3. 卒業式 伽音ルート
≪伽音≫
「タカシー。おーい。
どこいっちゃたのかしら。いつも先に帰る時は一言声をかけてくれるのに。卒業式だったのが堪えたかな。奇瑠美先輩も雅先生も卒業とかでいなくなっちゃうし。落ち込んでいるとしたら、多分あそこにいるかも。
…やっぱり。タカシ、みーつけた。」
(錆びついたブランコが揺れる音)
≪タカシ≫
「あ、伽音。良くここにいるって判ったな。」
≪伽音≫
「タカシってさ、何かしら落ち込む事があると、いつも公園のブランコにいるよね。昔から何にも変わらないんだから。」
≪タカシ≫
「なんで知って…あぁ、やっぱり小さい時に一緒にいたあの女の子は、伽音だったんだね。なんか似ているなーって思っていたんだ。」
≪伽音≫
「ふふふ。嘘。すっかり忘れていたんじゃないの?私はすぐにタカシの事わかったよ。」
≪タカシ≫
「だったら一言教えてくれれば良いのにー。
オレがクラスに転入した時、お前、すっごいツンケンして怖かったじゃん。いつぞやの体育の時間には、剛速球をオレの顔面に向けて投げてくれたし。」
≪伽音≫
「だって。タカシが全く私の事覚えてないのだもの。しかも「はじめまして」って言うんだから、超ムカついたわよ。」
≪タカシ≫
「ははは、ごめん。今思い出しました。幼馴染の伽音さん。」
≪伽音≫
「全くもう。遅いんだから。
それで?ここに一人でブラブラしているってことは、やっぱり何か考え事でしょ。奇瑠美先輩や雅先生がいなくなるのが、そんなに寂しいの?」
≪タカシ≫
「伽音ってもしかしてエスパー?よくオレが考えている事わかるなー。」
≪伽音≫
「それはっ、た、タカシの事だから、さ。」
≪タカシ≫
「寂しい…か。うん。そうだな。2人がいなくなるのはやっぱり寂しいよ。奇瑠美先輩は強引で無茶苦茶だけどカッコいいところがあったし、雅先生は優しくて大人で、お菓子もおいしかったし。いつもみんなで騒いでいるのが楽しかったなー。もう来年度からは、それがないんだなーって思うと、寂しいよ。」
≪伽音≫
「ねぇ、もし、私がいなくなっても寂しい?」
≪タカシ≫「伽音?」
≪伽音≫「んーん。何でもない。ほら、早く帰ろう。」
≪タカシ≫「ねぇ、伽音」
≪伽音≫
「なーに?あっ、まったくー。カバンをこんなところに放り投げて。砂だらけになって使えなくなっちゃうぞ。」
≪タカシ≫「きゃーおーん」
≪伽音≫「だから何…っう」
≪タカシ≫
「やっぱり。さっきから伽音、オレと目をあわせてくれないよね。こういう時の伽音って言いたい事があるけど言えなくて、言葉を飲み込んじゃった時によくやっていたよなー。昔からある伽音の悪い癖だ。まだ直ってなかったんだな。」
≪伽音≫
「うぅぅ…顔近づけすぎなんだけど。頬っぺたも手で挟まないのー」
≪タカシ≫
「あははは。変な顔。おまんじゅうみたい。」
≪伽音≫「おっおまんじゅうですって、ムキー。」
≪タカシ≫
「いててて。ひっかくなって。冗談だってば。
ほら、言いたい事があるならはっきり言えよ。オレは伽音がいなくなったとしても、もちろん寂しいよ。」
≪伽音≫「んーもー。タカシのばかっ」
≪タカシ≫「え、いきなりっ?」
≪伽音≫
「タカシのばか、ばか、ばかっ。なんで私の気持ちを解ってくれないのよ。「―も」じゃ意味ないの!
私がいつも貴方の隣にいるでしょ。ちっちゃい時から、(こそっと)途中、離れ離れになっちゃったけど。今は同じクラスだし、席も隣だし。帰る時間だって、いつも一緒にいるんだからね。
だから、私の目の前で、他の女の子の事で落ち込まないでよ。私は貴方を置いていなくなるなんて事はしないよ。
貴方と一緒に来年の卒業式に出るんだからね。そして、貴方の第一ボタンをもらうんだもん。もう予約したからね。他の子にあげないでよ。それに、」
≪タカシ≫「はいはい。それに?」
≪伽音≫
「それに…ね。(段々照れていく)大学も一緒に通って、結婚して貴方のお嫁さんになって、いってきますのチューをして、子供は2人で…って、何を言わせんのよ。(背中を叩く)もー。恥ずかしい。」
≪タカシ≫
「っつーーたたた。し、しっかりした人生設計をお持ちで。」
≪伽音≫
「ごめん。つい強く叩いちゃった。大丈夫?
…ぷふふふ。やっぱりタカシの前だと何でも言えちゃう。心のもやもやが、スッキリするわ。
でもね。本当に、将来はそうなったら良いなーって思っているの。貴方とずっと一緒にいられたらどんなに幸せだろうって。だから、ね。お願い。私とお付き合いして欲しいな。
貴方の事を、ちっちゃい頃から今も、これからだって。ずーっと、ダイスキだよ。だから、これからも一緒にいてくれるよね。キスしてくれるよね?」
≪卒業式 伽音ルート おわり≫