に自滅し始め、無惨な殺し合いへと発展。


「………弱い」



ぐちゃぐちゃと斬り合い、殺し合う中、一人だけ彼女の『能力』にかけなかった男はその光景を見て青ざめ、座り込んでしまっていた。


「あんた……『覚醒者』だったのか」


「さて、答えてもらうか」

首元に剣をあて、脅す。


「知らないならそれでいい」

剣を振り上げた時にはもう、彼の心は……


「待て!!」

折れたのである。

剣を下げ、話を聞くために座り込んだ男と同じ体勢になった。


「知ってる!奴らについては知ってる!!けどな俺たちは単なる下っ端で武器を“世界各国から集めてこい”しか命令されてない!!」


「……そうか。一歩前進か…あまりにも小さいが」

助けて欲しそうにこちらを見てくる男の首を容赦なく刎ねて辺りを軽く物色。


大した情報は──

「ワイン」

大量の酒が棚に貴重そうに置かれていた。


兄だったら酒について色々知っているだろうが……

「日本酒でいいだろ」


そう呟き、彼女は退散。

パトカーの音が聞こえてきた。

ジャストタイミングだ。


─────────────

[拠点:夜]


「情報は……特にナシっすか」


「奴らが武器を求めいることだけか」

アジト。二人が家であり、拠点でもある。


先程の違法カジノの様に山奥に地下を作り、そこに寝泊まりしているのだ。


『速報です、先程、地下の違法カジノがあると匿名の通報を受けた警察が現地に向かうと、()()()()()と推測される男達四十名の遺体とカジノ利用者数十人を逮捕しました』


と、テレビではそう伝えられている。


完全に証拠を消した二人の足がつく事はない。

警察は少なくとも、殺された、殺し合ったの二択で考えるだろう。


「しっかし!紅羽さんの『酩酊』…やっぱりかっこいいっすね!!」


「…そうか?」

怪訝な表情で返す紅羽。


『警察は通報した者の行方と、これを…『覚醒者』による()()()()と推測し調査しています』


「なんで…痕跡は完璧に消したはずなのに!」


「警察、奴ら、私達、三すくみになる可能性もあるな」

紅羽は厄介そうにそう呟いた、かつての古巣である警察には優秀な奴らがたくさんいる。


「いずれ辿り着くかもな」

血濡れた彼女の剣は悪しか斬らない。






代表作があるので不定期投稿!!


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