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14、情報拡散

名木山紫紋という女子が家に来た。

俺はその名木山紫紋を追い返してから考え事をしていた。

名木山紫紋...名木山の妹。

性格はかなり良いらしいが...どうなのだろうか。

だけどあまり答えは出そうにない。

ならば今は考えるべきでは無いかもしれない。

そう考え俺はその日は寝る事にした。



翌日になり俺は...、と思っているとドアが開いた。

それからメルが入って来る。

メルは俺に対して「おはようございます」と笑顔で挨拶をする。

俺はそんなメルに「ああ。おはようさん」と挨拶をした。

するとメルは柔和奈顔で近付いて来る。

そして「とうっ」と言ってから俺に飛びかかって来た。

俺はメルを受け止める。


「どうしたんだ?メル」

「はい。貴方に会えたのが嬉しいんです」

「会えたって昨日も会ったじゃないか」

「昨日は昨日。今日は今日です。明日は明日。だから嬉しいんです」


それからメルは花咲く様な笑顔を見せる。

俺はそんなメルの頭を撫でた。

そしておでこを合わせてから幸せを伝え合った。

するとメルは「二郎さん」と甘えてくる。


「メルは本当に猫みたいだな」

「えへ。知りませんか?女の子はみんな猫なんですよ」

「猫か?」

「はい。気まぐれなどが似てますよね?」

「確かにな。似ている気はするよな。猫と女の子って」

「はい。でも私はもう猫の様には気まぐれにはなりません」


そしてメルは俺に寄り添う。

その愛おしい身体を抱きしめる。

それから居ると「二郎さん。学校に行かないと」と言う。

俺はその言葉にメルに「そうだな」と返事をする。

メルはニコッとしてから離れた。


「...その。...二郎さん」

「ああ。どうした?」

「実はですね...その。私の家族に会ってほしくて」

「家族?それは...」

「私の家族...実は離婚しています」


その言葉に「そうだったか?」と聞く。

するとメルは「はい。多分前世でも変わらないです」と俺を見てくる。

それから「でも今じゃなくて良いです」とニコッとする。


「今の事態が落ち着かないと気持ちも落ち着かないので」

「...そうだな。すまないな」

「いえいえ。私が助けれなくてごめんなさい」

「いや。構わないんだが」

「...ありがとうございます」


それからメルは立ち上がってからいつもの様に出て行く。

そして俺は欠伸をしてから立ち上がる。

そうしてから着替え始めた。



家から出てから俺はメルと登校していると背後から「おはようさん」と声がした。

俺は「お前か」と幸春に挨拶する。

幸春は「お前とは失礼だな」と苦笑した。


「ね。お兄ちゃん」

「どうした?」

「私達の家は母子家庭だよね?」

「そうだな。...ああ。そういやお前に伝えてなかったな」

「いや。初耳だぞ」

「実はな。2回結婚している」

「それも初耳だな」

「だけど母親は最終的には母子家庭が落ち着くって事でな」

「ああ。そうだったのか」


幸春は「すまんな。お前に言うの忘れてたわ」と言いながら苦笑した。

しかし初耳も初耳。

よくコイツらやっていけるな。

思いながら俺はメルと幸春に「家庭は成り立っているのか?」と聞く。

するとメルが「幼い頃からお兄ちゃんはいっぱい私を助けましたよ」と苦笑する。


「そうだな。俺が帰って来たらお前の宿題を手伝ったりな」

「そうだね。懐かしいね」

「だな」


それから俺は「そうだったんだな」と言った。

俺が知っているのはあくまで幸春が沖縄に行った事。

そして...下半身不随になったメルの事。

それしか知らない。


「そういやさ」


その事を考えていると幸春がそう言った。

それから「...名木山だけど...アイツ学校転校するらしい」と切り出した。

俺達は心底ビックリして「は?」となる。

そしてメルが「それは...」となる。


「あくまで聞いた噂だ。...本当かどうかは分からない」

「...いやまあそれならそれでも良いんだが」

「...だな。俺も聞いた限りではそれで良いって思うし」


そんな会話をしながら歩いて高校に入るとそこで怒号が聴こえた。

周りの生徒達が野次馬の様にその言い争いを見守っていた。

そこに居たのは...見た事のない偉そうなスーツ姿の男。

対応している教員に土下座を求めていた。


「なんだってんだ」


幸春がそう呟く。

そして俺達は事の成り行きを見ていると「名木山」という言葉が聴こえた。

俺は「!」となってから怒るおやじを見る。

おやじはめちゃくちゃに激高し「名木山めぐみはどこだ」と言っていた。

あれはまさか。


「名木山の親ですか?」


そう呟いたメル。

俺は「初めて見るが父親らしいな」と言う。

なんであんなに怒っているんだ。

思っているとその名木山の父親らしき奴は「名木山めぐみは勝手な真似を!」とキレていた。

転校したのはアイツの意思じゃないのか?


「申し訳ありませんが生徒の情報は個人情報ですので」

「今すぐに居場所を教えろ。学校に行くと言っていたのに居ないのはおかしいだろう!!!」

「個人情報ですので」

「あぁ!?」


そんな会話がキャッチボール。

俺は「もう行こう」と2人を誘う。

それから歩いて構内に行こうとした時。

「ちょっとごめんなさいね。勝手な真似をしないでくれるかしら」と声がした。

その争いの背後らへん。

そこに女性が人込みをかき分けてやって来ていた。

中年ぐらいの女性だが。

誰だ。


「お前...千歳ちとせ!!!どういうつもりだ!!!」

「兄さん。情けないよ」

「まさかお前。色々な手続きをしたのはお前か!!?」

「そうよ。私が保護者代理人としてね。...貴方の家に警察を呼ばれるわよ。このままだと」

「勝手な真似をするな!アイツは俺の手駒なんだからな!」

「私の家に助けを求めに来たの。それで今はめぐみを保護をしているわ。貴方...めぐみに散々な虐待をしているらしいわね」


その言葉に周りが「は?虐待」「虐待って。まさか名木山さんを?」「可哀想...」とかざわざわし始めてから噂が広まる。

流石にそれはマズイと思ったのか「もう良い。帰る」と言ってから名木山の親父は動き始めた。

すると千歳という女性が「待ちなさい。警察沙汰よ。こんなの」と言いながら怒った。

名木山の親父は「クソが!覚えておけ」と車に乗ってクラクションを鳴らしまくって生徒をかき分けて去って行く。

教員達は唖然としながらその光景を見ていた。


これにより名木山が虐待されている事実が判明。

その噂は急速に構内に広まっていった。

予期せぬ事態だった。

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