表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

ネットの仮面

作者: 愉快な猫

犯罪表現あり。暴言多々含まれます

ご注意ください

ネットの仮面


インターネット。現代人が生活する上で重要な役割を担う。オンラインショップ、Webサイトの閲覧、SNS、メールでのやり取り

全てインターネットがあるうえで成り立っている。

これはそんなインターネット、SNSに注目した物語である


『〇〇氏の熱愛報道!!複数女性と交際か』

「今まで応援してたけどキモすぎて無理」

「浮気するやつは○ね」

「よくこのゴミ人間が芸能界にいられたな。事務所もどうなってんの?」

「ここ○○の実家w ○○県○町○-○-○」

▼有能w

▼これ大丈夫なやつ?

▼浮気するようなやつはこうなって当たり前w


普通に考えてダメだろwなんでこれが良いとおm│


ピリリリリリリ

アラームが鳴る。もう家出なくちゃな。

俺は木村英介。中学時代に両親を亡くし、祖父母に弟と共に育てられた。今は上京して働いている。

俺は書き込み途中のパソコンの電源を落とし、両親の写真に手を合わせる



この世の中にはあらゆる便利な物であり溢れてる。


「お会計が3点で498円です」

「penpenで」

ピッ

バーコードをスキャンするだけの電子マネー


通知が鳴る。地元で暮らす高校生の弟、優からだった


「東京での生活は慣れた?」


「だいぶね。じいちゃん

既読 とばぁちゃんは?」


「ヘーキだよ。身体壊すなよってさ」


このようにSNSで連絡を取り合う手段だってある。

SNSでは匿名機能があり、自分の好きなニックネームを設定し、ネットに投稿することが出来る。

その匿名機能、ニックネームというネットの仮面を被り嫌がらせや誹謗中傷などを行う奴らがいる。

自分は出来ないくせに、見ることしかしていないくせにネット上でありとあらゆる妄言を吐き散らかす。

誹謗中傷にあい自殺した人は今までに何人いただろうか、それを見てなぜまだ誹謗中傷を続けるのか。それは匿名という仮面に守られているからだ。本名が公開されていないから何を言ってもバレない。何を言ってもいいと思い込んでいるが故に誹謗中傷は絶えない。

そんな前置きはよそう。俺の仕事、それはホワイトハッカーだ。企業からの依頼を受け、セキュリティの安全性などを確認する


今日は中小企業からの依頼だった。依頼主と直接会って話して問題を片付ける。俺はこの仕事にやりがいを持っていた


その夜、ニュースを見ながら1人カップ麺を啜っているとあるニュースが飛び込んできた


「○○県で車両転落事故。」


○○県…俺の地元だ。この風景…見覚えが…

俺は嫌な予感がして優に連絡する


「おい優、大丈夫か?」


とりあえず放置して1時間。


「車両の転落事故があっ

たって。ニュースで見た

「返事しろ」

「本当に大丈夫か?」


そんな時、電話がなる

警察…?

いやな汗が出てくる。俺は電話にでると


「木村英介さんですか?」

「はい。そうですが」

「ご家族が事故にあいまして、まだ救助活動が続けられています。こちらに来ていただいてもよろしいですか?」


事故。

俺は固まってしまった。

俺はすぐに車に乗り込むと地元へとノンストップで向かった。指定された警察署に向かい、警察と一緒に事故現場に向かった

事故現場に残っていたナンバープレートから被害者を割り出したらしい。

反対車線にはトラックが止まっており、座って電話している男の姿があった


こいつが…!!!

煮えたぎるような怒りを押さえ込み

被害状況を聞いた


俺の家族は崖下10m下にいるらしい。生死は不明、下からの捜索をしたいが山奥のこの場所にたどり着くのには相当な時間がかかるそうだ。加えてここは温泉地帯ということもあり有毒なガスが漏れ出ているそうだ。


救助は難航しそう…か。

するとこちらに気がついた男が寄ってくる


「あ、もしかして被害者の家族の人っすか?」


なんだこの態度は。


「はいそうですが、」

「いやぁ助かるといいっすね…大変でしょう…」


俺の中で何かが切れた


「貴様!!その態度はなんなんだ!!お前のせいで…!!」


俺の様子を見て警官が慌ててよってくる


「木村さん!落ち着いて!!この人は第1発見者で通報者の方です」


えっ…??

この男が事故を起こしたんじゃなくて…?

俺の手から力が抜け、へなへなと倒れ込む。男は俺の手を優しくとると


「すみません。あなたの気持ちも知らずあんな事言っちゃって。英介さん?でしたっけ。ご家族、早く救助されるといいですね。」


俺はその優しさに大粒の涙を流してしまう。

彼は善人だった。見たままの状況から勝手に妄想し、加害者にして責めあげる。ネットのやつらと一緒じゃないか。俺は深く反省し、彼と連絡先を交換した後、別れた


その後も救助活動は難航し、2日後全員救助された。

運転していたじいちゃんは即死、ばぁちゃんは事故による骨折が原因で死亡、優は奇跡的に生きていたが今も意識が戻っていない


俺はまた、交通事故で家族を失った

このニュースにネットでは


「助かってよかった」

「ご冥福をお祈りします」


というコメントが寄せられた一方、


「ジジイが運転するからこうなる」

「免許返納しなかったジジイの因果応報w」

「ジジババ死すwwwこれで若者が1人助かったwww」


なんなんだこれは。おかしいだろ。なぜこんな事を言われなきゃいけないのだろうか?俺は腸が煮えくり返った。

俺は奴らの情報を抜き取るべく、アカウントに侵入しようとした。その時、じいちゃんの言葉が脳内に響く


「英介、お前がやってる仕事はよく分からんがな。人様の助けになる事をしようってなら俺は嬉しい。邪道に踏み込むなよ」


俺はすんでのところで止まれた。

そんな中、そのコメントにある返信が


「被害者に向かってその言いぐさはなんだよ。やめた方がいい」


これは…

俺が呆然としていると彼から電話が


「英介さん、ネットニュース見ちゃダメっすよ。」


あぁ彼はなんて優しいんだろうか。第1発見者で俺と同じように家族の無事を願ってくれた。

俺は彼の優しさに触れ、さらに世間への怒りがなくなって行った。



病院で集中治療を受けている優の無事を祈りながら実家で過ごしていたある時、あるコメントが取り上げられていた


「崖下転落事故、俺その時たまたま通りかかったんだけど、対向車線にトラックがいたからぶつかって落ちたんだと思う」


なんだこれ?事実じゃない…確かに俺が到着する前に何台かの車が通り過ぎたが。


「おいおいなんだよ。トラックの事故かよ」

「今まで名乗らないで黙ってたってこと?」

「最悪だな。お爺さんとおばあちゃんがかわいそう」


当初はじいちゃんの運転を批判していた癖に事故だという誤情報が広まると手のひらを返したようにトラックの運転手…彼の事を批判し始めた。

この騒動に彼が務める運送会社がコメントを発表した。


「転落事故の件に関しまして弊社の社員は一切関与していません。悪質なコメントは控えて頂き…」


その声明に対しても


「会社もこの事実を隠蔽??」

「腐ってんな」

「会社に凸しようぜw」

▼ それありw

▼いいね!w


腐ってるだと?腐っているのはお前たちだろう。根も葉もない噂を嗅ぎつけて叩く。

それが正しいかなんてどうだっていい、今ある悪を叩いている自分を正義だと思い込み浸る。

本当の悪はどっちなのだろう。

そんな中、俺の目にあるひとつのコメントが飛び込む


「運転手の情報みっけw」

▼え!?まじ!?

▼有能

▼篠山 薫 ○県○○市○町○-○


そこには彼の名前、住所が書き込まれていた。

俺は急いで彼に電話をかける。彼は中々出ない。

俺は再びあの書き込みの下へと辿っていく。すると、


「電話番号まで割れているのか…!?」


そう。彼の電話番号まで公開されていた。

俺はメッセージを送り、後日待ち合わせのカフェへと訪れた。

数十分待った後、彼はフードを深く被りマスクをし、前に会った時とは別人のようであった


「英介さん…すいません…遅れてしまって…」

「いいんだよ!それよりほら、座って」


そういうと彼は力なく座り込む。これは…

俺はとりあえず話を聞こうと話題を切り出す


「ネットの書き込みを見たんだ。その…住所とかも…大丈夫?」


そういうと彼は頭を抱え込み、か細い声で話し始めた


「あれから電話が鳴り止まないんです…最初のうちは自分は悪い事をしていないんだからと思い耐えていたんですが寝ようとしても電話が鳴って…ついにはインターホンまで鳴りはじめて…うぅ…」


俺は唖然とした。ネットで情報を公開される所までは知っている。何となく想像はできていたが実際の被害を受けている人を見て、前に会った彼の姿と今の姿を見て恐ろしい事だと実感した


「まぁなんだ…何かあったらまた連」

「英介さん。すいませんが、もう僕と関わらない方がいいです。」


俺の言葉を遮るように彼はそう言うと、飲みかけのコーヒーとその代金より少し多めのお金を置いて帰ってしまった

俺はゆっくりと自分が頼んだ少し甘めのコーヒーを飲み干し席を後にした

それから数日後だった。


彼が自殺したのは



突然の事だった。

彼の母親からの連絡で知った。なんでも遺書に自分の死を俺に知らせるように書いてあったそうだ。それと一緒に


「英介さん、すみません。僕はもう耐えられませんでした」


という文章が添えられていたそうだ。

後日彼の葬式に参加し、少ない時間ではあったが彼の優しさに触れ、彼に救われた1人の人間であった俺は涙を流していた。

彼の母親と話をしていた時、彼の母親が


「1度、息子の家を見て欲しい。」


と言った。

俺を見る彼の母親の目からは燃えるような怒り、恨みを感じた。

俺は彼の母親に案内されながら彼の家にたどり着いた。

彼が住んでいたのはアパートだったが彼の部屋の扉には


「人殺し」

「クソドライバー」

「○ね」


などの張り紙、郵便受けには大量の紙、落書き

これを彼は…

俺はあまりの衝撃に言葉を失う。さっきの母親の目に合点がいった。これは酷すぎる。

彼の母親は言った


「優しい…息子だったんです。なんで息子がこんな目に?ただ事故を目撃しただけなのに…それだけなのに…」


俺はそこで気がついた。

さっきの目、燃えるような怒りと恨みあれは勿論このイタズラ…イタズラとも言い難いこの悪質な嫌がらせに向けられたものでもあったが、事故を起こした当事者であるじいちゃん、その家族である俺にも向けられていたのだ。

俺は胸が張り裂ける思いだった。

だがそれに疑問を抱く事はなかった。なぜなら俺も以前、何の関係もない彼に敵意を向けてしまったからだ。


彼の葬式から数日、世間では真実が公表されつつあった。警察もあの悪質な嫌がらせについて捜査をしているらしい。


「崖下転落事故のトラック運転手、まじで何の関係もなかったらしい」

「自殺したって聞いたんだけど」

「お前らやりすぎたんじゃね?」

「別にあれぐらいで自殺するやつの方が頭おかしいw」

▼それなw


腐ってやがる。俺に再びあの感覚が芽生えた。

だが抑えてしっかり働かなくてはいけない。

俺が働かなければ優の治療費を払えない。

俺はより一層仕事に打ち込んだ。

そんなある日、いつも通り仕事をしている時だった。

病院からの電話があった。それからのことはほとんど何も覚えていない。覚えていた内容。


優が死んだ


容態が急変したそうだ。

俺はこうして家族をみんな失った。

それからと言うもの俺は全く仕事に身が入らなくなった。朝目覚めると大量の睡眠薬が用意されていた事もあった。ロープに首をかけようとしていた事もあった。そんな時、あの事故の記事が更新され、コメントを開いた。


「崖下転落事故の乗ってた人、全員死んじゃったんだ…可哀想だけどまぁ妥当だよねー」


は?


「前も言ったけどさwそんな道をジジババが運転すんのが悪いよなw」


は?


「ジジババが○んだのは嬉しいけどこれからの日本を担う若者が亡くなったのは悲しいな」


は?


何言ってんだ全員。

じいちゃんばあちゃんの死をバカにして。優の死も当然だと?

俺の怒りの炎に最後の油の1滴を注いだのはこのコメントだった


「おっようやく全員死んだか。どんまいwトラックの運転手も残念でしたー」





わかった。もういいよ。

全員地獄に落としてやる


俺は早速作業に取り掛かった

コメントをしていたやつら全員の情報を抜き取り、一つ一つ整理して行った

抜き取った情報を手に俺はコメント主へこう問いかける


「今すぐこのコメントを消してもう二度とこんなコメントをしないと約束しろ」


と。

だが帰ってくる答え、それは


NOの回答のみ。


分かってたさ。ネットの仮面に隠れて何をしてもいいと思っているお前らなら当然の答えだよな。

俺はその答えを聞いた後、やつらの住所、本名などを公開していく。

その後の反応と言ったらもうたまらなかったよ。


「は?まってまってまって??」

「ちょえ?」

「え、どゆこと??」


この活動を始めるに当たり、俺の存在を広めるため

Furantur larva というアカウントを作った。ラテン語で「仮面を奪う」という意味だ。

世間では誹謗中傷をしているとFLが来るだとかFLに狙われたら言うことを聞けだとか言われるようになった。

ついには逆に俺の正体を暴こうとする奴まで現れた。

まぁ俺のセキュリティを抜けて来ようだなんて無理な話だ。

俺の正体を突き止めるべく俺のセキュリティに侵入してきたハッカーは全員FLのアカウントに住所を公開した。

俺が動き初めてからというもの誹謗中傷、仮面を被り誹謗中傷をしていた奴らは全員消えた。

どのニュース、どの動画のコメント欄を見ても誹謗中傷を行うコメントはどこにも見当たらなかった。

俺は初めて生きている事を実感した。これ程までに気分がいいことがあっただろうか。

みんな。俺はやったよ

家のインターホンが鳴り、俺は外に出る。

外にはパトカーが数台。目の前には警官が立っていた。

どうやら警察には腕のいいハッカーがいるらしい。俺の手に手錠がかけられそのまま連行された。

じいちゃん、俺は邪道に足を踏み入れちまったらしい。ごめんな。



あれから数年、俺は訴えられ実刑判決を受けた。

刑務所から出て墓参りを済ませた後久しぶりに家に帰る。

俺は久しぶりにコンピュータを起動し、ネットニュースを閲覧する。


FLのアカウントは削除され、もはやその存在は都市伝説として語られていた。

相変わらずネットには仮面を被りありとあらゆるコメントを投稿している輩がいる。

だが俺はもう刑務所に入って反省した。じいちゃんの言葉を忘れ、邪道に踏み込んだんだ。もう二度とあんな事はしない。

でもあれは忘れられないんだ。あの圧倒的正義感。達成感。自分の悪を懲らしめることでまるでヒーローになったかのようなあの感覚

そんな中、俺はある記事を見つける


「芸能人の○氏、マネージャーに悪質な嫌がらせを行っていた?」


悪人…

俺はそれを見てニヤリと笑うとコメント欄を開き、仮面を身につけた。

最後まで読んで頂きありがとうございました。この作品は現代のネット社会をテーマにしています。誇張してはいますがあのようなコメント、誹謗中傷は必ず無いというのは言いきれません。ネットの仮面を身につけ、正義を語ると言うのも誰かの心を傷つけることになるかもしれないということも理解して欲しいです。

長くなりましたが、初投稿初心者の拙い小説をご覧頂きありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ