16、母親以外の皆殺しの過去
☆加茂橋二郎サイド☆
名木山めぐみには犠牲になってもらうしかない。
そう考えながら俺は放課後になり名木山に接触出来たので喫茶店にて名木山に事情を説明した。
名木山は「分かった」と返事した。
俺はその事にホッとしながら名木山を見る。
名木山は頷きながら「危険だね。確かに」と納得する。
「俺はこんな真似はしたくはないがな」
「仕方が無いから」
それから名木山は笑みを浮かべながら「たださ。二郎」と言う。
俺は「?」を浮かべてから名木山を見る。
名木山はゆっくり顔を上げた。
俺は「どうした?」と柔和に聞く。
「私は貴方の作戦には協力出来ない」
その言葉に俺は「!」となる。
それから俺は「それはどうしてだ?」と慌てて聞いた。
すると「...彼達は私達だけじゃ止められないし私は忙しい。」とゆっくり答える。
そして「たからゴメン。協力は出来ない」と言う。
俺はその言葉に「...そうか」と返事した。
そして俺は「...」となる。
「協力してほしかった」
「そして最大の理由がある」
「?」
「私は貴方の言いなりにはならない」
俺は「!!!」となりながら立ち上がる名木山を見る。
名木山は「申し訳ない」と謝った。
それから去って行く。
俺は「...」と考えこんだ。
バレていたか。
☆
計画が破綻してから俺はゆっくり家に帰宅する為に歩き出した。
空を見上げてから歩いて帰宅する。
すると「だーれだ」と言われて目を隠された。
は?
「...お前」
「あは。私です。名木山紫紋です」
「分かるわ。何をしに来た」
「はい。...お姉ちゃんを倒すのを協力してくれませんか」
その言葉に手を離した名木山紫紋を見る。
「聞いても良いか。倒すってのは」と言う。
すると名木山紫紋は「実はですね。私達お姉ちゃんが邪魔です」と笑顔になってから「私達の完璧な家庭にはお姉ちゃんは必要無いんですけど」と話す。
最低最悪じゃねーか。
完璧を求め過ぎると人はこんな堕ちるんだな。
「どういう意味だ」
「はい。言葉通りの意味です。邪魔なんですよ。私の姉が」
「...お前、姉が不憫だと思わないのか」
「思いません。あれさえ居なければ家庭は成り立ちます」
「...」
そして名木山紫紋は「貴方は私に協力しますよ。何故なら私は貴方の事を全て知ってますから」と笑顔になる。
俺は「...」と黙る。
それから風が吹く中で「どういう事なんだ」と聞いた。
名木山紫紋は「私は前世から貴方を知っています」と言う。
俺は「やはりな」と呟いた。
すると名木山紫紋は「それはどういう意味ですか?」と聞く。
「お前の前世を知っている」
「あ、そうなんですか?」
「大学の数学教授。名木山紫紋」
その言葉を放ち名木山紫紋を見る。
「お前、なんでこの場所に居る」と聞いた。
名木山紫紋は「数学ってどこまで知ってます?」と俺に薄ら笑いを浮かべる。
俺はそんな名木山紫紋に「知らん」と返事をした。
すると「数学は素晴らしいですよ」と名木山紫紋は俺に対して満面の笑顔を見せた。
俺は眉を顰めながら話を聞く。
「確率論が素晴らしいですね。特に」
「そうか。で。お前、赤門の教授の癖になんでこの場所に居るんだ」
「私は死んだ訳ではありません」
「死ぬ以外に記憶をこの世にインプットするとか無理だろ」
「私は死んだ訳ではなく。...前世にて姉に殺されました」
まさかの言葉に「は」となる。
それから名木山紫紋は「私が恨んでいるのはそれがあるからですよ」と笑みを浮かべた。
「まさか...」
「浮気してから彼女は幸せの為に私達家族を皆殺ししました」
「じゃあなんでアイツまでこの場所に?」
「名木山めぐみは私達を皆殺しにした後に自殺してます」
「そ、そんな馬鹿な」
「私は嘘だけは嫌いなので嘘は吐いてませんよ?」
「どういう感じで殺されたんだ。お前は」
「ああ。私ですか?サバイバルナイフです」
その言葉に「まさか。どうやってそんなもん入手するんだ」と聞いた。
すると「ネットにでもあるんでは?」と苦笑する名木山紫紋。
俺は「...皆殺しにしてから名木山は死んだと。なら名木山は全て知っているのか?」と聞く。
そんな言葉に「知りませんね。でも私はあの人を許しませんよ。殺された身分としては」と真顔になる。
「...」
「寒いですね。なんか買いませんか?」
「...いや。良い。食欲が失せた」
それから名木山紫紋を見る。
名木山紫紋は「ですかー」と通りかかった自販機を見る。
そして温かい飲み物を買う。
俺は「名木山紫紋。俺はお前の言葉はまだ信じられない」と言いながら薄暗い世界を見る。
名木山紫紋は「まあ信じるか信じないかは別にして。私は殺された以上はあの人を。名木山めぐみを恨みます」と満面の笑顔を浮かべた。
俺は眉を寄せる。
「お前らは姉を殺す為に画策しているのか」
「ですよ。私達の目的は元からそうするつもりでした。彼女に情けをかけないで下さい。彼女は...殺人鬼です」
「...しかしそれをしたのはお前だろ。けしかけたのもお前だ」
「私は何もしてないですよ。彼女に殺されたから彼女をフルボッコにしているだけです」
「彼女に殺されたからって」
「彼女は恐らく覚えてないです。その部分は」
その言葉に「は?」となる。
自販機でココアを買いながら俺を見る名木山紫紋。
それから「背後からズドン。血まみれの父親を見てから、です。母親は逃がされたみたいですが私は恨みます」と笑顔になった。
笑みには狂気が入り混じっていた。
「...お前が何となく奴を許せないのは分かった。俺も浮気されたしな」
「ですよね。だから協力し合いましょう」
「申し訳ないがそれは出来ない」
「!」
名木山紫紋はペットボトルで手を温めながら俺を見る。
俺は「先ず確証が持てない。お前に」と言う。
名木山紫紋は苦笑しながら「まさかお姉ちゃんに一票ってところですか?私は殺されたんですよ?あの浮気女に」と口をへの字にする。
その言葉に俺は「お前も名木山めぐみも信じてない」と名木山紫紋に話す。
「うーん。ですか」
「そもそも俺はもうお前らとは関わる気は無かった」
「そうなんですね」
「お前ら親子に関わると危険性が高まる」
「私達はあくまで復讐に近い事をしたいだけですよ?」
「それが危ないだろ」
その言葉に名木山紫紋は「是非協力してほしかったですが。そういう事なら」と苦笑い。
それから「じゃあまた」とペットボトルをリサイクルボックスに捨ててから去って行く。
名木山紫紋のそんな背中を見ながら目線を逸らした。




