プロローグ
プロローグ
俺は勇者になりたかった。
RPGの主人公のように強くて、漫画の主人公のようにかっこよくて、ライトノベルの主人公のように皆に慕われている。そんな勇者に俺はなりたかった。
ニートだった俺は、ある日突然異世界へと飛ばされた。そして、他の冒険者を寄せ付けない圧倒的な力と、信頼できる強力な仲間と、地位と名誉を手に入れた。それでも、俺は満足しなかった。世界中の人々から尊敬され、歴史に名を刻むような英雄になりたいと思った。
だが、そんな夢物語とは正反対の現実がそこにはあった。
「ぶっ殺してやる!」
目の前にいる赤い髪をした大柄の男が、俺に殴りかかろうとしている。周囲の人間たちがなんとか彼を取り押さえていた。だが、彼らも決して俺に同情的なわけではない。むしろその場にいる者たち全員が俺に失望と軽蔑のまなざしを向けていた。誰一人として俺の味方はいなかった。
「おまえのせいで……は死んだ!おまえが殺したんだ!」
今すぐこの場から逃げ出したかった。だが体が動かなかった。
「くそがああああああ!」
男が制止をふりほどいてこっちに向かってくる。次の瞬間、俺は思いっきり殴られ、3,4メートルほど吹っ飛んで倒れた。すかさず男は馬乗りになり、二発目三発目を浴びせてくる。俺は抵抗しなかった。今まで逃げ続けたつけが回ってきたのだと思った。今こんなことになっているのは、間違いなく自分のせいだと感じた。そんなことを考えているうちに、視界が暗くなり意識を失った。
少し前までは、すべて上手くいっていた。しかし、たった一瞬の出来事で俺は何もかもを失った。どうしてこんな事になったのだろうか。
それは、俺が弱いままだったからだ。俺は強くなったつもりでいたが、実際はニートだったあの頃から変わっていなかったのだ。弱くて、孤独で、無能で、臆病だったあの頃から何も。
こんな事なら、異世界なんて来ないほうがマシだった。
はじまして、黒山です。改善点や駄目な点等、厳しい意見でも構わないのでコメントいただけると助かります。これからどうぞよろしくお願いします。
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