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夢にまで見たような世界

はい、連続投稿です。

まあ、最初ですし、あれだけじゃ内容も分からないですしね。

ここではないどこかの世界を夢見たことはあるだろうか。

刺激のないこの世界ではなく、もっと未知にあふれた刺激的な世界を。

──別に好き勝手にのんびりと生きられる世界だっていい。


とにかく、こことは異なる世界を夢見たことはあるだろうか。


──俺にはあった。


丁度、『異世界』を描いた作品がたくさん流行ったときくらいだろうか。



──俺も書いてみたい。こことは異なる世界を、心が躍る世界を。



そう考えた俺は、とあるサイトでちょっとした小説を書き始めた。



どこにでもあるような、ある日突然非日常へと連れ込まれる、『異世界召喚』の物語を──





(──懐かしい夢を見た)


あくびを零しながら、心の中で呟く。

彼が見たのは、この世界にはない世界の光景。


(一時期、俺が描いていた小説の場面だな。世界観や設定にもこだわって、細かいところまでイメージしながら書いたんだよなぁ)


しみじみと、懐かしみながらそう思うのは、ここ一年程それに触れることができていなかったからだろう。


というのも、


(思ったよりも高校生活が大変で、なかなか執筆がなあ……)


あくびのせいか零れる涙を拭いながら、自分の描いた世界へと思いを馳せる。


(もしかしたら、あの世界の続きを待ってくれている人もいるのかな……)


ランキングに乗るようなヒット作には遠く及ばないものではあったけれど、自分が創り出し、愛した世界を見てくれる人は確かに存在したのだ。


(……もう少しだけ、書いてみるか)


顔も知らない、いるかもわからない誰かのことを思いながらそう思ったところで授業のために教師が教室にやってくる。


(確か、クラス召喚で30人も召喚させたんだっけかな。30人分全員を描写したわけじゃないとはいえ、名前と『スキル』を考えるのが大変だったな。まあ、それが面白くもあったんだけどさ)


授業中にもかかわらずそんなこと考えていたが──周囲がざわついていることに気が付く。


(ん? いったい何が──)


そこでようやく気が付いた。

教室の地面に幾何学模様が描かれ始め、光を放ち始めていることに──


「これ、は──」


おもわず目を剥く。

それは現実的ではない。

しかし、どうしてもその可能性を考えてしまうのは、つい今しがたあんなことを考えてしまったからだろうか──


「【魔法陣】、まさか──」


それをクラスの全員が認識した瞬間、魔法陣の構築が加速する。


「こちらを補足していた【魔法陣】を、こちらから認識したことによって、相互の証明がより強固になる──」


ふと、いつか書いた場面を思い出す。


どうして召喚から逃げられるものはいないのだろうかと考えた時に、一番しっくりきた理由付け。


そんなことを考えながら光に包まれ──そこで意識は途絶えた。







──何か酷く、非現実的なものを見た気がする。


そんなことを考えながら、意識が覚醒して行く。

そして、何かとてつもない違和感を覚えている自分に気が付く。


──なぜ自分はこんなにも違和感を感じているのか。

──なぜこんなにも自分は愛おしさを感じているのだろうか。



わからない感情に戸惑いながら目を開く。


「──は?」

「なにこれ、ここどこ?」


ざわつき、何が何だか理解できず不安を感じている声を聞きながらあくびを零す。


そして視界に入ったのは、白を基調とした柱が並び立つ荘厳な建造物。

自分の知っている知識から言うのであれば『神殿』と称するのがぴったりな空間であった。


(デザインにはこだわれど、きらびやかな装飾はされていない。まさに意匠の美であるといえるだろう──それを俺は知っている。だって、それは──)


「よくぞお越しくださいました。私は『創生教』にて【聖女】の役割を賜っています、『ユースティア』と申します」

「創生、教……」


思わず言葉が漏れる。

だって、それは──いや、たまたまな可能性もある。


状況を理解するためにも、他のクラスメイト達のようにユースティアの言葉に耳を傾ける。


「先日、あなたたちを異なる世界から呼び寄せるとの神託が下りました。それは世界の危機を退けるカギになると」


その言葉に不信感が募り始めたのを見て、ユースティアは一つ息を吐く。


「信じられないというのも理解できます。なので見せた方が早いでしょう──『我は主に変わりこの世界に平穏をもたらすものなり。その体に活力を。その心に安寧を。我が手を取らずとも、主はあなたに平穏をもたらさん』【平穏なる聖域カームチュアリー】」


すべてを包みこむような優しい光があたり一面を覆う。


それに伴って緊張し強張ったからだがほぐれてゆく。

それだけではない。

不安を感じてざわめいていた心が落ち着きを取り戻したのだ。


「これで落ち着きましたね。それと同時に、ここがあなたたちのいた世界と異なる世界であるということも理解いただけたはずです」

「あ、あの、いろいろとお聞きしたいのですが、よろしいですか?」

「ええ、もちろん」


社会人としての立場もあるからか、いち早く状況を知るために先生が問いかける。


その答えの主だったものは

世界の危機が解決されれば変える手段を主|(ここでは創世神)が用意するということ。

それ以外の期間方法は知らないこと。

世界の危機が何かは判明していないが、魔物の活動が活発化しているので、【魔王】である可能性が高いということ。

世界の危機を解決するための支援は『創世教会』だけではなく、各国が全力で行うこと。


というものだ。



(……こんな状況下でも恐慌に至らないのはさっきの【平穏なる聖域カームチュアリー】の影響だ。しかし、ここまで事実を受け入れているのはどうしてだ? もしかすると【思考侵蝕】あたりも使われているかもな)


そんな思考に至ったところで問答が終わり、次の段階へ移行する。


「皆さんはこれから、この生活基盤を用意してくれている『スタリジン』国で暫く過ごしていただきますが、その前にこの神殿で『ステータス』を判明させていただきます。これは身分証にもなるので、皆さんに受けていただきます」

(──『ステータス』、か。もしそうなら、ここでわかるハズだ)


誘導されてユースティアの方へと向かうクラスメイトを見送りながら心に決める。


これが、明確な判断基準になると。


立ち上がろうとして──ふらりとよろめいたところを後ろから支えられる


「大丈夫か?」

「え、ええ。少し調子が悪くて……ありがとうございます」


何故か鉛のように重い体に戸惑いながら、支えてくれた先生に礼を言う。


「歩けるか?」

「少し、厳しいですね」

「じゃあ、支えて連れて行ってあげるから。少し頑張ってちょうだいな」


支えられ、『ステータス』を調べてゆく列に並びながら思考を巡らせる。


(身体が思うように動かないが、そんなことはどうでもいい。それよりも──)

「──あれ、大丈夫か?」


思考に耽かけたところで声がかかる。


「ヒイロ君、ちょっと体調が悪いみたいで……」

「なら僕が代わりましょう。僕は『ステータス』測定が終わっているので」

「……そうね。私じゃあ逆に負担がかかるかもしれないし、お願いするわね」


進んで支えてくれるというヒイロに支えが代わる。


「ありがとう」

「気にしないでいいよ。困ったときはお互い様だよ」

「ならいつか、ヒイロが困ったときには手伝わせてもらうよ」


そんな会話をしながら、これはチャンスだと感じた彼はモノは試しにとお願いをしてみる。


「『ステータス』ってどんなものだった?」

「ああ、こんな感じにカードみたいなのに映し出されるんだ」


そう言って見せてくれたカードにはこんな風に記載されていた。



◆◆◆◆◆


直道 ヒイロ

クラス :勇者

生命力 500/500

魔力 500/500


【ユニークスキル】

『聖なる力』

【スキル】

『剣術』『身体強化』

◆◆◆◆◆



それを見た瞬間、疑念が確信へと変わる。


「……ありがとう」

「なんか、ゲームみたいだよね」


そう言って笑うヒイロに「そうだね」と返しながら心の中では「違う」と叫んでいた。


(これは、ゲームなんかじゃない。これは、この世界は俺の書いた世界に似すぎている。ここまでくるともう、同じものとしか──)

「次に31人目。これで最後ですね」


その声に視線を上げれば、ユースティアが微笑む姿があった。


「31人、目……?」

「ええ、最初に全員で31人だと聞いたのですが……違いましたか?」

「ほら、先生も居れて31人だよ? あってるよね?」

「え、ああ。そうだ、そうだったね」


戸惑いながらも促されるままに、目の前の水晶に手を乗せる。


(違う、俺の書いた小説では召喚されたのは30人。一人多い……)


一瞬チクリと痛みが走り──水晶が光の粒子を放つ。

その粒子が集まり、一枚のカードを創り出す。


「はい、これがあなたの『ステータス』です──!?」


祭司の人が手渡してくれた『ステータスカード』を一緒に見たユースティアが驚愕する。


「【回復ヒール】! ああ、なんてこと……なんてことでしょう……!」


悲壮感を見せるユースティアとは別に、彼も驚愕していた。

その原因は、『ステータスカード』にあった。


◆◆◆◆◆

幕内 テラス

クラス:

生命力 10/10

魔力 10/10


【スキル】


◆◆◆◆◆



理由は『ステータス』がこのような表示であったことだ。


ユースティアは何故この者が、赤子同然の『ステータス』なのかと。


そして彼は──


(俺が、『ステータス』を張り付けるために使っていたテンプレートの、初期ステータスだと……!?)



彼が書いた、空想世界で使っていたテンプレートであったことに驚きを隠せなかったのだ。

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