プロローグ
「くっ......」
「はぁはぁ、ここまでだ!魔王!」
右の眼はつぶれ、体にも力が入らない。立っているだけでやっとだ。
しかしここであきらめるわけにはいかない。100年にもわたって世界を恐怖で支配した魔王「ゴルザム」その支配によって築かれた昏く悲しい歴史に今終止符をうつべく俺は今ここに立っている。
「甘く見られたものだな、人間。私を倒したところでどうなる?人間などという強欲で傲慢な生き物を私という絶対的な強者が統治せねば権力のために争い、今より不平等で醜い世界になるだけではないのか?」
「そうかもしれない......」
「ならばなぜ私を打ち滅ぼそうとするのだ!」
「俺は信じてみたいんだ。確かに人間は強欲で傲慢な生き物かもしれない。でも、仲間を信じ助け合うことだってできる。そしてなにより人間には勇気がある!何かを変えるために行動する勇気があるんだ!それが良い方向に向かうのかはわからない、でも進み続けることできっと物事は良い方向に向かっていくはずなんだ。そのためにも魔王、お前は邪魔だ!」
「そうか...貴様の覚悟は分かった。ならば私も全力で答えよう。この世界を統べる王として!『天地消滅』!」
ゴルザムは右手に浮かんだ禍々しい魔力の塊を槍の形に変え勇者に向かって放った。
勇者は自身の剣に全意識を集中させていく。
「はぁぁぁっ!これが人間の勇気の力だぁぁ『希望の一閃』!!」
剣が光ったと思うと、勇者自身もその光の一部となって天地消滅の魔槍を粉砕しゴルザムをも打ち破った。
「ばかなっ......。だがしかしまだ終わるわけにはいかん。こうなったらこの星もろとも消し飛ばしてくれるわ!」
ゴルザムは両手を空に掲げ魔力を高めていく。
「もう終わりだ、魔王。この手で滅ぼすことができなかったのは残念だが人間が生きている限りお前の望む世界は完成しない。私はお前の行く手を阻む者が現れるまでの時間をかせぐことにしよう。『聖痕封印』」
自らの魂に刻まれた勇者の証たる聖痕を失う代わりにゴルザムの体は結晶によって封じられていく。
「おのれ......おのれ......この借りはいつかかならず......」
「その時には俺もうすでに死んでいるさ......みんな、すまない、俺がふがいないばっかりにこんな大きな問題を後の世に残してしまった......でも俺は信じている......俺みたいに一人でなく仲間と協力して魔王を打ち倒す勇気あるものが現れると......」
そう言うと勇者は膝から崩れ落ちた。
「ははっ......やっぱり聖痕を消費した攻撃に体が耐えられなかったか......」
「......さよ、起きなさい、朝になったわよ!早く起きて顔洗って下に降りてきなさい!ご飯が冷めちゃうでしょ!」
「......うっ、夢か、」
眠い目をこすりながら少年が辺りを見回すと枕元には「勇者の功績からみるミドレニアの成り立ち」と書かれた難しそうな歴史書が置いてある。
そうだ、昨日なかなか寝付けなかったから難しそうなこの本を読んで無理やり寝たんだった、あんな夢を見たのもそのせいか。
「早く降りてきなさい!」
下の階から母の声が聞こえる。これ以上待たせるとまずい。母は家族全員でご飯を食べられないとものすごく怒るのだ。
「はいはい、今行く。......いてっ。」
心臓のあたりにチクッとした痛みが走った。
いてて、なんだ今の?まぁいっか。
騒がしい朝を暮らしながら俺のなんてことない一日が今日もまた始まるのだ。
プロローグ終
作者のとこじーです。
小説を書くのは初めてだったので読みづらかったらすみません。どんな些細なことでも気になったことがあればコメントにてご指摘いただければ幸いです。