修道僧から恥さらしへ
ロレンスになろうとしたが、まだまだ未熟な高校生であった護。
顔も名前も知らない『ロミオ』とどうやって恋人にするかなんて知る由もなく、ただ振り回されるだけになるのか?
そんな中で決断した行動が吉と出るのか、それとも凶と出るのか。
「そんな顔されたら応援したくなっちゃうよ」
つかんだ腕を離さないように力を込める。
その腕は小刻みに震えていたのが分かる。
「ちょっと、痛いから離しなさいっ」
固く決心したもののジュリエットの力には到底及ばなかった。
約二秒の決心だった。
「いつもの傲慢っぷりはどうしたの?ねぇ?デート行くんでしょ?」
「ま、まぁそこまで言うn」
僕は返事を聞く前に腕を引き歩き出した。
歯に力がこもり、早歩きになった。
周りの声も聞こえなかった。
この時、僕は冷静になり思い出した。
まだ行き先を聞いてなかったことを。
今日の国語の授業は小テストがあることを。
追試、めんどくさいなー
それから町を出て、繁華街に繰り出した。
横目にすぎる人たちは冴えない高校生と超が付くほどのお嬢様が並んで歩いているのだから気にはなってもしょうがないだろう。
「ねぇ、そろそろ手を放してくれないかしら?」
あそこからずっと手をつかんだままだった。
慌てて手を離し、後ろを向いた。
「ごめんなさい!」
そのまま頭を下げた。
顔を上げたらすぐそばにジュリエットの気品あふれる顔がすぐそばにあった。
「もっとしっかりとしなさいよ」
少し照れたように感じたのは僕が照れているからだとすぐに思った。
ホントにかわいいなー。
「何言ってるのかしら?」
「もしかして声に出てました?」
ジュリエットは周りの人を指さした。
その先にはカメラを構えてる人が5、6人いた。
その後の記憶は曖昧だったが、とにかく走って遠くの店に入り、角のテーブルにうずくまっていた。
その間、ジュリエットは初めてのドリンクバーに心躍らせていた。
300円で一時間楽しめるお嬢様ってすごいな。
「ところでいつまでそうしているつもりなのかしら?」
3種類のドリンクを混ぜた特製ミックスジュースを片手に聞いてきた。
「ご、ごめん。さすがに恥ずかしくて」
ドリンクバーにも飽きてきたようでそろそろ店を移動したいようだ。
「次のところと思ったけれども、今日は色々あって疲れたわ」
その言葉を聞き、席を立とうとしたら袖を引っ張られた。
「もうちょっとくらい付き合いなさい」
今日で3度目の赤面をさらしてしまった。
「でも、少しだけだからいいでしょ?」
「まぁいいけど」
この時間が続いたらいいのにな・・・
こんなバラ色の青春を送っている裏では『パリス』の存在が動き始めていた。