19、正しき道標
名木山紫紋が名木山めぐみに対して発砲した。
俺は発砲し肩を痛がっていた拳銃を名木山紫紋から取り上げた。
それから俺は名木山紫紋を見る。
パトカーのサイレンは遠ざかって行く。
どうやったか知らんがコイツが警官達の記憶を消去した、という事だろう。
クソだな。
「名木山紫紋」
「はい。何でしょうか」
「何をどうしようが俺はお前とも名木山めぐみとも付き合う気はない。一切な」
「...」
「そして今のお前に必要なのは今は記憶消去に頼らない方法でこの世界をどう生きていくかだ」
「...名木山めぐみに偏るんですか?」
「違う」
俺は「...お前の事を思い出した」と言う。
それから俺は拳銃を捨てる。
そして「お前...確か幼い頃に一度、会った事があったな」と切り出した。
「幼い頃からお前はギフテッドだったな」
「...」
「周りに馴染めなかったな。それのせいか?」
「私の暴走した事がですか?」
「それしかないだろ。...お前は孤独だったんだな。名木山めぐみと一緒で」
そう話すと真顔になる名木山紫紋。
名木山めぐみも名木山紫紋を見つめる。
それから「頭が良すぎると察するのも最悪なんですよ」と名木山紫紋は苦笑した。
そして地面の縁石に腰掛ける。
「私は頭が良すぎた」
「...」
「私は馬鹿な頭良い女子生徒です。...凡人のお姉ちゃんが羨ましかった部分も有ります」
「...!」
「やはりな」
「だからお姉ちゃんが妬ましかった部分も有りました」
「...アンタ...」
「お姉ちゃん。いかに普通が恵まれているか気が付いてね。頭が良いだけが良い訳じゃないんだから」
「でもアンタは父親から愛されているでしょうが」
「確かにね」
それから諦めた様にぶっきらぼうに空を見上げる。
そして目を閉じた。
そうしてから俺を見る名木山紫紋。
「これから私をどうします?殺しますか?」と話す。
この世界ではそんな真似は出来ないからな。
「しない。俺が捕まるしな。警察に」
「ではどうします?私はもう抵抗する気は無いです」
「ならお前は名木山めぐみと話し合え」
その言葉に名木山紫紋は驚く。
それから俺を見てきた。
俺は「お前、話せるんだろ。因縁に決着つけろ。お前らの犯した罪はどっちもどっちだ」と言う。
すると名木山紫紋は「...貴方は不思議な人ですね。殺しもしない。それでいて記憶消去もしない。...私が貴方を殺しにかかったらどうする気ですか?」と聞いてくる。
俺は眉を顰めてからビニールに入っている拳銃を見る。
そして「知らんな」と答える。
「俺はタコ殴りにしてもお前に抗うかもしれないが。記憶消去をされた程度なら何度でも立ち上がれるしな」
「本当に不思議な人ですね」
「不思議だろうがなんだろうが構わない。お前らは生きているんだからな。だから仲直りとはいかないがそれなりの事をしろ」
「...貴方が言うなら」
「紫紋。私を殺しにかかるのは止めて」
「もうしないよ。肩が吹っ飛ぶかと思ったし」
「...」
名木山紫紋は「お姉ちゃん。因縁に決着つけようか」と切り出してから名木山めぐみを見る。
名木山めぐみは「...貴方、本気で考えてる?」と聞く。
「言った通りだけど私は肩が吹っ飛びそうになった。発砲はもうしないし」
「...そう」
それから名木山めぐみは名木山紫紋を見る。
そして「ごめん。まだ貴方を信頼出来ないから。これから証明していきなさい」と言う。
名木山紫紋は「そう。残念だね」と言う。
そして名木山紫紋は出していた手を仕舞う。
「それから二郎に謝りなさい」
「...分かった。謝る」
「私は貴方のやった事...というか私が言える立場じゃないけど。デカすぎるから」
「だろうね。お姉ちゃんはそんな感じに見える」
そして縁石から立ち上がり伸びをした名木山紫紋。
それから俺を見てから「加茂橋さん。有難う御座います」と言ってから俺に苦笑した。
俺は眉を顰めたまま「俺もお前を認めた訳じゃない。だからあまり調子に乗るなよ」と名木山紫紋を見る。
すると名木山紫紋は「...分かりました」と返事をする。
名木山紫紋はお尻を叩いてから「じゃあまあ」と俺達に手を挙げてから「帰るから」と話す。
「お前、家に帰るならこの拳銃をどうにかしろ」
「あげますよ。加茂橋さんに」
「要らん。戻してこい」
「面倒です☆」
このクソガキ。
そう考えながら居ると名木山紫紋は「その拳銃は弾が一発欠けましたよね。だから警察にバレたら面倒ですしね」と言いながら俺から名木山紫紋は拳銃を受け取る。
それから「山に棄てます」とニコッとした。
そして踵を返した名木山紫紋。
「アンタ真面目に家に帰りなさいよ」
「真面目に帰るよ?」
「...父親が待っているだろうし。アイツは発狂しやすいから」
「だろうね」
そして名木山紫紋は手を振り去って行く。
俺達はその姿を見てから溜息を吐いた。
それから名木山めぐみを見る。
名木山めぐみは「私を殺そうとしたのは事実だから」と言う。
顔をゆっくり上げた。
「...まああんなのでも妹だから対話はする」
「お前がしなければ恐らくは厳しい。何とか説得しろよ」
「...アハハ。ありがと」
「お前も死ぬなよ」
「私は自殺する理由が無い。だけど前世では人を殺しているから。償いと共に生きるよ」
「それから浮気した事もな」
「...うん」
それから名木山めぐみは「私も帰ります」と言う。
俺は「...ちゃんと帰れよ」と話した。
名木山めぐみは「心配しなくても帰る。紫紋はどうか知らないけどね」と言ってから歩き出した。
俺はそんな名木山めぐみを見送り門を閉めた。




