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10話 王城突破

 よし! キャタピラーの破壊力を見せてやる!


 ドアをぶっ壊して、俺は廊下を邁進する。

 速度も上げていく。


 戦車は英語でキャタピラーのはずだ。

 このキャタピラーはまさに戦車みたいなものだ。

 速度が上がるほど、破壊力も増す。


 相変わらず、俺は催眠ガスを出す。

 ただ、建物全体に広がるにはしばらく時間がかかりそうだ。


「グレゴールがいないのに気づいた時、この世の終わりかと思いました」

 俺にしがみつきながらフィーナが言う。


「それはおおげさじゃないか?」

「おおげさじゃないですよ。私はグレゴールと天下をとるんですから!」


 天下か。織田信長みたいなこと言ってるな。

 でも、案外と俺とフィーナならできるかもしれない。


 通り過ぎたドアが開いて、そこから兵士が出てくる。

 兵士たちは弓矢を構えている。

 くそっ! フィーナを撃ち殺す気か!


「フィーナ、俺の側面につかまれ!」

「無茶ですよ!」

 俺は顔の横あたりに突起出てこいと念じた。


 キャタピラーとかって、そういうの出てる種類もいるだろ。

 なんか、心細いでっぱりが出てきた。触覚だろうか。

 フィーナが右手でそれに捕まる。


 フィーナの頭があったところを矢が通り抜けていった。


 よし、どうにかかわせた。


「怖すぎです! 寿命が縮みます!」

「まずはここから出られないと何年寿命があっても同じだぞ!」


 今度は剣と鎧で武装した連中が集まっている。

 しょうもないことに税金使うなよ!


 俺は別にいい。兵士程度には負けない。

 Lv36っていうのはそういうものだ。

 でも、フィーナが狙われる恐れがある。


 Lv36だろうと、首でも斬られたら終わりだ。

「フィーナ、俺はジャンプする!」

「えー! そんなことできるんですか?」

「この足にだって筋肉ぐらいあるだろ! やるよ!」


 俺は加速度をとことんつけて、浮けと念じた。

 行くぞ、キャタピラージャンプ!


 二目メートルぐらいの高さまで体が浮き上がる。

 というより、ボールが投げられたみたいにそのまま前に進む。


 その恐怖で兵士たちは思わず左右によける。

 トラックが飛びかかってくるようなもんだからな。そりゃ、怖いか。


「グレゴール、マジでかっこいいです! かっこいい貴公子に生まれ変わったら結婚してもいいぐらいです!」

「誰だってかっこいい貴公子となら結婚したいだろ!」


 相当廊下を走ってる。

 そろそろ出口なんじゃないか?


 だけど、そこに最後の難関が待っていた。

 20人ほどがブロックになって、門のところで待機している。


 また、ジャンプするか?

 でも、さっきより縦に深い。

 中途半端なところで着地するとフィーナが危ない。


 もう、どんどん新技を作っていくしかないな。

「フィーナ、目がまわると思うけど我慢しろ! あと、全力でしがみつけ!」


「今度は何ですか!?」

「ブーメランになる」

「…………はぁっ!? できるわけないでしょ! キャタピラーですよ!」

 そりゃ、そういう反応できるよな。


「こうは考えられないか? 一般のキャタピラーはブーメランという概念を知らない。だから、ブーメランのような動きができないのだ――とは」

 つまり、ブーメランを認識している俺ならブーメランのように飛べる。

「それ、屁理屈ですよ! ジャンプならともかく回転を加えるなんて非常識ですよ!」


「俺はすでに非常識だっ!!!」


 俺はここを抜け出すぞ。

 こんなところで旅を終えてたまるか。

 俺はフィーナに天下をとらせるんだ。


 加速度は悪くない。

 本当に、悪くない。


「うおおおおおおおおおお!!!!!!!!」


 俺は体を右側に曲げる。

 これは時計回りか反時計回りか。

 どっちでもいい!


 曲げると同時にジャンプ!


 回転しながら、前方に飛ぶ!

「きゃああああああ! 飛びますううううう!!!!! しかも回りますうううう!!!!」

 ちょっとだけ我慢しろ! 絶叫マシンみたいなもんだ!


 そして、俺は兵士たちをボウリングのピンみたいに吹き飛ばして――

 その最悪な城から脱出した。



「やりました……」

 力尽きたような声でフィーナが言った。


「吐きそうです……」

「酔ったな。止まるわけにもいかんから走りながら吐け。できれば俺にはかけるな」

「ぜ、善処しますよ……」


 そのあと、俺は全力で市街地を抜け、平野部を走った。

「フィーナ、これから、どうする?」

「今、集落に帰ると、捜索の手が伸びるかもしれませんし、東に行きましょう」

「俺も同意見だ」


 こうして、俺とフィーナは地平線でも見えそうな広大な土地を爆走していく。

 疲れてきたし、明け方にはどこかの町に入りたいな……。


「あの、恋しているとかとらえられるのは迷惑なんですけど」

「いったい、何だ?」

「グレゴール、すごくかっこいいですよ」


 俺はちょっと照れた――つもりだが、見た目の変化は多分ない。

「キャタピラーで言われると、人間で言われるのの、5倍ぐらいうれしいな」

「本当にかっこいい貴公子に生まれ変わってくれませんかね」

「贅沢すぎる」


 キャタピラーとしてはエルフの娘に恋に落ちることはないのだけど、こうは考える。

 フィーナにかっこいい恋人とかできたら、少し寂しく思うだろうなと。

 今のところは、俺がフィーナを独占していることには違いないのだ。


 空が白みはじめた頃。

 山間の土地に小さな町が見えてきた。

次回は昼12時頃の更新予定です!

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