25話 蝶になる時
結構クライマックスです。
俺たちは戦績を讃えるプレートと優勝賞金を与えられた。
「これで故郷に錦も飾れますね!」
俺とフィーナは数日大会での優勝を祝いあった。
しかし、やがて俺の体に異変が起きた。
ある朝、勝手に糸が俺の体から出ていたのだ。
「グレゴール、何に対して糸を出してるんですか?」
「いや、俺もわからん! とにかく糸が止まらないんだ!」
そして、その日のうちに体が糸で覆われだした。
ああ、これは間違いない。
「フィーナ、俺はしばらくさなぎになる……。きっと成虫になるんだ」
「そんなの困ります! グレゴールはあくまでもキャタピラーなんですよ!」
「そんなこと言われてもこれはどうすることもできん……。姿を変えて戻ってくるから、ちょっと待っててくれ……」
「孵化したら記憶がないなんてことはないですよね?」
「俺を信じていてくれ」
「…………わかりました」
フィーナの手はぎゅっと硬く握られていた。
フィーナなりに耐えているんだ。
「でも、もしウソをついたら絶対に絶対に許しませんからね! ちゃんと立派な蝶になるんですよ! どうせならイケメンの蝶になるんですよ! 魔物使いの私が誇れるモンスターになるんですよ! この私が惚れちゃうような蝶になるんですよ!」
「お前、注文多すぎだろ……」
しばらくお別れなのに、苦笑しちゃったよ。
でも、笑って別れられるのっていいことだよな。
さすが、俺のご主人様だ。
◇ ◇ ◇
そして俺の全身は繭に包まれた。その間、長い眠りの時間だった。
体が変質していくから当然なのかもしれない。
真っ白なのか、真っ黒なのか。
空白としか言えない時間がしばらく続いた。
やがて――
俺の意識が戻ってきた。
ゆっくりと体を起こした。
ベッドから体を出すように。
あたたかなところから自分が抜け出ていくのがわかる。
幸い、記憶は残っていた。自分がグレゴールなのもわかる。
だけど、体が人間の男のものだった。
ちゃんと二本の足があって、俺は立っている。手も二本あるし、頭に手をやるとちゃんと髪の毛も生えているらしい。
だけど、背中に何か当たるものがある。
何かが背中にある。
「なんだ、これ?」
俺はあわてて部屋の鏡の前に立った。
たしかに人間の姿をしている。十代半ばの男の姿だ。しかし違うところもある。
蝶の翅が生えているのだ。
キャタピラーの名残もあるってことだな。
そろそろ最終回ですが、新作「全キャラ惚れろ! 一緒に転生する彼女のいない俺は容姿と魅力をMAXにしてもらいました」の更新を開始いたしました。
よろしければこちらもご覧ください!
http://ncode.syosetu.com/n7318dg/
また、「チートな飼い猫のおかげで楽々レベルアップ。さらに獣人にして、いちゃらぶします。」も毎日更新を実施中です。
http://ncode.syosetu.com/n4547df/