8話 新たな出会い
ケーブスパイダーの巣をよけながら、出口を目指して歩いていく。ホレスがいないので、来る時よりも大分慎重に進んだ。そのせいか30分ほど歩き続けても、出口にはたどり着けなかった。
「誰かいるのか!?」
どこからか声がした。
「頼む!助けてくれええ!」
声がしたほうに近づいて、よく目を凝らすと、ホレスとペロが地面に倒れていた。どうやらケーブスパイダーの巣に捕らわれているようだ。体長30センチくらいはありそうな無数の蜘蛛たちが、ホレスに群がり今にもその腹を食い破ろうとしている。あれではそう長くはもたないだろう。ペロの方は、すでにこと切れているようだった。正直言って自業自得だ。
俺は無視して先に進もうとした。
「待って!」
ソフィアが珍しく大きな声を出した。
「助けて……あげられませんか?」
「こいつは、君ことも殺そうとしたんだぞ!」
「分かってます。でも……その人は、私の恩人でもあるんです。それに……さっき、困っている人がいたら助けるって……」
「ああ、分かったよ。」
俺は剣を抜いて、ホレスに群がっているケーブスパイダーのうちの一匹に突き刺した。
「ギィギー!」
ケーブスパイダーは緑色の血を吹き出して絶命した。すると、残りの奴らも文字通り蜘蛛の子を散らすように逃げて行った。
「光の聖霊よ、この者の傷を癒し、もう一度立ち上がらせ賜え。ハイヒーリング!」
ソフィアが呪文を唱えると、彼女が持っている杖の先から緑色の光が現れ、血だらけのホレスの腹を覆った。そして傷がみるみる塞がっていった。
「すまねぇ」
ホレスが言った。
「あなたのことを許したわけじゃありません。」
「ああ、分かってる。」
ホレスはうつむいたまま答える。
「卵は?」
「途中で落としちまったよ。」
せっかくこんなところまで来て、死にかけたってのになんの成果もなしか。いや、命があっただけでもありがたいのかもな。
俺たちは、再び出口にむかって無言で歩き出した。5分ほどで出口に到着した。
「じゃあ、俺はここまでだな。俺はもうギルドには戻らねえ。」
ホレスは町ではなく、森の方へと歩き出した。
「ああ、そうだ。レオン。俺のようにはなるなよ。」
「そんなこと言われなくても、分かってます。」
分かってるよ。絶対におまえのようになんかなるものか。
俺とソフィアは町に帰ってギルドに向かった。腹が減っていた。だが、飯を買う金もない。疲れだけが残る冒険だった。
だがギルドに入るなり、疲れが吹き飛ぶようなでかい声が飛んできた。
「おい、レオン大丈夫か!」
声の主はアーノルドだ。アリシアも一緒にいる。
「ホレスの野郎と一緒に行ったってんで、心配だったんだ。あいつは金のためなら手段を択ばないって黒い噂の絶えないやつなんだよ。」
そうだったのか。ラガルといいホレスといい冒険者ってのは嫌な奴ばかりなんだろうか。いや、そんなことはない。第一、異世界に来たばかりで何も分からなかった俺に色々教えてくれたのは、他でもないこのアーノルドだ。
事実今日も俺とソフィアはアーノルドたちに飯をおごってもらった。今日はひどい目にあったが、良いこともあった。
はじめて魔物を倒した。コカトリス相手に耐え忍び、一発あびせた上、逃げおおせた。そして、なにより仲間ができた。俺の冒険はまだまだこれからだ。
「そういえばレオンさんのパーティ募集に応募が来てましたよ。」
翌日の朝、ギルドに行くと受付嬢に話しかけられた。ギルドの掲示板に募集を出していたのが功を奏したようだ。
応募してきたのは冒険者になりたてだという二人。二人でクエストをこなしていたが、限界を感じていた所に俺の募集を見つけたらしい。丁度良い機会なので、早速二人に会ってみることにした。
一人はエルフの血を引く少女で、名前はルイーゼ・フォーリア。整った顔立ちに、透き通るような白い肌、長くとがった耳、いかにもエルフといった感じだ。弓の腕に自信があるそうだ。
もう一人の名前はグレン・エルドレッド。ルイーゼと一緒に他の国から来たらしい。身長が高く筋肉質、性格は単純にして実直。燃え盛るような赤い髪が特徴的な男だった。
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