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臆病者の異世界冒険譚  作者: 黒山守明
第一章 冒険者レオンハルト
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5話 パーティーメンバー


 騒動の後、レイヴンは仲間を連れてすぐにどこかへ行ってしまった。そもそも、国の王から命令を受けてこの町にやってきていたらしい。それを知っていた受付嬢が、レイヴンを呼びに行ってくれたおかげで俺は助かったというわけだ。


 受付嬢に礼を言いつつ、改めて今日のクエスト一覧を眺めていると、なんとも軽薄そうな男が俺の肩に手をまわしながら話しかけてきた。


「よう、新入り。さっきの見てたぜ。」

「俺はホレス。職業は盗賊だ。良かったら俺のパーティに入らないか?」

願ってもない相談だ。だが、こいつの狙いは何だろうか。俺が「陽動」もちの盗賊だってのは知ってるはずだが……。


「いいんですか?俺はLv1な上に、盗賊としての経験は皆無だ。正直言って、役に立てるとは思いませんが。」

「そんなこと言うなよ。俺が先輩として盗賊のいろはを教えてやるからさ。何よりうちのメンバーを助けてくれたお礼をしなくちゃいけないしな。」

そう言いながら、ホレスはソフィアの方を見た。ソフィアがさっき言っていた「リーダー」とはどうやらホレスのことだったらしい。


ソフィアはもじもじしながら俺の前にきてペコリとお辞儀した。

「あ、あの……。先ほどはありがとうございました。レオンさん。おかげで助かりました。」

「いや、カッコ悪いとこみせちゃったな。」

「そ、そんなことないです!十分かっこよかったです!」

 そう言われると照れ臭い。実際は、何もできなかったわけだし。だが、一緒にクエストに行ってくれる仲間を見つけられたから良しとしよう。


「それでソフィアはなんのクエストを受けたんだ?」

「私はゴブリン討伐のクエストを……。」

「いや、せっかくレオンも加わったことだし、他の奴にしようぜ。ゴブリンなんか倒しても面白くないからな。」

 ホレスは、ソフィアからゴブリン討伐のクエスト受注書を受け取って、受付嬢のいるカウンターへと向かった。

 

「おい、足を引っ張んなよ。」

獣人だろうか。オオカミのような顔で全身に毛を生やした奴が喧嘩を売ってきた。


「俺はペロ、ホレスの兄貴とソフィアのパーティメンバーだ。俺はお前みたいな弱いくせに生意気な奴が嫌いなんだ。」

 強面な癖に随分と可愛い名前をしているな。

「なんだよ、いきなり。だいたい仲間ならアンタたちがソフィアを守ってやれよ。」

「んだとぉ、こらぁ! てめえだって締め上げられてべそかいてただけじゃねえか!」

 ペロがメンチを切ってくる。こちらも負けじと睨み返す。


「あの……えっと。」

 ソフィアは俺たちの顔を交互に見ながらオロオロとしている。


「おい、やめろ二人とも!」

 クエスト受注書を引っ提げて戻ってきたホレスが仲裁に入った。

「いいか、俺たちは仲間になったんだ。喧嘩なんかすんなよ。」

「でもよ、兄貴。こいつが役に立つとは思えないぜ。」

「まあそういうなよ、ペロ。新人に色々教えてやんのも先輩冒険者の務めだぜ。」

「兄貴がそう言うなら分かったよ。で、何のクエストを受けてきたんだ?」


 ホレスはクエスト受注書を俺たちの方に見せつけてきた。

「じゃん!コカトリスの卵!これが今回の俺たちの目標だ。報酬はなんと金貨4枚!山分けだぜ。」

 コカトリスの卵は、珍味として一部の貴族に人気があるらしい。討伐クエストでないのは残念だが、金貨4枚は破格だ。普段のキノコ狩りでもらえる銅貨3枚程度で、食費と生活費でほとんど消えてしまう。しかし、金貨が1枚あればしばらく遊んで暮らせるだろう。だが、そこまで高額な報酬となるとかなり難易度の高いクエストなのではないだろうか。


「で、でもコカトリスって……。」

ソフィアも同じことを考えているようだ。

「ああ、確かにコカトリスは危険な魔物だ。でも、今回の目標は討伐じゃないからな。戦う必要はないのさ。ま、俺にまかしとけ。」

 あまり腑に落ちないが、大金を手に入れるチャンスだ。これを見逃す手はない。俺たちは早速出発した。



「さっすが、兄貴。すげえ事思いつくな!」

「へへへ。まあでも油断はするなよ。何よりあいつにバレちゃいけねぇからな。」


 俺たちは街を出て、南にあるコカトリスの洞窟へと向かった。洞窟までは歩いて三時間ほどで着くらしい。道中には魔物はほとんどいないので、俺たちは駄弁りながら目的地へと歩を進めた。




リーダーのホレスはいつも飄々としている。なかなかのイケメンで、年齢は20代後半から30代前半といった所か。腰には刃渡り30センチほどの短刀を装備している。


 


ペロは職業は戦士で、ホレスとずっと前からパーティを組んでいるらしい。性格は悪そうだが、実力は確かだそうだ。


 


ソフィアは先ほどから、一言も喋らずに着いてきている。いつも何かに怯えているようで、頼りない印象だ。しかし、低レベルながらも攻撃魔法、回復魔法、補助魔法と幅広く覚えており、魔法使いとしては優秀らしい。




「レオン。お前、カウンターに忘れ物してたぜ。ほれっ。」


ホレスがポケットから何かを取り出して、俺に投げた。それは、俺のギルドカードだった。


「すいません、ありがとうございます。」


キャッチして、礼を言った。


「無くすなよ。再発行には金がかかるんだからな。ところで、レオン。お前武器はどうした?」




「あ」




すっかり忘れていた。今まで山菜とキノコ狩りしかしてこなかったから武器の必要性を感じなかった。そもそも、武器を買うお金なんか持っていないし。




「えーっと、実は持ってないんです。お金がなくって。」




「ブヒャヒャヒャ。冒険者なのに武器持ってないやつがあるかよ。ピクニックに行くのとはわけが違うんだぜ!」


ペロは大笑いだ。ホレスは呆れたという顔をしている。




「そういうことなら、町を出る前に言ってくれよ。まあ、確認しなかった俺も悪いんだが。


仕方ないから、今回は貸してやるよ。」


ホレスは腰に下げていた短刀を俺に渡してくれた。


「いいんですか?ホレスさんが持っていた方が良いんじゃ……。」




「いいよ、別に。第一、俺は戦うつもりはないからな。コカトリスは強力な魔物だし、他にもあの洞窟には危険な魔物がウヨウヨいやがる。真正面から戦ってたら、勝ち目は無ぇ。だから、なるべく戦わないようにするのが今回の作戦だ。」




なるほど。盗賊らしい考えだ。でも、それなら俺が武器を持つ必要もない気がするが。


「ま、そいつは俺から新人へのプレゼントさ。お守りだと思って大事にしとけよ。」




そういうことならありがたくいただこう。俺はアーノルドといい、ホレスといい先輩に恵まれているな。


「はい、ありがとうございます。大事にします!」




「ふん、いい気になるなよ。俺はまだお前を認めてないからな。」


ペロが鼻を鳴らした。どうもこいつのことは好きになれそうにない。一々、俺を小馬鹿にしたような発言をする。




「アンタに認められなくたって別にいいよ。」


 こんなやつに敬意を払う必要はない。俺は苛立ちながら返事をする。




「おいおい、喧嘩は辞めろと言ってるだろ。ペロ、レオンは俺たちの仲間になったんだから、仲良くしてやれよ。」




「なんで兄貴はこいつの肩を持つんだよ。だいたい俺は兄貴からプレゼントなんてもらったことないぜ!」




「なんだよ、嫉妬してんのか?じゃあ、帰ったら骨でも買ってやるよ。」


「兄貴、俺は犬じゃないって何度も言ってるだろ!バウッ!!」


ペロは低い声でうなった。


「分かった。ペロ、待て、だ。待て。」


「だーかーらー、違うって!ワンッ!」


ソフィアがくすくすと笑っている。俺もつられて笑ってしまった。



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