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第10章:好きすぎて《断章2》

【村雲明彦】


 夏姫が可愛くて仕方ないのだが、どうすればいいんだろうか?


「アッキー。頭、大丈夫?」

「失礼な言い方を言うな、朱里。そこは心配そうに『大丈夫?』だけでいい」

「だって、さっきからボーっとしてるんだもん。貴方の頭が心配だ」

「超余計なひと言だってば」


 ただいま、大学の講義中。

 ノートにシャーペンを走らせながら黒板を写す。

 俺の隣の席に座っていた朱里が不思議そう目で俺を見る。

 

「朱里?ひとつ聞いても良いか?」

「なぁに?」

「例えば血の繋がらない兄妹がいて、その子に告白されたとしよう。……どうする?」

「……うーん。さっぱり現実感のない妄想だね?」


 まさに少女漫画のような展開だ。

 今時、ただの義妹の兄妹ものなど流行りもしない。

 だが、それが現実でもあるのだ。


「妄想言うなっての」

「もしかして、それに本気で悩んでいるの?」

「……どうすればいいんだろうな?」

「ふむ。恋愛ゲームのお話か。義妹設定が好きなの?」


 俺は朱里の頬を軽くひねる。


「誰がゲームの話などしているか」

「いひゃい~っ」

「朱里さん?俺は真剣に話しているんですが?」


 俺の好きなようにされている朱里は嫌々と反応する。


「だって、そんな恋愛シチュ、私に相談されても困るし?ていうか、ホントに?」

「どうやら、そうらしい」


 俺は夏姫の事を朱里に相談してみる。

 同じ女の子なら、例え、朱里に恋愛要素がなくても気持ちは分かるだろう。

 夏姫と俺は義理の兄妹だった。

 しかも、夏姫は俺への行為を明確にしている。

 どうすればいいのか、さっぱり分からん。


「なるほどねぇ、アッキーと夏姫ちゃんが……」

「実の兄妹ではなく義理で、告白されてどうすればいいのか困ってる」

「思い切って、やっちゃえば?一線超えちゃばあっさり解決♪」

「……たまに朱里ってば、顔に似合わず大胆な事を言うよな」


 朱里は講義用のノートを書く手を止めて、

 

「だって、相手はアッキーの事が好きなんでしょ?それで、アッキーは恋人を募集している。これってチャンスじゃない」

「夏姫を恋人にしろってか?冗談でしょ」

「義妹だって言うなら問題はなし。問題なのは、アッキーの心でしょ?」


 俺だって、少なからず夏姫を想う気持ちがある。

 今まで妹だと思っていたのに、女の子だったわけだ。

 

「……アッキー、ラブラブな妹の攻撃にダウン寸前?」

「そこまでいってないよ」

「揺れ動いてはいるわけだ。そのまま流されちゃえばいいのに」


 流されて、付き合うとどうなるのか?


「よーするに、アッキーってば臆病なだけなんだよね?」

「俺が臆病だって?」

「妹だろうが、可愛い子なら恋人にしちゃえばいいじゃない?それがアッキーの望みでしょ?それができないのは親に申し訳がないだけでしょ?」


 それはある。

 俺が両親に育ててもらった以上、夏姫に対しても向きあい方っていうのがあるんだ。

 ここで俺と夏姫が素直に恋人になるのは抵抗がある。


「気持ちを知るには話しあうのが一番でしょ。それとも、私がちょっと協力してあげてもいいけどね?ただ、少し荒れるかもしれないけど」


 朱里はそう笑うと俺に協力的な態度を見せる。


「協力って例えば?」

「アッキーは妹ちゃんとの交際を断りたいの?」

「……本気かどうかの真意が知りたいだけ。嫌いなわけじゃないんだ」


 夏姫が本気で俺を好きだと言うのなら俺も本気で考える。

 今のアイツはただ、戸惑ってるだけにしか見えない。


「夏姫が本気で俺を好きだって言うのなら、俺も気持ちを考えてやらなきゃいけない」

「今は熱に浮かされてるだけ?」

「その可能性の方が大きいって思うのは当然だろ?」


 そして、それは俺にも当てはまるのだ。

 数日前まで妹としてしか見てなかったのに。

 いきなり恋人にだってなれる女の子として見てるワケだから。

 

「私としてはアッキーも十分、夏姫ちゃんが好きだと思うんだけど?」

「……そうかな?」

「だって、アッキーがそんなに悩むって事は自分にも気持ちがあるってことじゃない。本気で好きじゃないなら、とっくに答えなんてでてると思うの」


 朱里にそう言われてしまう俺って……。


「はい、ノートの写し終了。ありがとう」

「で、何かいい作戦はないかな。二人の関係をはっきりさせたいんだ」

「夏姫さんがお風呂に入ってる所に突入、ゴーゴー」

「俺が普通に捕まります」


 人を犯罪者にしたいのか、この子は。


「もうちょっとまじめに考えてくれよ」

「では、夏姫さんの着替え中を狙って、ゴーゴー」

「だから、何でどれもこれも玉砕覚悟のアタックなんだよ!?」


 責任とらされることばかりじゃないか。

 今の夏姫なら許してくれそうな微妙なラインだし。


「……自分の気持ちを知りたいって言うのならハプニングに期待するしかないの」


 肩をすくめて朱里は呆れ顔だ。

 呆れたいのは俺の方である。


「作戦がある。朱里が俺の恋人役をしてもらい……」

「はいはい、私はアッキーと付き合ってマース」

「そして、このままハッピーエンドに」

「私、アッキーとの関係は遊びだったの。ごめんね」


 あっさりフラれた!?

 しかも、弄ばれた方だった!?


「……朱里は俺の事が嫌いなのね」

「好きだよ。友達としては大好きの類。よかったねぇ」

「永遠の友達なんて全然嬉しくないし」

「だから、私がここでアッキーと絡むと絶対に修羅場になるだけだと思うの」


 朱里は面倒くさい事に巻き込まれたと言う顔をしながら、


「いい?夏姫さんだって乙女だよ。今ままで事情があって嫌いになって相手が誤解だと気づいて素直になった。ここまでOK?」

「うん」

「そのうち、自分の気持ちが恋心だって気づいたわけ。今、アッキーに猛烈アタックしてる気持ちは本物だって私は思うの。下手な小細工せずにぶつかってきなさい」


 朱里にそうはっきりと言われてしまい、俺は「でもさぁ」とまだ渋る。


「はぁ。一番の問題は未だに自分の気持ちに気づいてない、鈍感なお兄さんでしょ」


 彼女は「しょうがない」と何やら作戦を立ててくれるようだ。

 ここは女の子である朱里に任せてみることにしよう。


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