第6話:「効率厨の怒声」
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順調に探索を進めていた二人の耳に、不穏な声が響きます。王都のダンジョンの別の顔が見えるお話です。
「えーいっ! スラッシュ!」
「火炎球!」
「ギュェェェ!」
ダンジョン1階層の通路で、エレンとノルンの見事な連携がゴブリンを打ち倒す。
出会ってから数時間。前衛と後衛の役割分担はすっかり板につき、二人は危なげなく魔石とドロップアイテムを回収していた。
「ふふっ、順調だね、ノルンちゃん!」
「うん! エレンちゃんの魔法のタイミングが完璧だから、すっごく戦いやすいよ!」
二人が笑顔でハイタッチを交わそうとした、その時だった。
「――っざけんな! なんだその非効率な立ち回りは!!」
鼓膜を劈くような、男の苛立った怒鳴り声が迷宮の奥から響き渡った。
エレンとノルンはビクッと肩を跳ねさせ、声のした通路の奥へと視線を向ける。
姿は見えないが、男の怒声は壁に反響してはっきりと聞き取れた。
「そこでなんで大振りするんだよ! DPS(時間あたりのダメージ)が落ちるだろうが! タゲ取りもまともにできねぇのか、どいつもこいつも頭が悪すぎる!」
「ひっ……ご、ごめんなさい……!」
「ちっ、時間の無駄だ。俺の視界に入るな、効率が落ちる!」
どうやら、別のパーティの戦い方を見て勝手に激怒しているらしい。
専門用語めいた謎の言葉を叫びながら一方的にまくしたてるその声には、明らかな異常性と、他者を見下す傲慢さが滲み出ていた。
「な、なんだろう……すごい怒ってるね」
ノルンがおずおずと剣を握り直し、不安そうにエレンを見る。
エレンは冷静に気配を探った。声の主が放つ威圧感は、1階層にいるような初心者のものではない。圧倒的な強者でありながら、精神的にどこか破綻している人間の気配だ。
(……やばい奴がいる。あんなのと関わったら、絶対にろくなことにならない)
生存本能が、エレンに強烈な警告を発していた。
どれだけ順調に稼げていようと、命あっての物種だ。
「……ノルンちゃん。今日はもう、ここまでにしようか」
「えっ? うん、そうだね。なんだかすごく居心地悪いし……」
「うん。変なトラブルに巻き込まれる前に、ギルドに報告に戻ろっ」
エレンはノルンの背中を軽く押し、怒声が響く方向から足早に遠ざかる。
得体の知れない強者の存在に肝を冷やしながら、二人はダンジョン探索を早々に切り上げ、地上へと続く階段を駆け上がっていった。
最後までお読みいただきありがとうございます!
異常な強者の存在を感じ取り、的確に撤退の判断を下したエレン。次回はギルドでの精算シーンになるのでしょうか。




