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転生王子 【上】

今回は全三話の短いお話です。

長編も現在連載中になりますので、そちらも見て頂けると嬉しいです。

僕の名前はウィリアム・フォン・ガーネット12歳。

ガーネット神聖国の第三王子として生まれた転生者だ。

今日もまた、能無し第三王子として、家臣に見下されて生きている。


「やあ、これはこれはウィリアム第三王子ではないですか。本日はどちらへ行かれるのですか?」


「こんにちは、サム伯爵。今日は貧困街の視察に行くんだ」


「おお、さすがはウィリアム第三王子。自ら貧困街に出向くなど、なんと素晴らしい。ああ、しかしウィリアム第三王子には同族が沢山おられて居心地が宜しいのですかね」


サム伯爵の言う同族と言うのは、成長限界レベルに関する件だ。

この世界ではレベルと言う概念が存在する。

レベルは魔物を倒したり身体を鍛えることで上昇する。

しかし、個人によって成長限界レベルは生まれた時点で決まってしまっている。

王族は60~80程度、貴族が40~50程度、平民は5~20程度が一般的だ。

そして今から向かう貧困街の住民のレベルは1。

つまり一生涯に渡り、レベルが一つとして上がることはないのだ。

稀に成長限界レベル100として生まれるものが存在し、そのものはその時代で勇者と呼ばれ、人間の脅威となる魔族を討ち滅ぼす者とされている。

僕の父である国王も成長限界レベルが80で現在レベル78の強者で拳王と呼ばれ国内最強とされている。

成長限界レベルは生まれた時点で鑑定されるのだが、僕は第三王子として生まれ、その時に鑑定された結果が成長限界レベル1だったのだ。

つまりは第三王子として生まれたにも関わらず、貧困街の住民と同じレベルで、故に多くの王族貴族からは見下されている。


「そうですね。でも貧困街の皆も話してみると良い人ばかりですよ。是非一度、サム伯爵も貧困街に足を運んで見て下さい。きっと貧困街を見る目が変わりますよ」


「いえいえ、私は結構ですよ。そんな低レベルな人間と関わるなど時間の無駄ですからね。あっと、これは第三王子様には失礼でしたね。あはは、では私はこれで失礼させていただぎすね」


「そうですか。それでは僕も行きますね」


サム伯爵は誰がどう見ても僕の事をバカにしている。

しかし、僕の部下達もその行為に対して誰も咎めたりしないし、なんなら僕の父である国王ですら、僕の事など居ないものとして扱っている。

僕には兄が二人と妹が一人いる。

二人の兄は共に成長限界レベルが80で父と同じ才能を持って生まれた。

しかし、妹に関しては成長限界レベル100と、その時代の勇者と呼ばれる資質で生まれ、現在は10歳と子供ながらに既にレベルが50と、貴族の限界レベルまで到達している天才だ。

兄二人は常に僕の事をバカにしているが、そんな天才の妹だけは僕に懐いてくれていて、いつも僕の所に来てくれている。


「にぃ様、今からまた貧困街へお出かけですか?」


僕が出発しようとすると、その天才と呼ばれている妹、リリム・フォン・ガーネットが声を掛けてきた。


「そうだよリリム。貧困街の皆はいつも苦しい生活を強いられているからね。定期的に行って、どうにか今の現状を変えたいんだ」


「私も着いて行きたいですわ、にぃ様」


「リリムには、まだちょっと早いかな。話すと良い人も多いけど、まだまだ危険も多いからね」


「そうですか、残念です。では、お帰りになりましたら、またお稽古にお付き合いお願いしますわ」


「分かったよリリム。夕方には戻ると思うから、またその時に声をかけるね」


「はい。楽しみにしてますわ、にぃ様」


僕はリリムに手を振ると馬車に乗り込んで貧困街へと向かった。

貧困街へ向かう途中、馬車に同乗していた家臣達が小声で


「落ちこぼれ王子がリリム様の稽古相手をするなんて、本当にいつも何やってんだろうな」


「リリム様が本気を出したら、既に国内でも相手を出来る者など殆どいないからな。サンドバッグも必要なんだろうな」


「まあ、能無し第三王子なら、最悪どうなっても構わないからな。国王様も能無し第三王子には期待していないからな」


家臣達は一応小声で話してはいるが、狭い馬車の中の空間だ、否が応でも聞こえてしまう。

まあ、家臣達も聞こえても良いと思って話しているし、僕も特に気にしていないので、いつも通りだ。


「着きましたよ、ウィリアム第三王子。では夕刻頃にお迎えに上がりますね」


家臣達はそう言って、僕を置いて去っていった。

この国では王族貴族は絶対であり、王族貴族は平民以下を下民として扱っている。

貧困街の住民に関しては、既に人としても扱っておらず、さらには食料として役に立つ家畜以下として見ている為、王族貴族やその関係者に関しては誰一人近付こうともしない。

故に、僕に嫌々着いてきた家臣達も、この貧困街には近付くことは無い。


「こんにちはみんな」


「おお、ウィリアム君じゃないか。今日もまたいつものあれかい?」


「うん、昨日王城で晩餐会があったから、いつもより少し多めにあるよ」


僕は腰に着けた鞄を地面に降ろすと、その中から大量の使いかけの食料を出した。

腰に着けた鞄はアイテムボックスと呼ばれる特殊なアイテムで、ウエストポーチ程度のその中には、おおよそ100tまでの物が収納可能だ。


「ありがとうねウィリアム君。いつも本当に助かるよ」


「いえいえ。本当はもっと新鮮で、使いかけじゃない食べ物が持ってこれたら良いんだけどね」


僕が持ってくる食料は、基本的には王城で使用した食料の残りだ。

残りと言っても、その食料の良いところだけを使用し、その殆どを捨てている為、十分に食べれる状態で残っている。

しかし王族は贅沢をするのが当たり前で、食べたい所だけ食べる。

必然として余る食料は大量となっている。

料理人としても、その大量の食料を廃棄するのも手間な所、僕がその食料を貰いに行くようになると、料理人もその廃棄の手間が無くなる為、好きなだけ持って行って良いとしてくれた。

そして、僕はその大量の食料をアイテムボックスに収納して、こうして定期的に貧困街へと運ぶ事をしていた。


「私たちにしたら、どれも高級品ばかり。貧困で苦しんでる小さな子供達も、ウィリアム君のおかげで沢山の命が救われているよ」


「僕はそんなに大層な事はしてないよ。それにレベルだけを見て貧困街に落とすような、この国のシステムが間違ってるんだよ。レベルなんて低くても同じ人間。差別をするなんておかしな事なんだよ」


「みんながみんな、ウィリアム君みたいだと良いんだけどね。でも現実は難しいよ。やっぱりレベルが上がらないって事は成長出来ないって事だから」


「今の僕には変える事は出来ないけど、僕がいつか、どうにかしたいと思ってるんだ」


僕の言葉に対して、どう返して良いか分からなくなってしまった者達は、みんな苦笑いしながらも微笑んでくれる。

僕は食料を貧困街に届けると、少しの時間を貧困街の子供たちと過ごして王城へと帰って行った。

王族では約束した通り、帰ると直ぐにリリムの部屋を訪れた。


「リリム、帰ったよ」


僕はリリムの部屋の扉をノックして声を掛けると、中からはドタバタと走ってくる音が聞こえた。


「お帰りなさいにぃ様。では早速地下へ行って稽古をお願いしますね」


「ああ。でも、いつも通り二人っきりで頼むな」


「承知しておりますわ、にぃ様」


僕とリリムは二人で地下へと向かった。

王城の地下には、ただ広いだけの空間が存在した。

王城に住む者であれば誰でも使用は可能な練習場となっておる。

僕とリリムはいつも二人で地下に降りて稽古をしていた。


「それでは行きますわ、にぃ様」


「いつでも良いよリリム」


僕は片手に剣を握り、リリムは両手に剣を握っている。

リリムも当初は一本の剣で稽古をしていたのだが、僕に勝てないって事でじゃあ剣を二本持てば倍強くなれると滅茶苦茶な事を言い出して、両手に剣を握りだした。

しかし、そこは天才と呼ばれるリリムだけあり、倍とまでは行かないものの、すぐに二本の剣を操りはるかに強く上達したのだ。


「では、せーの!」


掛け声と共にリリムは全力で僕の方へも駆けてきた。

そのスピードは王国最強の騎士団でも、上位のレベルの者たちと同等程度の速さだ。

そんな速さで駆けて来て、二本の剣で鮮やかな剣技を繰り出すも、全て僕にいなされると、最後にはその二本の剣を弾き飛ばされて稽古は終わった。


「やはり凄いです、にぃ様。にぃ様はレベルが1なのに、どうしてそんなに強いのですか?私では全くかなう気がしませんわ」


「どうしてと言われてもな、そういうものだとしか言えないからな」


「では、どうしてその力を私以外には隠しているのですか?」


「本当はリリムにも教えるつもりはなかったんだけどね。あの時は必死で仕方なかったんだよ」


「あの時にぃ様が助けてくれなければ、おそらく死んでいましたわ。それにこうして、にぃ様に稽古してもらっているおかげで、この年でレベルも50まで上がりましたわ」


「リリムは元々才能があるから、僕がいなくても強くなるよ」


僕のレベルはこの世界の鑑定技術ではレベル1となってしまう。

それには少々理由があり、それは僕を転生させた女神に原因があった


時は少し遡り、僕がまだ転生する前の事。

僕はブラック企業に務める平凡なサラリーマンだった。

その日も朝の6:00から夜の23:00まで働き帰るところ、毎日の疲れもあって少しふらついてしまい、運悪く縁石につまづいて道路へと転んでしまった。

そこへトラックが走って来ると、僕そのまま命を落としたのだ。

そして次の瞬間には、真っ白な世界が広がっていた。


「ああ。あの世って実在したんだな。僕は天国へ行けるかな?」


「天国なんて存在しないし、死後の世界も当然ないよー」


「…誰ですか?」


「私は新人美人転生女神のノエルちゃんだよ。おめでとう、君を1000人目の転生者として私が選んじゃったよ。1000人目の記念として、君にはチート能力で転生させてあ・げ・る」


「僕は本当は生きていて、夢を見てるのですかね?それともやはり死後の世界?」


「だから違うってばー。ほら、転生後の世界ではレベルってのが存在するんだけど、君には生まれながらに成長限界レベルの最大値にしといてあげるよ。だから生まれた時点で世界最強的な。異世界を楽々生きていけるから、第二の人生楽しんじゃってねー。じゃあ、行ってらっしゃーい。バイバーイ」


「ちょっと待ってくださいよ。って、僕の身体が薄くなっ…」


「さてさて行っちゃいましたね。では私は今書いた書類を提出しないとですね。また字が汚いって、お局さんに怒られるから、書類提出って面倒いんだよね~。まあでも私は真面目な新人美人転生女神。ちゃちゃっと終わらせますか」


女神はルンルンとスキップをしながら書類を提出しに行った。

そしてそのお局さんに書類を提出すると


「字が汚い!読めない!それに何ですかレベル1001って言うのは!あなたふざけてるんですか!真面目に働きなさい!!」


「ちょっ、待ってくださいよ。私はちゃんと100/同じってレベルの所に書きましたよ。1000人目記念で生まれた時点でレベル100にしてあげただけですよ」


「100/同じですって?どう見ても1001同じにしかし見えませんよ!だからいつも字は綺麗に書きなさいって言ってるでしょうが!どうするんですか!あの世界の鑑定技術は100までしか測定出来ないのですよ!さっき転生した子の1000の位は表示されないから、表示的には成長限界レベル1になっちゃいますよ!全部あなたのせいですからね!」


「えーマジっすか~。あの子に悪い事しちゃったですね。でもレベル1001の正真正銘のチートだし、きっと困らないですよね」


「あの世界は表示されてるレベルが絶対!きっと生まれた時から困難が強いられますよ!少しは反省しなさい!!」


「うぅ~、ごめんなさいです~」


こんな事があり、表示上は成長限界レベル1で実際はレベル1001のチートが生まれてしまったのだ。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

全三話と短いお話になりますので、良ければ【中】と【下】も読んで頂ければと思います。

少しでも面白いなとか思っていただければ、評価をしてもらえると嬉しいです。

今後のモチベーションにもなりますので、宜しくお願いします。

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