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10、名木山めぐみという人形

メルに連れて来られたこの場所。

公園だが...この場所に何があるのだろうか。

そう考えながら目の前を歩くメルを見る。

そして俺達は公園の傍のベンチにやって来た。

俺はメルに着いて行き座る。


「なあ。メル。何があるんだ?この場所に」

「はい。実は景色を見せたいんです」

「景色?」

「はい。この時間、私達以外知らない景色が見れます」


それから見ていると劇場の様に太陽が差し込み。

キラキラと住宅街を彩ってきらびやかに窓や屋根が光った。

俺はビックリしながら見ているとメルが涙を一筋流していた。


「いつか大切な人とこの場所に来たいなって思ってました」

「メル...」

「願いが叶いました」

「...」


俺は指でメルの涙を拭う。

それからメルに笑みを浮かべてから「ありがとうな」と告げた。

メルは「はい」と柔和な顔になり俺に寄り添う。

そして俺はそんな顔を見てから暫くメルとその黄金色の景色を見て居た。



それから家に帰るつもりで公園を後にしてから家の前に来る。

するとメルが「誰か立ってますね」と指摘した。

俺は「?」を浮かべてから指摘した方角を見てみる。

そこに名木山が居た。

名木山が俺を見て立って居た。


「なんですか?名木山先輩」


メルが威嚇する様に。

不愉快そうに名木山を見る。

名木山は「話がしたい」と言ってきた。

俺は「話をする必要性は無い。お前は一体何がしたいんだ?話はこの前で終わった」と言う。

だが名木山は引き下がらない。


「私の話を聞いて。お願い」

「仮に話すとして何を話したいんだ」

「...私は...浮気をしていない」


その言葉に「...それは半分くらいは聞いたな。で?」と聞く。

コイツは何が言いたい?

そう考えながら俺は名木山を見る。

名木山は「私は彼に脅されて居た部分もある。それだけは分かってほしい」と言う。

メルが「はい?」と言う。


「貴方、他人の松茸舐めたでしょ?不愉快極まりない...」

「それは私がやった事はやった。だけど私はそれも脅されていた」

「馬鹿か。俺はお前の言う事は一切信じられない。前世のレインに残った文章もそうだがお前は浮気した。それは確かだ。で?それが脅されたと?笑わせんな」

「無罪判決を下してほしい。私は...おどさ...」

「脅されたにせよ抗わなかった貴方が悪いです」


そうメルは吐き捨てた。

それから「この人を。大切な人を容赦無く貴方は裏切った。相談出来るタイミングもあった筈。それをしなかった貴方が悪い」と言う。

すると名木山は声を少し荒げた。

それから「私は言えなかった。だから今...私は仕方がなかった」と声を震わせる。

メルは鼻で笑う。


「別れれば良かったんです。貴方は間違いを。全てを間違えた。だから私は貴方を許さないし許す気もないし怒りは収まらない!」

「...悪かったって思ってる」

「悪かったって思っているんですか?ならもう関わらないで下さい。貴方を見る度に怒りが収まらない!」


メルは激怒する。

すると名木山は怯んだ様に「...」となってから無言になる。

それから「...分かりました」と呟いた。

そして名木山は「...私が今日、話したのには理由が有ります。それだけは知って下さい。反省はこれでもしています」と言ってからそのまま踵を返して歩き出した。

反省はこれでもしています...。

俺は許さない。


「浮気をしてない、してるにせよ私は絶対に許さないですよ」

「そうだな。それは確かにな」

「なんですかあれ。なら初めからするなって話ですよ」

「その通りだな。俺は...ますます奴が嫌いになった」


そうメルに言いながら眉を顰める。

それからメルは「まあどうでも良いです。...それでどうします?今日は」と言う。

俺は「...そうだな。とりあえずは...デートしようか」と話した。

そして俺達は家に帰る。


☆名木山めぐみサイド☆


私は全てを話した。

それから今に至った。

こんな真似をするべきでは無かったのだ。

だが私は裏切りをした。

今に至るまでに。

全てを裏切ってしまった。


「...」


私は雨の中で歩いて帰る。

雨がかなり酷くなる。

私はそんな雨を見上げながら眉を顰めた。

本当に私が悪い。

全てを失った。

そして彼は自殺した。


「...」


ゆっくり水溜まりを見ながら帰る。

それから家の玄関を開けた次の瞬間。

ビンタが飛んできた。

それは父親の瀧尾たきおから。

私は睨む。


「遅い!何処をほっつき歩いてた!」


スーツ姿の父親は私を睨みながら眉を顰めた。

私はイライラしながらその姿を見る。

彼は「なんだその目は。何かあるのか!」と怒号を放つ。

私は歯を食いしばり「無いです」と答える。

すると瀧尾は「妹以上に頭が悪いんだからしっかりしろ!」と怒ってから私を見る。

いつも見るのは私ではない。

可愛がられるのはいつも妹、妹、妹。

前世からなんら変わらない。


「私の事もたまには見てほしい、んだけど」

「見てる。だがお前はマジに馬鹿だ。100点も取れない屑だ!」


妹はいつもテストで満点。

私は90点。

だけど何が違うの?

私の一体何が悪いの?


「妹は...私より人権があるのに」

「当たり前だ!お前は馬鹿だから人権はない!」

「...」


私は何の為に生まれたのかは定かではない。

今でも私の心は。

前世より満たされない。

何が悪いのだろう。

分からないまま私はビンタをまた受けた。

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