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□■第28話 同行希望■□


「あ、アルマさん? どうしたんですか? いきなり……」


 突如、風のような速度で冒険者ライセンスを取得したアルマに、クロスが困惑する。


「何も不自然ではないわ。私は神聖教会を脱会した身。つまり現在、無職。ならば、さしあたって次の仕事に就かなければならない。その仕事に、すぐに登録が出来て、出来高で手早く賃金も支給される冒険者を効率的と考え選択した、それだけの事よ」

「は、はぁ……」


 まぁ、確かに、その点に関してはクロスも同じなので否定は出来ない。


「ですが、その、僕達のパーティーに入りたいというのは……」

「今の私は右も左もわからない新人冒険者。出来れば信用できる先輩や、顔見知りの人間と一緒にノウハウを学んでいきたいわ。だから、クロス神父がその対象に的確と判断したまでよ」

「な、なるほど……」

「いや、クロスさん、待って下さい! 勢いで納得させられないで下さい!」

「せやで! ウチ等がまだ許可してへんよ!」


 そこで、アルマの凄まじい押しと行動力を前に呆然としていたマーレット達が、慌てて口を挟む。


「す、すいませんが、アルマさん? でしたっけ? 私が、このパーティーのリーダーを務めているマーレットです。パーティーへの加入は、そう簡単に認可する事はできません」

「あら、何故?」

「ええと、まず、アルマさんは冒険者になったばかりのGランクですし……わ、私達は一応、みんなCランクなので、請け負う任務の難易度的には、アルマさんにはまだ挑戦するのには早いものばかりでして……」

「パーティーを構成する際に、同じランクで統一しなくてはならないというキマリは無いと、先程あの受付嬢に確認したわ」


 アルマが、後ろのリサを指し示して言う。


「い、いつの間に……」

「それに、任務の難易度はCランク以下のものでも選択が可能でしょう」

「そ、それは、パーティーを組む際には同ランク冒険者同士になるのがほとんど当たり前というか……そもそも、一人でも極端にランクの低い冒険者が加わると、任務を達成できる可能性が下がってしまいますし……」

「いや、マーレット、ここはハッキリ言った方がいい」


 そこで、マーレットの隣に立っていたジェシカが前に出た。


「アルマ氏と言ったか……貴殿は、クロス様のお知り合いと聞く」

「クロス“様”? ……クロス神父、彼女はあなたの追っ掛けのファンか何か?」

「ふぁ、ファンではあるが追っ掛けではない! 立派な仲間だ!」


 一旦深呼吸を挟み、ジェシカは続ける。


「パーティーとは、言わば強い絆で繋がったチームなのだ。そこに、そう容易く新たな人員を迎え入れるわけにはいかない。バランスが崩れる可能性がある」

「……強い絆で繋がった……」


 アルマは、マーレット、ミュン、ジェシカを見る。


「貴殿が、クロス様の昔馴染みなのはわかる。だが、だからといって、そのよしみで容易く加入を認めることは出来ない」

「……強い絆」


 アルマが、視線をクロスに向ける。


「アルマさん、すいませんが、僕も同意見です」


 そんなアルマに、クロスも言う。


「アルマさんが、僕を気にしてここまで来てくれた事は、嬉しいですし申し訳ないと思っています。ですが、だからといって特別扱いは出来ません」

「……強い絆」

「一旦、少しずつGランク対象の任務をこなし、冒険者の仕事を学んでいきましょう。それで、ランクが上がってくれば……」

「……強い絆」

「あ、あの、アルマさん、聞いていますか?」


 何やらブツブツと呟き続けるアルマに、クロスは心配になる。


「……なら、一度だけでいいわ。試しに、私をこのパーティーの任務に同行させて欲しい」


 そこで、アルマがそんな提案を口にした。


「このパーティーに私が加入する事が吉か凶か、そこで判断して欲しいの」

「……ゆ、譲らないですね」

「凄い執念やな」


 マーレット、ミュン、ジェシカの三人が、顔を見合わせヒソヒソと会話する。


「それに、さっきの発言……その、く、く、クロスさんがいなければ生きていけない体にされてしまった、って、いうのは……」

「んー、確かにその件は気になるけど……クロやんも否定せぇへんし」

「……あの女性、一体クロス様とどういった関係だったのか……」


 うんうんと唸る三人。


 そこで。


「マーレットさん、ミュンさん、ジェシカさん」


 クロスが、三人に話し掛ける。


「すいません、彼女の申し出を受け入れ、この後の任務に彼女も同行させてもらってもいいですか?」

「え」


 一転し、そう言うクロスに、三人は驚く。


「いえ、誤解なさらないでください。僕は決して、身内の縁故で彼女を仲間に入れても良いとか、そんな甘い考えは持っていません。プロの冒険者として」


 キリッと、気合いの入った表情で言うクロス。


『プロの冒険者』――というワードに、それとなく憧れと誇りがあるので、自分で言ってちょっと嬉しくなってしまったのかもしれない。


「かわいっ」と、三人は思った。


「このままでは彼女も一歩も譲らないでしょうし、一度同行し任務を経験してもらうのが一番だと思います」

「ですが……いきなりCランク任務に挑んでも大丈夫なんですか?」

「場合によっては、僕がサポートします。皆さんに迷惑は掛けません」


 確かに、クロスの実力はAランク相当――いや、それ以上である。


 体験希望者を一人抱えて任務に挑むくらい、どうってことないかもしれない。


 それに、意固地な相手を前にした揉め事は、押して駄目なら引いてみろ、と言うパターンもある。


「それに、もしかしたら彼女の《魔法》は任務達成の為に大いに力になってくれるかもしれません。その査定も含めて、同行してもらっても良いのかなと」

「なるほど……」

「まぁ、クロやんがそう言うのであれば」

「わかった」


 三人はひとまず納得する。


「というわけで、アルマさん。今回だけですが、一度冒険者の任務がどういうものか知るために、一緒に行きましょう」

「ありがとう、クロス神父」


 アルマは、クロスの手を取って、少し濡れた瞳を向ける。


「私、頑張るわ。実力を示して、みんなの役に立って、このパーティーに必要な人材と認めてもらう」

「む、無理はなさらぬよう……」

『教会にいた頃から、ちょくちょく見ていましたが、相変わらずですねこの娘は』


 クロスの後ろで、エレオノールが言う。


 しかし、その顔はどこか楽しそうでもある。


「じゃあ、ウナも冒険者になります!」

「サナも!」

「え」


 そこで、更に双子のシスター、ウナとサナも登録の手続きを始めた。


「ウナもサナも、アルマさんに着いてクロス神父に会いたくて来たので」

「なので、どこまでもご同行させていただきます」

「い、いいんですか? 皆さん。よくよく考えたら、普通に冒険者になってしまっていますけど、皆さん、由緒ある家の出身なのですから、ご実家に帰った方が……」

「いいえ、私はクロス神父についていくと決めたの」

「ウナも!」

「サナも!」

「そうですか……」


 何はともあれ、本人達は本気である。


 仕方がなし――ということで、アルマ、ウナ、サナの三人を加えて、新たな任務に挑む形となった。


「では、色々とゴタゴタはありましたが……実は、今回マーレットさん達のパーティーに是非請け負っていただきたい任務があるのです」


 受付嬢のリサが、気を取り直して言う。


「それは……ある貴族の所有する財宝が、凶悪なモンスターに奪われてしまい、その回収をお願いできないかという任務です」


 リサが、手配書を見せる。


「先日まで対象ランクEだったのですが、モンスターの力が想定よりも強く、挑んだ冒険者達が何人も病院送りにされてしまいました。そのため、対象ランクがCに格上げとなったのです。そのモンスターは……」


 リサが、言う。


「巨大な体躯で飛翔能力もあり、その上、知能も持つ狡猾な鳥型のモンスター……《ナイトレイブン》です」



 ここまでお読みいただき、誠にありがとうございます。


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