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奇怪青春期  作者: 中村龍二
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漠然とした怠惰な日々①

 世にいわゆる『リア充』という人種がいる。彼ら彼女らのリアルが充実した様を示すのだが、このリアルを三次元オンリーとするのなら俺のリアルはまるで充実していない。喜びも涙も彼女も、すべて二次元に置いてきたからだ。

 そのリア充の定義だが、テンプレとしてはまず友人多数。次点で彼氏彼女持ちだろう。くどいようだが、二次元なら俺はハーレムだ。ツンデレヤンデレクーデレデレデレやら数多いる。

 食物連鎖という、明確かつ普遍的なカーストが存在するように、リア充にもカーストなるものが存在するらしい。あいつらは何故か他者と自身を区別したがるからな。

 上位カースト――『キング・オブ・リア充』ともなると、まずオーラが違う。あと何かとオサレ。髪型とか服装とかセリフとか。ブリーチの読みすぎだろ。卍解!

 俺みたいな低身分が為す事と彼らが為す事との差は歴然である。女子の反応からして全然違うもん。優しくすれば惚れてくれるんじゃないの? 二次元ではそうだった!

 そんな上位カーストの一人に、乙原匠(おんばらたくみ)という男子生徒がいる。

 女子男子分け隔てなく人気者で、気さくで、イケメンで。あたかも絵に描いたような男がいる。友達というスペックにおいては申し分のない男が。

そしてもう一人――性別は違えど――、彼と同じグループに属する葉枝見江美(はえみえみ)なる女子がいる。こちらも乙原と同じく、よく笑う人間だ。彼女クラスになれば仏頂面の俺ですらにへらっ、と釣られて笑ってしまう始末。

  容姿端麗で、乙原と並び立てばいっそ神々しく感じられる。美人、というよりは可愛い、と形容すべきか。どこか幼さを感じる言動は、それさえもいとおしく思ってしまう。

 その二人とは別クラスなのだが、クラスメイトに陽目葵(ひなためあおい)――言わずもがな、イケメンである。間違えた。イケメン風美少女である。

 中性的であるというよりはむしろ男よりなその風貌は、一ヶ月もの間俺も男子だと勘違いしてしまった程だ。

  乙原、葉枝見らとは違い、トップカーストにいるわけでないが、それでも人気者だ。特に女子。明らかに恋心を抱いている奴がいる。その状況にちょっと興奮してしまった自分が恨めしい。

 乙原、葉枝見、陽目。俺はこの三人と同じ部活に所属している。部活名は『学生生活研究部』。活動内容は『生徒の生活をどのようにすれば円滑にかつ満足のいくのか』を主題に据えている。――当然これは建前で、ほぼ溜まり場と化しているのだが。活動らしい活動と言えば時々来る相談者にアドバイスを与えてる、ぐらいか。そのほとんどが色恋沙汰だ。中には乙原らに告白しに来た奴もいる。ちなみに部員の中で俺だけコクられたことがない。まったく、とんだ照れ屋さんだぜ!

 けどまあ、美男美女揃いだとあれだろ。近寄りがたい部活にやっちゃうだろ。高嶺の花どころじゃないじゃん。そこで『敢えて』俺が入ることによって釣り合いをとり尚且つ親近感を生ませる……。さすが俺! そこに痺れるっ!!

 高校入学して早二ヶ月半。まもなく夏休みに突入しようかというところ。なんやかんやありつつも、ここまで平穏無事に過ごせてきた。

 ただずっと、心に残っていたことがある。わだかまりとして鎮座していたものがある。

 『普通とは何ぞや』という抽象的な問い。

  何を以て『普通』なのか。俺にはまるで分からない。いや、ひねくれているのか。

  たとえどれだけ高名な評論家であろうと、どれだけ理論武装しようとも、俺はそれを答えとして認めないだろう。だからわだかまりとして燻り続ける。

  そもそも、あの数学ですら解の弾き出せない問いもあるのだ。遥かに抽象的な問いに、いったいどうすれば答えなぞ見つかるのか。



 そんな、悶々とした俺の胸中を見透かしてか、『奴』は突如割り込んでくる。

  幸か不幸か、その『普通』をぶち壊して。




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