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うわさ1

スカートのポケットの中で最近買いかえたばかりのスマートフォンが震えた。


現在社会の授業中。

黒板を見るふりをして先生の居場所を確認する。


だめだ・・・。見てる。


社会の井沢(いざわ)先生は今年から社会人となった新米の先生。

僕はあまり好きじゃない。


この先生は、女の子を意識しすぎだ。


ルックスは悪い方ではないが、ワックスで固めた髪だとか色鮮やかな洒落た服だとか高そうな時計だとか。

学校を何だと思ってるんだ?

きっと大学気分が抜けっきっていないのだろう。

とにかくチャラい。


このチャラチャラしたのをカッコイイと慕う子とやだ、キモいと毛嫌いする子。はたまたどうでもいいという子。

中学生は結構悲惨な考えをする。先生を見るめがとてもキビシイ。

僕はキモいまではいかないもののうざいくらいには思っている。


そして報われないことに僕は、井沢先生にどうやら目をつけられてるらしい。


僕を生徒として目をつけたのならまだしもよりによって異性として。

何から何まで偽っている僕は、他人の隠し事を敏感に悟ることができる。それに、この先生は隠す気はないようだ。だけど、僕に本気だとも思えない。


強いて言うなら、そうだな。

学年1の美少女に告られた、という筋書きが欲しいのだろう。


自分の容姿は自分が1番理解してる。

周りの反応からでも、鏡を見てでも。


まぁ、中身が男だから男に好意を寄せられても嬉しくないし、むしろ本音を言えば気持ち悪いのだけれど。



「あー、授業で使うプリント忘れてきちゃったんでー取ってきまーす」



その一言に前の席の女の子2人がクスクスと笑う。


この子たちはこういうのが良いのか。

何て考えて、いやでも僕はこうには、なれないなと思う。


先生が出ていったのを見てそっとポケットに手を突っ込んだ。


メールが一件。

僕は基本、人にアドレスなどを教えないから誰からかというのは何となく分かる。


そもそもスマホを買った理由が梅ちゃんが



「みいはスマホとか、今時のもんが似合うよね」



と、これとか良さそうなんて差し出されたからなんて自分が単純すぎるので口には出さないが。


でも、その時きっと「みい」じゃなかったら買わなかった。

「みい」と呼ぶのはたった1人。梅ちゃんだけだから。


唯ちゃんは「みーちゃん」って呼ぶけどこの呼び方は結構いる。

それにイントネーションが全然違うんだ。


君はいつも男らしいなと感心するほどすっきりしてるから、

「みい」と呼ぶ口調も凛としていてかっこいい。

なんで唯ちゃんとかと同じく語尾を伸ばしてるはずなのにと、とても不思議だ。


花鹿(かじか) 美剣(みつる)。みつる、というのが僕の名前。

結構、気に入っている。中性的だし、漢字も、いい。


あれ、何でみいなんだろう。

今度聞いてみよう。


受信ボックスを開く。


やっぱり。

恭平(きょうへい)だ。


メール文を読もうとしたとき。



「あー、花鹿さん」



すっと真横から手が伸びたと思うと手の中にあったものがない。


「あ、僕の・・・!」


いろいろ、しまった。と思って焦る。

けれど後ろでにやけた顔を見ていらっとして、冷静になれた。



この野郎。

その顔いらつくんだけど。

みんなの前で僕って言っちゃたし。



だけど授業中にいじってた自分も悪いと謝罪の言葉を発しようとしたとき。


「花鹿さんってさー


4組の矢吹と付き合ってんのー?」



は?

何いってんのこの人。


矢吹(やぶき)は恭平の名字だ。

そして、恭平は幼馴染兼親友。


あいつは僕が性同一性障害だってことを知ってる。

僕がその事で専門の医者にカウンセリングを受けに行っているのも知っている。

家族以外の唯一の理解者。


まぁ、一見2人でいたら男女に見えるから、

その手の噂があるのは知ってるけど。


「『今日一緒に帰ろう』だってー!」


「・・・返してください」


クラス内がざわめく。

僕を好奇の目で見ている。



にやけ顔が僕に近付いて「放課後、第1資料室ね」と囁いた。








ちらりと梅ちゃんに目をやると、興味なさそうに髪をいじっていた。







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