21話 全国魔物使い大会2
2試合目は首がいくつもあるケルベロスだったが、筋弛緩ガスを試したらこれがよく効いて、マヒを起こしてくれた。
このまま、動くことができなくなり、戦闘不能で俺の勝ち。
こういう特殊能力で勝つというのはけっこうある。
なので、催眠系の息を吐くモンスターなどもけっこういた。
たしかに試合に勝っても、負傷が激しいとあまりいいことはないだろうしな。
回復魔法を戦闘の後に使うのはOKだが、それでも試合では精神力も使うから序盤を楽に勝ちたいというのわかる。
二度勝ってベスト16に残った魔物使いたちは再度クジを引いて、明日トーナメント戦をやることになる。
残り4回勝てば優勝だ。
ここまで来た奴は多くがドラゴンだった。
なるほど、フィーナがドラゴン対策をしようとしたのは正解だ。
一方、次の敵はワイトというモンスターというよりは悪魔という雰囲気の奴だった。
そんなの、どこで仲間にしたのかという気もするが、まあ、魔物使いのプライベートな部分だから、どうでもいい。
その日はゆっくりと休息をとって、二日目に備えた。
ほどよい高揚感はあったが、よく眠れた。
◇ ◇ ◇
そして二日目。
俺たちの試合は最後だった。なので、それまでに出てくるすべてのモンスターを見ることになる。
やはり、強いのはドラゴン系だ。
1試合目でドラゴンが巨大なカマキリを炎で圧倒した。
カマキリでここまで来るだけでも相当大変なので、かなり高いレベルまで育てていたはずだが、炎にはなす術がなかった。
2試合目もドラゴンみたいな奴が出てきたが翼の形状がちょっと違った。ワイヴァーンという種族らしい。
こちらは炎などは使わず肉弾戦で敵のライカンスロープを倒した。
こんな調子でただでさえ多かったドラゴン系の割合がさらに高くなっていった。
ただ、俺たちが勝てばこのあとにぶつかる対戦相手はドラゴン系じゃなくて、炎を操るイフリートという精霊みたいな奴だった。
炎を使う対決で相手のドラゴンを包みこむほどの炎を放ち、相手の魔物使いに試合放棄をさせた。
「たしかにキャタピラーは苦手な種族が多いですが、グレゴールなら勝てます。大丈夫ですよ」
フィーナが俺を励ます。
「まずは次に勝たないとな。ていうか、ここまで残ってる時点で一流の魔物使いだろ。ベスト16なんだから」
「どうせなら頂点を目指しますよ。夢なんですから」
もっともだ。
さて、俺たちの番だ。
ワイトはモンスターの中でもぶっちぎりで忌々しい見た目をしている。
見ただけで呪われそうだ。黒い霧みたいなのに体が包まれてるし。
試合開始のラッパが鳴る。
すぐにワイトは何かぶつぶつとしゃべり出した。
俺の体に異変が起きた。
やけに体が重いのだ。
動けないほどではないが、まるで鎖でつながれたように遅くなる。
そこに鎌を持ったワイトがやってきて、こちらの皮膚を切り裂く。
「グレゴール、大丈夫ですか!」
フィーナが叫ぶ。
これぐらいなら大丈夫ではあるが、ちょっと厄介だな。
まさに本当に呪いをかけてくる相手らしい。
これ、どうやって倒せばいいんだ?
やがて体は動くようになったが、またすぐに呪いをかけられる。
げっ! キャタピラーは呪いに対する耐性がほぼない!
また鎌で攻撃される。
死ぬことはないと思うが、ずっと攻められ続けると判定負けになるぞ。
相手の魔物使いは、このままこちらを倒せると思っているのか、にやにや笑っている。
けど、こちらもまだ冷静だ。
「落ち着きなさい、グレゴール! 仕留めるチャンスはあります!」
フィーナもちゃんと戦闘を見れている。
そうだな。やり口はいくらでもある。
俺はじっと耐える。
イモムシは耐えるのは慣れているんだ。
それで相手に何もできないと油断させる。
そして、俺の顔のほうに攻撃を仕掛けてきたところを――
一気に動いて、喰らいつく。
何十メートルも動く必要はなかった。
顔の近くに来たところをがぶっとやればいいのだ。
ワイトが抵抗するが、絶対に離さない。
離さなければこちらの勝ちだ。
敵の魔物使いは混乱している。
最悪の事態を想定して指示が出せないってことはその程度の実力ってことだ。
ワイトがぐったりしてきたところで、審判が試合を止めた。
俺の勝ちだ。
「やりましたね、グレゴール!」
すぐにフィーナが走り寄ってきて、俺に回復の魔法をかけてくれる。
傷も痛みもすぐになくなった。
これでベスト8か。
次が準々決勝。
といっても、そんなに間を置かずに戦うことになりそうだけどな。
相手はイフリート。
炎を操る精霊だ。
今日もできれば二回更新できればと思っております。