夏江基地(C)
女武神部隊の基地が目の前に迫ってきた。
地下の空洞の頂上からますます多くの異構体が現れ、飛行能力のない陸行性異構体さえも次々に到着していた。
鐘霊とマーガレットの二人は、建物の廃墟と崩れた壁を越えて、速やかに前方へと走っていた。
遠くから聞こえる爆発音はどんどん大きくなり、頻繁になっていった。それはまるで地下空洞の脈動が震えているかのようだった。
爆発音が一つ一つ響くたびに、それがもはや遠くの音ではなく、目の前に迫る脅威となった。空気中には埃が舞い、火薬と焦土のきつい臭いが漂う。爆発と共に地面が揺れ、まるで基地全体がその無力さと痛みで震えているかのようだ。これは戦闘の号砲であり、最前線の呼びかけである。
遠くの空が煙に飲み込まれ、黒い雲が絶えずうねりながら、灼熱の光をちらつかせていた。爆発音は広い通りに響き渡り、終わりのないように感じられ、まるでその一つ一つが取り返しのつかない変化を告げているようだった。時々、誰かが走り抜ける。その顔には焦燥と恐怖が浮かび、頭を下げて建物の陰に隠れようとしている。
鐘霊は通りを駆け抜け、爆発音がますます鮮明に耳に響き、心臓の鼓動も爆発の音と共に加速していった。彼女の目は前方に集中していたが、思考は漂い、静かな時間がかつての過去として思い浮かんだ。まるですべてが触れることのできない遠い記憶のようだった。空気は圧迫感を帯び、息をするたびに深淵に引き込まれるような感覚があった。
もうすぐだ。鐘霊は思った。基地は目の前だ、手を伸ばせば届きそうだ…。
「ドーン!」大きな音とともに何かが落ちてきて、煙とほこりを巻き起こした。煙が晴れると、廃墟の中に四足の怪物が立っていた。それはよく見かけるB級異構体【戦車】で、バスのように巨大な体を持ち、太い四肢を持っており、灰色の体には血のような赤い模様が覆っていた。
【戦車】は咆哮し、巨大な体が突然飛び出し、地面はその重圧で激しく震えた。四肢が太く、まるで動く要塞のように二人に向かって猛進してきた。
その圧力の下、二人はほとんど反応する暇もなかった。目の前の異構体はまるで鋼鉄の津波のように無情にすべてを押し潰していき、巨大な衝突音は空気を震わせるほどだった。地面が割れ、ほこりが舞い上がった。
「早く!」マーガレットが叫び、瞬時に鐘霊の手首を掴んで、必死に横に避けた。
しかし、異構体は止まらなかった。その巨大な体がすぐに迫り、強力な衝撃波が空気を圧縮し、恐ろしい力となって二人の呼吸を奪っていった。
二人の心臓は加速し、目の前の火花の中で窒息しそうになった。その時、突然、上空から光が差し込んできた――それは援軍の到着を知らせる信号だった。
「バン!」戦車は強力な爆発によって横に吹き飛ばされ、空から飛び降りてきたのは、英姿颯爽とした一人の少女だった。彼女はB級女武神の佐藤楓で、鐘霊とマーガレットの先輩だ。性格は真面目で、一切の妥協を許さない。
「佐藤先輩!」二人は嬉しそうに叫んだ。
「やあ、みんな。嬉しいことを言いたいけど、今はそんな暇じゃないよ。」佐藤は真剣な表情で言った。「基地を支援するために来たんだろう?さあ、俺の後ろに付いて来て!」
「了解!」
...
2024年6月13日8:00、夏江基地
「皆さん、皆さんの必死の戦いと、極東支部および他の基地からの援助により、基地内の異構体はすべて排除されました。」端末から通信員の声が響く。
「シュッ!」マーガレットは二刀流を引き戻し、腰に差した。彼女は「ドサッ」と地面に膝をついて倒れ込んだ。
鐘霊も同様だった。残骸の壁に背をつけ、大きく息をついた。
ついに終わった。彼女は思った。
残るのはおそらく復旧作業だろう。
「灵、私は今から宿舎に戻って寝るよ。」マーガレットはだるそうに言った。「もう疲れた。」
「確かに、私も睡眠不足だ。」
「じゃあ、後で宿舎に行こうか。」
「賛成。」
「おい、あっちの二人!」佐藤の声が横から聞こえてきた。「お疲れ様!少し休んで、午後から基地の復旧作業に参加するぞ!」
「え?復旧作業は基建班の仕事じゃないの?」マーガレットは不満そうに言った。
「文句言わないで。女武神ってのは、困った人たちを助けるためにいるんだ。」佐藤は笑いながら言った。
「了解。」二人は大きくため息をついた。
11:30、女武神宿舎
鐘霊は端末のベル音で目を覚ました。
彼女はふわふわした寝ぼけた目をこすりながら、深く息を吸い、重たく吐き出した。
ドアベルが鳴り、扉の前には金髪の少女が立っていた。
「灵、食事に行こう、ジョンが一緒に行きたいって。君を探しているそうだよ。」
「わかった。」鐘霊は習慣的に服を着始めた。マーガレットは慌ててドアを閉めた。
二人は一階に到着し、しばらく待ったが、ジョンの姿は見えなかった。
「もう待たないで行こう!」鐘霊は苛立ちながら歩き出した。そのとき、前方の少年とぶつかってしまった。
「ごめん…」相手は申し訳なさそうに言った。
鐘霊は何も言わず、軽く頷き、そして去ろうとした。
「待って!鐘霊!え?鐘鳴?君も来たの?」ジョンの声が角から響いてきた。
どうしてこんなに遅く来たんだ!鐘霊はジョンを叱ろうと思ったが、ある名前で脳が一瞬停止した。
待て…鐘鸣?
毎日のように英雄になりたいと言っていた少年が頭に浮かんだ。
鐘霊は急に振り返った。
「…あなたは…」二人は声を合わせて言った。




