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おとなになりたい

作者: なず

 久々の投稿ですが、お前どうした? ってくらい鬱々してます。私どうした?

 スマホ打ちだったので、空白やらなんやらは後ほど修正します。(3/25修正しました)

 射し込む日差しで目を覚ます。カーテンを開けると太陽は真上に昇っていて、今日もタイマーで起きられなかったことを察した。

 布団を畳み、服を着替えて部屋を出る。階段を降りてリビングへ行くと、しんとした室内のテーブルに手紙が置かれていた。


『朝ごはんはトースト。昼ごはんは適当に。二十一時には帰ります』


 母の字で端的に綴られた手紙はすぐに捨てた。彼女の字は几帳面すぎて、機械みたいに思えて好きになれない。

 キッチンには食パンがふた切れと、炊飯器に半分ほど米が残っていた。冷蔵庫を覗いてみたが、生卵や人参などの調理が必要な物しかなかったので、そのまま閉じる。私は料理ができない。


料理ができないなんて、女の子なのに。


 いつかの母の呆れたような言葉が頭をよぎり、俯く。いい、お金があれば食べ物は買える。

 自室へ財布とカバンを取りに戻った。食欲は少し失せていたけれど、食べなければまた母が顔をしかめるから。

 結局スーパーで惣菜を二つ買い、一つずつ朝食と昼食に食べることにした。ひとまず食パンをトースターに突っ込み、焼いている間に惣菜を一つ開ける。ポテトサラダは業務用マヨネーズの味が強くて、思わず水で流し込んだ。

「まっず」


あなた自分で作りもしないくせに。


 思わず愚痴をこぼした途端、母の言葉がまた流れ込む。母の呆れた顔が浮かんで、また一口水を飲んで流し込んだ。

 トーストが焼けた。温度を間違えたのか少し焦げている。食欲がすっかりなくなってしまったけれど、冷めてしまえば不味くなる。しぶしぶ齧って、時間をかけて食べた。ジャムでも誤魔化せないほど焦げ目が苦くて、話にならない。

 洗濯機を回し、窓を開ける。ここから見える駅前は、平日であれ十時になって通勤通学ラッシュも終わったらしく少し静かになっていた。きっと同級生は、つまらない授業を聞いては欠伸をしているのだろう。

「……」

 まあ、関係のないことだけど。

 さて、現在十時。母が帰ってくるのは二十一時だ。十一時間何をしようかと部屋を歩き回る。DVDは見飽きた。テレビ番組は嫌いだし、ドラマはもっと嫌いだ。

「……」

 自室に積まれた教科書に手を伸ばす。一番上にあった数学Aの教科書には、うっすら埃が積もっていた。半年以上放置されているのだから、無理もない。

「勉強しよ」

 適当に教科書を数冊選び、まっさらなノートを引っ張り出して机に広げる。まるで学生だと思って、自嘲する。学生だったわ私。引きこもりだけど。

 数学は決まり通りに解けば答えが出るから好きだ。パズルのような感覚で進めていく。

 日本史は数ページ見て閉じた。似たような名前と戦争の歴史ばっかりだ。世界史はもっと面倒。放置。

 現代文が一番嫌いだ。たらたらと長文のくせして、言いたいことはたったの二、三行。回りくどいことを言う必要性が分からない。小説はもっと嫌いだ。なんで嫌いな人間関係のいざこざを、娯楽として見れるのか私には全くもって分からない。


こんなことも分からないの。


 教科書を閉じる。ああ、もう、これだから、何もしたくなくなる。

 私の人生には母の言葉ばかりだ。何かをすれば、一歩歩けばぶち当たる。立ち止まっていたって投げつけられる。落ちてくる。

 子供は親がはじまりだとどこかで聞いた。生まれ、育ち、巣立つまで、巣立ってからも、親はずっと関わる。

 呪いみたいだ。

 何度謝ればいいんだろうか。生まれてごめんなさいって、望み通り育てなくてごめんなさいって、何度血反吐を吐くような思いで言わなければいけないのだろうか。

「……」

 ベランダに出ると、遠くから子供達の笑い声が聞こえた。きゃらきゃらと高い、楽しそうな声。近くに公園があるから、きっとそこからだろう。大きなジャングルジムと滑り台がある、古い公園。古びた赤いベンチが砂場の近くにあるから、母親達がそこで談笑しているのかもしれない。

 いつかの私もああやって笑っていたのに。

「……」

 ひゅお、と冷たい風が吹き抜けた。ここはとても寒い。

柵に両手を掛ける。金属の冷たさが咎めるようで、思わず顔をしかめた。そのまま力を込めて身を乗り出すと、真下にある駐輪場の屋根が見える。買い物帰りのおばさんが入って行くのが小さく見えた。

 ひゅお、と冷たい風が押し戻すように吹く。そうであったら少し嬉しいけれど、所詮は風だ。

 力を抜けば落ちれる。頭から落ちれば、きっと。

 きっと。


死ぬ度胸なんてないでしょ。


「……」

 腕から力が抜けた。

 重心に従った体は、ベランダに着地する。

「…………う」

 結局のところ。

 私はただのこどもだ。勉強や人間や嫌なことに顔をしかめ、しかし対した行動も起こさず、籠って逃げて謝って。

 思い切って終止符を打つことすら怖くてできない、こどもだ。親の言うことひとつさえ、否定できない。

「……くそ」

 大人になりたい、と、はじめて心から呟いた。

 ふわっとしたお話だったのに読了いただき、ありがとうございました!

 次は明るいのとかバカやってるのとかを投稿できたらなと思います。次こそは……!!

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