虹の空想世界が踊りだす
少年が喋ると、少女は笑う。
少年が歌うと、少女は虹の上でピョンピョンと踊る。
ここにはくたびれたサラリーマンや、勉強に縛られた子供はいない。
誰も知らない、魔法の世界。
少年が懐中時計を持って、白いウサギの格好をする。チクタクと鳴っている時計。
少年が少女の手を引いた。
どこに行きたい?行きたいところへ連れてってあげる。
うーんとね、うーんと。
少女が悩むと、世界の形は変わる。
少年と少女は、黄色くて、まんまるいお月様の上を走っている。
少年が思いっきりジャンプすると、背中から白くて綺麗な羽が生えた。少女が少年の真似をすると、同じように羽が生えた。
あのお星様のところまで競争だ!!
うん!!
ピカピカと輝くお星様を目指し、二人はまるで天使のように飛んで行く。
やった!私の勝ち!
少女が嬉しそうに星の周りをクルクルと飛んだ。
おめでとう。次はどこに行きたい?
うーんとね、次はね。
世界は、二人が望むまま。
少年と少女は、カメの背中に乗って、カラフルなお魚さん、少年と少女より大きなお魚さん、光るお魚さん、たくさんのお魚さんと一緒に、海を冒険した。
少女が、海の底にある宝箱を見つけた。
開けていい?開けていい?
いいよ。
少女が宝箱を開けると、小さくて、虹色のガラス玉がいっぱい出てくる。
わぁ、すごく綺麗。
ほんとだ。
少女が喜ぶと、少年はもっと喜んだ。
虹色のガラス玉は、ふわふわと浮かんでいる。
やがて、虹色のガラス玉は上へ上へと登った。
少年と少女は、ガラス玉を追いかける。
少年と少女が虹へ戻ると、ガラス玉は割れてしまう。
少女が大きな声をあげて泣く。
少年はもっと大きな声をあげて泣く。
虹の下には、涙の水たまりが出来た。
水たまりから大きな木が生まれ育つ。
リンゴの木。
泣いている少年と少女の隣に、真っ赤なリンゴが落ちる。
少年が真っ赤なリンゴを拾い、食べると、たちまち涙が止まった。
美味しいよ。
少年が真っ赤なリンゴを勧めると、少女は泣きながら真っ赤なリンゴを食べた。
美味しいだろう?
少女はコクリと頷き、真っ赤なリンゴをぺろりと平らげた。
少女の涙は止まっていた。
次はどこに行く?どこでも行けるよ。
少年はポッケから懐中時計を取り出して、ネジを巻いた。
未来世紀にだって行けるし、恐竜がいた時代にも行ける。
うーんとね、うーんと。
少女が悩むと、世界の形は変わる。
少年と少女は美しい夢、世界、時間を旅行し、美味しいご飯を食べた。
彼らは誰にも邪魔されない、僕の頭の中に住む幸せな子供たち。
現在連載中の長編大作「向日葵が教えてくれる、波には背かないで」をよりファンタジー路線かつおとぎ話風にして作りました。元ネタ作品である「向日葵が教えてくれる、波には背かないで」もぜひぜひよろしくお願いします!!