第二条 原寛貴という光
宮前葵
「さて、宮前葵という女性作家について語ろうか」
「前に馬路と一緒に語りませんでしたっけ? 宮前にまだ語るとこあります?」
「何かちょっとこの作家は調子に乗っている気がするので、この作品で何本か釘を刺しておく」
「はあ」
「うーん、彼女の小説はつまらない」
「前に文章が硬くて退屈と、チンポウさん言ってましたね」
「ああ、まあそうなんだが、読み返してもつまらない。全然心に響かない。つまらないんだ、単純に」
「それなのに」
「ああ、それなのにイキった創作論を並べているから鼻につくんだろうな」
「兼業作家らしいですね。リーマンやりながら小説書いてると」
「ああ。個人的な意見だが、兼業作家は作家未満だ。妖怪人間を人間と呼べるかという話に近いな」
「兼業作家は妖怪人間」
「ああ、ベムだ。宮前はベラだな。いや、しかし女臭い小説ばかり書くよな。一応はラノベじゃないのか? ラノベってもっとはがないとか聖剣の刀鍛冶みたいなのを言うんじゃないのか? ストブラとかブラブレみたいなのを言うんじゃないのか?」
「チンポウさんのラノベ知識も大分古いですね。気持ちは分かりますが」
「ああ。所謂レディースノベルという奴だろ? 我々が恋焦がれた少年向けのラノベじゃないんだ。まあそれ自体が悪いとは言わないが、何だろうなあ。それにしても宮前の小説はつまらないなあ」
「うーん、まあ確かに私もどこが面白いのか言いづらいですが」
「だろ? 文章自体は割と綺麗だが、単純に面白くないんだ。面白くない文字列が並んでいるんだ」
チンポウの不満に、案山子はうんうんと頷く。面白い文章など、凡人が如何に頭を捻ってもそうそう出てこない。そしてそのなかなか出てこないものをポンポンと出せる、原寛貴のような存在を神と呼ぶ。何故なら君達も、夢中になってここまで読み進めたのだから。眩しい光を求めて。
原寛貴