脈無し女子に告白し続けた結果
短編です。
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俺のクラスには、一際目立つ謂わばマドンナ的な女子生徒が居る。
佐藤さん。
どこにでもいそうなその名前からは想像できない異常な人気を誇る美少女である。
彼女のモテる伝説に関して数を上げればきりがなく例え小説顔負けな噂であろうと「あの人ならば確かに、、、」と頷いてしまう様な話も様々。
一つ例をあげるとすると、この学校の三分の一の生徒は彼女に告白した事があるらしい。
「男子生徒」ではない。「全生徒」である。
尋常ではない事態だ。世界のバランスが崩れたのか、それとも彼女がバランスから逸脱した存在なのか。
と、まぁそんな感じにイカれたモテ方をしている女子がいるのだが、、、かくいう俺はと言えば、、、
「好きだ。付き合ってくれ」
「いいわよ。ブラックホールの中から生還できたらね」
佐藤さんーーーの次に可愛いと言われている柳橋さんという女子に、告白してはフラれる日々を過ごしている。
俺の高校は中高一貫なのだが、柳橋さんとは中学二年生の時に出会い、瞬間恋に落ちた。
当時彼女の人気は、今の佐藤さんほどでは無かったがすごいもので、可愛い子は誰かという話題において柳橋さんは最強の二文字を冠するに相応しい人間であった。
「私は世界一可愛いから」
「あなたじゃ私とは釣り合わないわ。ミルワームが蝶に恋していいと思う?」
「私を愛してくれるのは世界だけで十分」
彼女から発せられるナルシストかつ過激な発言は、数々の人間を敵に回しつつも、ある人は魅了され、ある人は崇拝した。
可憐かつ傲慢で自信過剰で得手勝手ゆえに一意専心。
何があろうと自分のために動き、そのためには正義すらも悪用する。
俺はそんな彼女の姿に、すっかり惚れ込んでしまったのだ。
しかし高校生になって、彼女ーーー佐藤さんが現れた。
彼女は一瞬にしてこの学校を風靡し、最強の女子となった。
柳橋さんの名は廃れ、彼女を崇拝していたものは皆、佐藤さんに掻っ攫われていったのであった。
それ以来、柳橋さんはすっかり注目される事なく、また彼女自身も目立つような行動はしなくなり、中学時代の様な言動はしなくなった。
その姿を見た人々は、彼女のことを「牙を研がれた獅子」などと揶揄する様になり、彼女の栄華についに終幕が訪れたのであった。
「めでたしめでたし」
「あんた、今とてつもなく不愉快な回想をしていたんじゃない?」
「いや、いつも通り俺は柳橋さんと付き合うためにあらゆる思考を巡らしていたよ」
「気色悪いわね」
しかし実際にはこんな感じに悪態もつくし、暴言も吐く。
勿論、以前ほどでは無いが、それでもまだあの頃の片鱗は残ってある様である。
熱心に柳橋さんを見つめていると、その視線を気にすることなく柳橋さんは「はぁ」とため息を吐いた。
「何かお困りですか?」
「別にあなたにはいつも困らされているわよ」
嫌味なことを言いつつも、やはり何か暗い表情は崩れずに彼女はクラスの中心でクラスメイト達に囲まれる佐藤さんの姿を一瞥した。
「あなたも、さっさと私を諦めて彼女に執心すれば良いでしょ」
そんな言葉を吐き捨てて、彼女は卑屈そうに笑った。
「佐藤さんの方が可愛いし人気もあるでしょ。なんでこんな無愛想な女に、あなたは構うのかしらね」
中学の時から、俺に対する彼女の言葉遣いや態度はやはり変わらない。
しかし決定的に変わった、、、いや失ったものがある。
それは、自信だ。
以前の柳橋さんは到底言わない様な自虐を、彼女は口にする様になってしまったのだった。
「柳橋さんは知らないかもしれないけれどーーー」
「ーーー?」
「好きな子って、世界一可愛く見えるんだよ」
一瞬、柳橋さんの顔に驚きの色が塗られて、その後すぐに彼女はいつもの冷たい無表情へと戻った。
「だから俺は柳橋さんが一番可愛いと思ってる。あ、けど確かに性格は佐藤さんの方がいいかもだけど俺はあなたの性格の悪さを含めて惚れ込んだっていうか…」
「鼻の穴が膨らんでるわよ。見苦しいわ」
「おっと失敬」
興奮すると鼻の穴が膨らむ癖は、一向に治りそうに無いな。
俺はばっとのけぞり、鼻を両手で隠した。
その様子に、柳橋さんは少し笑って
「せっかくカッコ良かったのに、相変わらずカッコつかないわね。三河くんは」
少し赤くなっている耳に気付かないまま、らしくもなく俺に優しく微笑んだ。
「ーーー柳橋さん。好きです」
「そうね、火星の住み心地を地球レベルに良くできたら考えてあげてもいいわよ」
「将来は宇宙飛行士かなぁ」
「いいわね。ブラックホールにも入れるし」
柳橋さんとは、まだ付き合えそうに無い。




