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原案「雨、midnight」

虹を見た


淡い輪郭はこことは程遠いことを


見せつけている。


いつか見たそんな景色は


ボクに孤独を与えてくれた


振り返ると自分の足跡があった


足跡は雨に溶け


ぐちゃぐちゃになっていた。


苦笑もこぼれない歪み具合


この身は毒で出来ている


触れる者全てを溶かす毒の雨


ボクはメルト。


溶けた薄氷のように何の価値もない


だからその名前を取った


この手は全てを壊してしまう


昨日の足跡がどれほど歪な形をしてようと


この雨は全てを洗い流してくれる。


空を見た


暗闇から降り注ぐ無数の矢


それはこびりついた汚れを洗い流してくれる


だから、


傘は昨日に置いてきた。


この物語に名前を付けるとしたら


そうだな


Acid Rain stIgmatA


良いね


歌でも歌いたい気分だよ


この雨音がメロディなら


ボクが詩を書こう。


茎には棘が張り巡らされていて


花弁には毒が染み付いている


そうとも知らずに触れてみるのは


一種のカリギュラなのか


それを愚かだと一蹴してしまうのも


退屈凌ぎにすらならなかった。


だからボクは君を殺してしまった


あの一瞬はボクに聖痕を与えた


君はボクの首をキツく締めて


ボクは心地よい開放感に包まれた


だから愛を感じたんだ


命を奪うその瞬間だけは


全ての意識が対象に釘付けになる


意識が途切れる瞬間


ボクはそれを受け入れた


やっとこの薄汚い呼吸を失うことが出来る


ああ


ボクは幸せだよ


ありがとう


だが


気が付いた時には愛する人の亡骸と


自分にこびりついた汚れを


この雨が洗っていた


アーチを描く赤色が


雨で反射して虹色に見えた


鮮血rainbow!


それまでの嘘の汚れとは違い


この生ぬるい赤は本物だ


こうして汚れを纏った自分を


雨で洗い流すのはいつだって心地が良かった


生きているんだって


ボクに刻みつけることが出来るから


もうボクは誰にも止めることはできない。


"セブンスコード"などと自惚れた奴らの"烙印"を全て剥ぎ取り、

全てを無に還元する。


だからこうしているのだって


光を求めて見上げているわけではない


ただ汚れた身体を洗い流しているだけなんだ。


---

--

-


「あら、酷い表情ですわ。醜く歪んでますこと」


世の中には悪人がいる


氷珀はボクのレインコートを優しく剥いで


醜いこの身が雨に晒される


そんな姿に満足したのか


この女は微笑みを浮かべ


全てを脱ぎ捨てたボクを包んだ


彼女の体温は氷の霜に素手で触れたように


冷たかった



「ボクは嫌だ」


「いまになって引き返すの、殺人鬼のアリアくん」


「ならお前を殺して、ボクも死ぬ」


「へぇ、やってごらんよ、クソガキ」


彼女は手を広げている


その微笑みは慈愛のようにも


挑発のようにも感じられた


ボクは氷珀を刺した


彼女の胸から血が溢れ出す


その生温かい体温も


雨に打たれて氷のように冷たくなる


---


「気は晴れましたこと?坊や」


氷珀は死ななかった


何事も無かったように笑顔を崩さない


気味が悪い凍てついた表情もまた


彼女の汚さと美しさを表現していた


氷珀がボクの頬に手を当てがった


「愛してあげるよ、アリアくん。私とお姉ちゃんの"エデン"に、君だけは特別に招待してあげる」


ボクはその手を払いのけた


「可哀想なアリアくんは愛されずに育った結果、何もかも失った」


「黙れ」


「あら、いけませんわ。そんなはしたない言葉遣い」


「死ね」


立ち上がり


雨で濡れた黒い大海原に足跡を付けた


全ての烙印を略奪し、ボクは。

オレは魔王として生きることにした。

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