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雪降る月夜にドブネズミ  作者: 鮫に恋した海の豚
終章
39/39

エピローグ僕の頬に、キスをするんだ


 僕の住んでいる場所は、町のはじっこにある建物の中。僕はその部屋の中で、まだ下手くそだけど、良くピゥーピゥーと口笛の練習をしている。上手くなったら、友達に自慢するんだ。


 一緒に住んでいるのは、とっても優しいお母さんと、とっても優しくてたくさん一緒に遊んでくれるけど、僕も結べる靴ひもを自分で結べないぐらい太っているお父さん。友達に馬鹿にされることがあるけど、僕は大好きだ。


まぁ、お父さんの背が高くて、顔も格好良くて、走るのも速かったらって思うときもあるけど、僕のお父さんにそんな凄い事は起こりそうもない。


 声も掛けないで友達が百人も出来るみたいな、勉強もしないで先生に誉められるみたいな、初めて会う可愛い女の子が僕の為に僕にぴったりのセーターを編んでくれていたみたいな、お母さんが猫を飼ってくれるみたいな、それぐらい凄いことは、たぶんお父さんには、起こりそうもない。


 別に僕はお父さんの悪口を言っているんじゃない。だけどもう少し、痩せた方が良いと思っている。友達に馬鹿にされるのは、やっぱり悔しいから。太ってるってだけで、お父さんの良いところも知らないくせに、馬鹿にされるのは悔しいから、痩せた方が良いと思っている。


 お父さんには悪いけど、お母さんは本当に凄いと思う。だってお料理はとっても美味しいし、お部屋のお掃除もたくさんしているし、それにお外で働いてるし、友達のお母さんと違って、細くて綺麗だと思う。


 他にも凄い所はたくさんあるけど、一番好きなのは、とっても綺麗な金色の髪の毛。どれぐらい綺麗かっていうと、お母さんの似顔絵を描こうと思っても、僕の持っている色エンピツじゃ足りない。お花畑で似ている色の花を探そうと思っても見つからない。お空に浮かんでいるまん丸のお月様だって、魚屋さんで売られている綺麗な色のお魚でも、お母さんの髪の色には負ける。それぐらい、お母さんの金色の髪の毛は綺麗だ。まぁつまり、大好きってことなんだと思う。


 僕の家には、お父さんもお母さんも居るし、色んな人がやってくる。色んな人っていっても、ガラスの靴を履いたお姫様は来ないし、ホウキで空を飛ぶ魔法使いも、意地悪なお婆さんも、乱暴で醜い怪物も、そういうのは来ない。丸い眼鏡とお鼻のお髭が似合うおじさんとか、お父さんが魔女って呼ぶけど、不思議な魔法を見せてくれない、口は悪いけど優しくて面白いおばさんとかがたまに遊びに来る。


 丸い眼鏡のおじさんは、いつも難しい話をしている。僕にお勉強を教えてくれる時は、学校の先生よりも上手だけど、お父さんやお母さんと話している時は、とっても難しい話をしているから、僕は眠たくなってしまう。


 不思議な魔法を使えない魔女のおばさんは、とっても僕の事を可愛がってくれる。だけどたまに、お父さんの事をデブって言うのだけは、正直止めて欲しい。仲良しなのは知ってるけど、お父さんが少し可哀想だ。


 お母さんは、この二人がとっても大好きだ。二人が家に遊びに来ると、とても嬉しそうな顔をする。僕はその嬉しそうなお母さんの顔が好きだから、そんな顔にしてくれる、この二人がとっても大好きだ。


「とっても美味しかったよ。ごちそうさま」


 今日もその二人が遊びに来てて、お母さんの作った料理を食べて、今さっき帰って行った。だから僕は、二人といっぱい遊んで貰った僕は、いつもより遅くまで起きていて、とても眠かった。


 二人にさようならをして、お母さんと一緒に歯を磨いた。そして僕は、最近やっと怖くなくなった一人部屋に、お母さんと一緒に入った。


 今日も楽しくて幸せな一日が終わっちゃう。少し寂しいけど、僕はこの、眠る前の一瞬がとっても好きだ。


 僕がベッドに入ると、お母さんは僕の頭を撫でて、いつも同じ言葉を、僕が安心して眠れる言葉を、言ってくれる。


「お休みなさい、愛してるわ、ピーター」

 

 お母さんはそういって、僕の頬に、キスをするんだ。 

 


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